【ペールブルー】

 ある日の夜

 部屋を走ってこちらにくる少女

 5,6歳だろうか


 突然ぶつかりそうになって

 そうしてお互いに気付いた


 「ああ、ごめんね」


 声をかけたときの驚いた顔に

 見覚えは無い


 少女は現れる家を間違えたのだろう

 そう思ったときには消えていた



 ときどき出会う世界の人々

 少女とはそれきり会っていない

 たどり着きたい場所に行けただろうか



 人の魂が

 ふと戻ってくることがある

 そう感じたのはいつだったか


 幽霊と呼ぶ人もいる


 でもそれは明るい生の灯のように

 私の目の前に現れる

 あの少女のように


 何の屈託もなく

 まるで生きているように

 さり気無いから


 その魂がどうか心いくまでこの世を辿り

 そうして昇っていけますように

 私は祈る


 なぜ私を経由するのかは分からないけれど


 薄い膜のように現れる人々の

 今世が穏やかに終息しますように


 私はただ祈る



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詩・青碧のこころ 奈都 @vidafeliz123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ