暴君彼女との憂鬱な日常との葛藤

遠谷カナ

第1話

おばあさんが白いベッドに横たわっている。 

傍らには心肺機能の装置が備わり、それが心肺が停止する音を鳴り響かせる。


今、彼女は亡くなった。


先程駆けつけた医師が亡くなったことを確認する。

すでに覚悟をしていたであろう、家族が数人ベッドの周りに集まり、彼女の亡骸にすがりつくように泣き崩れる女性、歯を食いしばるように唇を噛み締め涙を堪える男性、まだよくわからない戸惑いのような表情でベッドを見つめる白いワンピースを着た女の子。

女の子の頭を軽く撫で、不思議そうに見上げる女の子にゆっくりと笑いかけて僕はその場を立ち去った。


「ちゃんと君を見守ってくれるよ」



ここは大きな病院で、一日何万人もの人が出入りする。それは患者だったり見舞いに来た人だったり、あるいはここに勤めている医師や看護師、薬剤師に事務員、薬を納品する者もいれば壊れた機械を直す修理業者なんかもいる。

その中で新しい命が生まれ、消えていく命もある。


しばらく病院の庭園を散歩し、庭園内にあるベンチへと腰掛けた。

良い天気だ。ぽかぽかと陽射しが暖かい。季節は冬から春へと少しづつ穏やかに変化してるようだ。

孵化したばかりの蝶々が目の前を飛んでいく。その姿を目で追って、色とりどりに咲き始めた花たちに目を細めた。

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