第2話

女の子が歩いている。持参らしい、淡い水色の大きめの水玉模様がはいったパジャマを着て、両手には松葉杖を脇に挟んで慣れない様子でギプスを巻いた左足を庇いながら慎重に歩いていく。

目指すのは、曜日ごとに各病棟に移動してくる移動図書館みたいだ。滞在時間は短く、その時間を逃すとあと一週間は借りれない。

小児科病棟の時は、子供向けの本を多く用意してあるのか絵本や漫画雑誌、児童書なんかも置いてある。比較的軽い症状の子供たち数人がもうすでに集まっていた。

それを見て、自分が読みたい本が先に借りられると大変だと思ったのか、慌てた様子で少し足早になった時、彼女は躓きそうになり転びかけた。


危ない


そう思った時、咄嗟に彼女の腕を掴んだ。実際には掴めず、その手はするりと擦り抜けてしまう。

しかし、少なからず効果はあったのだろうか、転ぶことなく何とか踏み留まれたようだ。

彼女が転ばなかったことに対して、安堵し、彼女が読みたい本が借りられてないかを心配した。


ようやく移動図書館へと到着した彼女は一冊の本を手にして、簡単な手続きを済ませた。

両手に松葉杖を持って、さてどうやって病室へと帰るのか、先程より危なっかしいのではないかと思い、心配しながら暫く見ていると、彼女より少し背の高い男の子が声をかけた。

どうやら彼が本を持って病室まで送ってくれるようだ。

それを見届けてから、僕はその場を離れる事にした。

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