第4話
デイルームに人が集まっている。
昼食が終わると暇を持て余した入院患者たちがなんとなくやってくる。
今日は、おしゃべり好きな人たちが多いらしく数人が賑やかに談笑している。
「私、なんだか誰かに見られているような気がするのよねぇ」
最近テレビを賑わせている芸能人同士の離婚の話して盛り上がり一段落した頃、その中の一人が呟いた。
ドキリと心が軋んだ。少し鼓動が早い。
ガコンと自動販売機からペットボトルが落ちる音がした。
そちらを振り返ると、僕と歳の近い病院着を来た女の子がスポーツドリンクを取り出す所だった。
一瞬、目が合った気がする。
気のせいだろうと緩く首を振った時
「あれ、あんたのことでしょ」
驚いて声がした方を見ると、スポーツドリンクのペットボトルを手にした彼女がこちらへと近づいて来た。
「あんたがいろんな部屋を覗いてるからじゃないの」
「…僕の事が見えるの?」
「見える。正確には透けて見えるけど」
少し首を傾げてはっきりと断言された。僕が見える人に会ったのは初めてだ。驚いて僕は自分の身体を見渡した。確かに、僕の腕の向こうには続く廊下が見えている。
「どうして…」
僕が見えるのか、問おうとした時だった。先程透けて見えていた廊下の先の個室で怒ったような声がした。その声が徐々に近づいてくる。
「俺の時計知らないか」
時計が無くなってしまったらしい、少し小肥りの中年男性はデイルームの人たちに問いかけている。
皆一斉に首を横に振った。続いてこちらを、…正確には僕の隣にいる彼女を見た。
「知らないわ」
彼女も首を横に振った。
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