第3話

4人部屋の一室で、男性二人が揉めていた。

一人はまだ若く20代の髪を金色に近い色に染め、耳にピアスのホールがいくつか開いた男で、もう一人は少し腰が曲がった老人だ。

揉めている原因は老人が男のベッドを少し覗いたことだ。


病室のベッドは個々にカーテンで仕切られている。その中に少しの服が入るクローゼットや引き出し、食事をするテーブル、テレビや貴重品を入れておく鍵の付いた引き出し、小さい冷蔵庫。入院中の生活に困らない程度のものが纏まったボックスが置かれている。

携帯の充電器を挿せるコンセントなんかもあるから快適といえば快適なのかも知れない。


ある程度のプライベート空間は守られているのかも知れないが、音は筒抜けだ。

誰かが寝返りを打つ音も聞こえるし、トイレに行く足音、食事をする食器の音。気になれば他にも色々あるだろう。


男が病室で音楽を聞く音が漏れていたらしい。イヤフォンで聴いたら耳が壊れるのではないかというくらいの大音量で、流れる激しいリズムの音楽は、ご老人には不快だったのだろう。

男に一言文句を言おうとカーテンを開けたら、そこには男は居らずそして丁度戻ってきた所だったらしい。



騒ぎを聞き、駆けつけてくる看護師を確認すると僕は新しい空気を吸いたくて外に出た。

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