第43話 ドキッ!美少女だらけの湯煙ハプニング!? 2
上に逃げることはできない。かといって来た道を戻ろうにもドアは施錠されていて同じく戻れない。
無事に帰還する条件はロイがスイッチを発見するか、ユキノ達がスイッチを発見してやり過ごすかの二択だった。
「そっちはあった~?」
「こっちにもないわね」
サリナとソフィアの声が聞こえる。ユキノは多分一番遠い位置だろう。ロイは声の方向とわずかに見えるシルエットから遠ざかるように移動した。
女性陣の声から察するに浴槽にはなく、洗い場にあると踏んでそこを重点的に探しているようだ。
従って、ロイは浴槽に入ることとなる。
ピタッ!
ロイが絶対安全圏を移動していると、背中に暖かくモチッとした感触がして背後へ視線を送った。そこにいたのは背中合わせに接触したユキノだった。
「あれ?サリナ?それとも、ソフィアさん?」
ユキノッ!?なんでいつもみたいに周りに合わせて行動しないんだ!
普段は周囲に合わせて行動するユキノだが、このときばかりは気をきかせて他の面子とは違った場所を探そうと浴槽の中を探していた。
「う~ん、あ、そうだ!”アイテムボックス”はここで使えるんだった!ちょっとズルだけど……あった!魔道式ランタン───ッ!?」
マズイ!その手があったか!?やらせるかよッ!
ユキノが今の状況を打開するべく、某猫型ロボットのようにアイテムを取り出そうとした。ロイは慌ててユキノの手を後ろ手に回し、叫ばれないように口を塞いだ。
「ムグッ!……フガ、フガ……」
「俺だ、ロイだ。手を放すから叫ぶなよ?」
ロイが手を放すとユキノは振り返り、無言の圧力をかけてきた。
ユキノは最初抵抗しようと思ったが、相手がロイだと悟るとその口調から故意ではないと判断して冷静さを取り戻した。
露天風呂の中央に大岩があり、ロイはユキノに手を引かれてその裏で話すことにした。
「……どういうことですか」
硬い口調のユキノにロイは事情を説明する。
「驚いてるかもしれんが、嵌められたんだ俺は……ここパーティ湯はいわゆる家族風呂の亜種だ。大方、男女の垣根を越えて結束力を高めようって主旨なんだろう」
「覗きじゃないんですね?」
「パルコが段取りを先にしてたんだ。俺だって知らなかった!」
「ふ~ん、とりあえずわかりました。……あ、ロイさんって、影魔術師ですよね?もしかして私の姿見えてますか?」
「いやいや、暗視は暗殺者……アサシンのスキルだ。だから俺にはそんな真似できない。ただ、ボディラインは何となく……な」
「ロイさんのエッチ!」
「……面目ない」
珍しく上位に立ってしまったユキノはロイの態度に困惑してしまい、すぐに話を逸らすことにした。
「あのっ!もういいですから、まずはスイッチを探しましょう!宛とかないんですか?」
「う~ん、洗い場にないとなると……どう考えてもこの近辺だろう。さすがに浴槽の底にあるとは考え難い。多分、この大岩のどこにあるはずだ」
「ランタンは……ダメですね。ソフィアさん達の姿が見えちゃいますし」
「俺がよじ登って探すからどっちかが来たら教えてくれ」
ロイがそう言ってよじ登り、中央の大岩を隈無く探す。っとその時、またもやあの音声が流れ始めた。
『ピンポンパン、ポィ~ン。難航しているようなのでヒントを差し上げましょう。ヒントは”浴槽”です。それでは頑張ってください』
余計なことしやがってえええええ!
ロイが憤慨したところでどうにもならず、サリナとソフィアはザバザバと浴槽に入ってきた。
「へぇ~、ってことはこの大岩のどこかってことか」
「そうみたいね。ユキノ、3方向から手分けして登りましょう?」
「はわわわわわ~、え!?あ、はははははは……そうですね」
ややパニック状態のユキノを不思議に思いながら3人は登っていく。一方、ロイも焦りながら上へ上へと進んでいく。そして頂上にたどり着いたロイは手探りで探し始める。
「あれ?サリナもう着いたのかしら?」
ソフィアが次いで到着し、声をかけるが反応がない。幸いにもサリナだから仕方ないと考えたソフィアは、そのまま手を地面にペタペタとつけて探る。と、その時ソフィアは何かの手をつかんだ。
「サリナ、意外に手がごついわね。ふふ、ちょっと見せなさいな」
当然ながらソフィアの触れた手はロイであり、サリナはまだよじ登ってる最中だった。ソフィアはサリナをバカにするべく強引に手を引っ張るが、ロイは反発し、そしてソフィアはロイを押し倒すように倒れ込んだ。
「あなた、意外に力強いわね……ん?」
一糸纏わぬ姿でロイに覆い被さるソフィア、これだけ密着すれば女性にあるものがなく、女性にないものがあることくらいはわかってしまった。
「───ヒッ!」
「悪い、ソフィア!」
ロイは咄嗟に”シャドープリズン”で自身とソフィアをぐるぐる巻きにして転がり落ちた。
ドボンッ!
このままでは窒息するのでスキルを解除する。もうどうにでもなれ、ロイは覚悟した。
「変態、変態ッ!変態、変態ッ!変態、変態ッ!変態、変態ッ!」
ソフィアはロイの胸板を叩きまくる。そして少し経ってキッ!とロイを見上げて言った。
「ああああ、危うくはいりかけましたわよッ!!!」
最後にボディブローを受けてロイは沈んだ。彼はこの旅で多くの隠密行動を行ってきたが、訓練以外で失敗したのはこれが初めてだった。
☆☆☆
目開けると、知っている天井だった。顔を横に傾けると、ソフィアが椅子に座っており、団扇で扇いでいた。
「ここは、宿か?」
「そうよ。何かいうことはないかしら?」
「ごめん」
「……はぁ。ワタクシ達が最初に入ってきたときに声をかければ良かったものを……変に解決しようとするから」
「悪かった」
「ユキノから事情を聞いたからもういいわよ」
ソフィアは呆れた顔をしながら少しだけ笑っていた。
「そういえば、入りかけたって何が──」
「忘れなさい!!」
ソフィアは怒鳴って去り、ロイの中に疑問の残る夜を過ごす事となった。
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