第13話 別れと決意

 翌朝、日が昇りたての頃にはもう、支度を済ませていた。

 「ジェイブスさん、お世話になりました。」

 「昨日はすまんかったの、達者でな、少年。」

 「ありがとうございました。」

 短く言い切って去ろうとした。けど、後ろ髪を引かれて、

 「ジェイブスさん、僕はまだ、何が正しくて、何が大切かも分からない、ただのガキです。これから、旅をしながら考えていこうと思います。」

 「ああ、そうするといい。気をつけろよ。」

 このときの僕の顔はきっと、今までで一番暗く、冴えなかったかもしれない。強くならなきゃいけない、でも、それだけじゃない。考えることが山積みで破裂してしまいそうだった。


 ひとまずイェンドの街に向かうことに決めた。イェンドは港町らしく、船に乗れば大陸を離れて遠くに行ける。大陸を出ればラドバルド同盟の庇護は受けられないから、気を引き締めなきゃいけない。イェンドまで3日の旅程。荷物を背負いなおし、よし、と自らを奮い立たせた。


 それからも、イルガンドによる特訓は続いた。通常の人間は1種類のみの魔法を行使できるのだが、イルガンドはあらゆる魔法に万能らしく、 そのために勉強量は尋常ではなかった。魔法の行使、制限、禁忌事項、イルガンドはまるで魔法書のようにスラスラとそれらを諳んじるのだった。

 僕も通常の人間の例に漏れず、魔法の特性は火にしかないようで、他の魔法に比べて火を扱うのが得意だった。それが分かってからは、火魔法を重点に置いて実践した。

 イルガンド曰く「戦闘になったらあらゆる属性を使えるよりは、一点に集中した火力のほうが有用だ」だそうだ。もちろん前回の戦いの通り、天使は魔法を無効化するのだが、魔法を乗せた物理攻撃であれば有効だそうだ。これらの要素を踏まえて、僕のイメージも固まり、修行の中である1つの魔法を完成させた。

 「おお、これなら雑魚どもに後れをとることはあるまい。」

 来るべきときは近い。僕は僕の武器で、僕の信念を貫く。

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