第87話 アルスの塔・1
ロイ達はアルスの塔が視認できる所まで辿り着いた。
レグゼリア王国の最南端にあるアグニの塔は所々から火が吹き出ていたが、このアルスの塔は巨大な円柱型で、普通の古びた遺跡にしか見えなかった。
ロイはテスティードの天井ハッチを開けてヴォルガ王に確認した。
「ヴォルガ王、あれが"アルスの塔"で間違いないか?」
「うむ、あらゆるダンジョンの起源であり、世界最古のダンジョンとも言われておる」
「王国にいた頃はかなり簡素なダンジョンって教科書で習った」
「その通りじゃ。最古故に、新たに現れたダンジョンみたく複雑なトラップは一切無い。内部は1から20階層、そしてひたすら迷宮が広がっておる。気を付けるべきところは、5階層毎に巨大なゴーレムが待ち受けてるところくらいじゃな」
「ボスモンスターってことか……」
ハルト、ダンジョン攻略、そしてボス……ここまでまともな休憩を取れてないロイ達にとってはウンザリしたくなる情報だった。
「じゃがの、不幸中の幸いと言うべきか。ダンジョンのほとんどは攻略済みのようじゃ」
「え? なんでこの距離でそれがわかるんだよ」
「あそこを見るんじゃ」
ロイはヴォルガ王の指差す方を見る。
それはアルスの塔の入り口、高さ50mにもなる超巨大な門だった。
「4つの紋章のうち、3つまで光っておろう?」
「まさか、あれは今の攻略状況を指してるのか」
「そうじゃ、先に来た奴等は少なくとも15階層までは攻略してることになる。ゴーレムを相手にするより、騎士共を相手にした方が遥かに楽じゃ」
「確かにそうだな。俺はどちらかというと人間を相手にするのが得意だからな」
「流石は王国の暗殺者候補、言葉に重みがあるわい」
「うるせえ、それは副業。本業はオーパーツの守護者っての!」
ロイはハッチを閉めて車内に戻る。当然ながらヴォルガ王、エイデン、パルコの非戦闘要員はアルスの塔入口で待機。
そして最低限の防衛要員を残してロイ達は一気に攻め上がる算段となっている。
徐々にアルスの塔が近づいてくる。
「ユキノ、大盾頼む」
「わかりました! "
ユキノが出した盾は徐々に大きくなって、テスティードと量産型テスティード3両をカバーするほど広がった。
──ガンガンッ!
アルスの塔入口に駐在する騎士や傭兵が一斉に矢を放ち、それは全てユキノの盾に弾かれてしまう。
「ユキノ、大丈夫そうか?」
「はい、魔術が来たら厳しいですけど、矢くらいならこのまま入口まで耐えられそうです」
攻撃魔術は南の王国が発展している。この北の地はソフィアがくらったような精神系の魔術が進んでいる。つまり、遠隔攻撃は基本的に矢が主体となる。
だが、向こうもその欠点はわかってるから、多国籍の傭兵を雇っていて、そいつらは魔術が使えてしまうのだ。
「ロイさーん! 火が! ファイアボールがいっぱい飛んで来ましたーーーー!」
それを聞いたソフィアは、聖槍ロンギヌスを構えてテスティードのハッチを開けようとする。
「ロイ! わたくしが"
「いや、それは魔力消費が激しいから止めとけ。俺が上に上がって"聖剣射出"で全部叩き落とす。ユキノは俺が撃つ時だけ盾を部分解除してくれ」
通常なら風の抵抗で車外に落ちることになるが、動力に使っている火と風の魔石の影響で周囲2mくらいなら風の抵抗を無くすことが出来ている。
ロイはテスティードの上に立って部分解除された穴からファイアボールの位置を確認する。
確認が終わったロイは手を前にかざしてまずは第1射を放つ──。
「聖剣グラム、頼んだぞ……行けっ!」
──ボンッ!
矢のように放たれた白銀の長剣はファイアボールを2つまとめて貫いた。そして聖剣はグラムの特性でロイの手元に再召喚される。
明らかに直撃コースから外れていたファイアボールはロイ達が通った道に直撃。
アグニの塔の影響で火の魔素が強まっているため、通常よりも大きな穴が空いていた。
テスティードの車内からは暇を持て余すアンジュが話しかけた。
「ロイくーん! 私の出番まだー?」
「うるせえ! 敵陣に突っ込んだら好きなだけ暴れさせてやるよ! だから待ってな、お姫様!」
ロイは第2波を撃ち落とすべく再度手を前にかざし──射出!
──ボンッ! ドガンッ!
撃ち漏らしたファイアボールが、ユキノの盾の一部を砕いてテスティードに直撃、車体が大きく揺れた。2m越えたら一気に空気抵抗が強くなるから色々計算に入れて放たなくちゃいけない、かなり難度が高いのだ。
サリナがユキノの肩を支えながらジト目をロイに向ける。
「ちょっと! あたし達も手を貸した方が良いんじゃないの?」
「大丈夫だ、ちょっと空気抵抗が強くて曲がり過ぎただけだ。それに次の第3波を抜けたら
「任せたわよ、あたし達も全力尽くすから」
そしてロイは第3波のファイアボールを狙い撃つ。今度はスピンをかけて3つ同時に狙ってみる。
キュィィィィィィィィィンッ!
回転数を上げる聖剣、魔力で引き絞りつつ臨界に達するまで待つ。
──そして放った。
「行け──"サイドワインダー"!!」
──ボンッ! ボン、ボンッ!
聖剣は金切り声を挙げながらファイアボールを1つ、また1つと落とし、最後の1つを落としたところで手元に再召喚された。
「ボスがやったぞーーーー!」
下ではマナブが自らのことのように喜んでいる。
「さて、みんな……俺とユキノはポーションで回復してから合流する。だから思う存分暴れてこい!」
鉄で出来たテスティードは、敵の大盾部隊を蹴散らして停車。敵は大混乱に陥り、さらには
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