第42話 ドキッ!美少女だらけの湯煙ハプニング!? 1

 声の主はユキノ、ソフィア、サリナの3人だった。何故ここにいるのかがわからない。だってここは男湯から来る場所だからだ。


 露天風呂の中央には大きな岩があり、ロイはユキノたちと常に対角線上の位置取りをしていた。


「わぁ~、湯気濃いね!日本に負けてないよ!」


 と、ユキノが自国を引き合いに出す。それにソフィアが応える。


「でも、あなたのソレはこれだけ濃いくても全然大きさがわかるわね。羨ましいわ、どうやったらそこまで成長するのかしら?」


 その言葉にサリナがニシシと笑いながら答えた。


「ソフィア、アンタそれは愚問じゃん?ロイに育てられたに決まってんじゃん!」


「ユキノ、今度から交代制にしなさい!」


「違います!そ、それだったら、左胸だけ成長しますよ!」


 それを聞いたロイは考えた。


 ユキノを浄化したときの光は左胸を通して全体に行き渡っている。その時に成長作用のある要素も分泌されていてもおかしくない。実際、触れている部分は暖かいし、そうだとしたら俺が成長させたと言う仮説も外れではないかもしれない。


 そんな考察をしていると、ユキノたちが身体を洗い始めた。その間は全員ロイに背を向けているため、今が戻る絶好の機会だ。


 よし、今だ!


 ガチャガチャ、ガチャガチャ


 バカな!更衣室のドアが開かない!?


「あれ?ソフィアさん、今音がしませんでしたか?」


「あら、ここにもう1つドアがありますわよ」


「どうせ、従業員の出入口でしょ。それより、もう洗ったんだから早く入ろ?」


 女性陣が湯船に浸かる。ロイはソフィアが来るギリギリで大岩の裏に隠れる事に成功していた。


 ロイを除く全員が露天風呂を満喫していると、不思議な音声が流れ始めた。


『ピンポンパンポィ~ン』


「え?何!?」


「ユキノ、落ち着いて、これは音魔術師の仕業よ。多分ここの従業員によるイベントが始まる合図よ」


 それを聞いたサリナは嫌な顔をしながら尋ねた。


「イベント?」


「ここ、はパーティの結束力を高めるために新設された露天風呂らしいわ。その為の催しね」


『この度は”パーティ結束力向上コース”に参加していただき、ありがとうございます。これより、結束力向上の為のイベントを行います。ルールは簡単、この露天風呂エリアのどこかにある"スイッチ"を見つけ出して押すだけ、それまではここから出る事は出来ませんのでご注意を───』


 だから開かなかったのか!?クソッ!このままではあいつらに見つかっちまう!


『尚、日頃激戦を繰り広げておられるパーティの皆様なら簡単過ぎるかと思います。ですので、難易度向上のために照明は全てダウンするので悪しからず───それでは、スタート!』


 合図と共に照明が完全に落ちた。影魔術師のロイにとって、これは僥倖だった。


 シャドーウィップを使えば、仕切りを越えられるはずだ。


 ロイがそう思って視線を向けると、それが失策だったことに気付かされた。このパーティ湯は仕切りが高い、だがこの村は最早街と言っていいほどの規模であり、仕切りを越えた途端に外の明かりによってロイの身体が明確に照らされる事になる。


 故にロイがとれる行動は、スイッチを見つけてこのイベントを終わらせ、ユキノ達が退室後に自身が出ることだった。


☆☆☆


 ロイ達はスイッチを探し始める。暗闇ゆえに今は視界に入っても大丈夫だが、ユキノの胸にだけは触れてはいけなかった。理由は、浄化現象により発光してしまうからだ。


 クソッ!いったいどこにスイッチがあるんだ……。あ、もしかして、これか?


 薄暗い中、ロイの視界には突起のようなものが見えた。それがなんであるか、ロイは焦っていたため考えもせずに押してしまった。


ふにっ


「あ!──ああんっ♡」


「そ、ソフィアさん!?一体どうしたんですか?」


 ソフィアとおもしき像は胸部を両手で隠してフルフルと周囲を警戒し始めた。ソフィアの声にユキノが驚いて近づいて来た。


「いいいいいい今ッ!ワタクシの……胸に何か触れましたわ!」


「わ、私じゃないです!」


「ということは……サリナ、あなたかしら?」


「なんでアタシがアンタの胸を触らないといけないのよ……大方、岩に当たっただけじゃないの?」


 「この近くに岩なんて……」ソフィアはそう言いながらもスイッチを探し始める。


 はぁはぁ、この状況で下手に動くのは危険だ!スイッチはユキノ達に任せて、俺はステルスに徹した方がいいな。


 ソフィアが媚声を上げた瞬間に危機を察知したロイは、シャドーウィップを露天風呂の中央にある岩に巻き付けて急速に縮めて岩のところまで移動していた。


 こりゃ、長期戦になりそうだ。ロイはそう覚悟して隠密に徹し始めたのだった。



☆☆☆


※作者的に4000字突破しそうだったので2つに分割しました。

※ソフィアの左胸部にロイが触れても発光はしません。聖武器の持ち主だからです。闇武器は穢れをフィルターなしでダイレクトに蓄積するので魔杖テュルソスを所有するユキノは発光します。

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