第68話 陽キャ美少女と不純異性交遊したと、委員長が疑いすぎる②

 委員長は何度か深呼吸して、頬の赤みが幾分おさまってから離席する。

 そして密談でも始めるかのように、俺と二宮さんの机の真ん中で腰を屈めた。


「二人とも。そろそろ私たちの席周辺の生徒も続々登校してくる時間よ。えっと、猥談に興じるのは……その、止めた方が良いんじゃないかしら?」


 いきなり誤解極まりない指摘を入れてきた委員長に、二宮さんは首を傾げる。


「わ、わいだん? Y談……『ヨッシーと雑談』の略かな?」

「どうしてそう器用に解釈できるの? えっちしたって話をしていたじゃないの」


 俺的には、委員長の方が器用に誤解中だと思ったが、ツッコむ余裕は無い。


 一瞬で赤面した二宮さんは、慌てて周りを見回し誰も聞き耳を立てていないのを確認してから、声を抑えて委員長に反論した。


「ヨッシーと買い物したって話ですけども! 薄手のヤツを選んだりとか!」

「……やっぱり薄いゴムの方が、お互い感じやすいってこと?」

「い、委員長、ヨッシーの夏服を選んでただけ! そんな買い物してないし!」


 俺を含む三人とも最前列の席へと席替えになっていて、本当に良かった。

 おかげで今のところは、二宮さんが照れている表情を誰にも見られていない。


 本当に申し訳ないが二宮さん耐えてくれ……! コミュ障の俺では、周辺の注意警戒を行いながら、傍観することしか出来ない……!


「ひとまず冷静に整理しましょう。試着室でえっちしてた訳じゃないのね?」

「し、シてないよ! そういう場所にすら行ってないし! だよねヨッシー!?」


 いつもの陽キャ美少女らしい飄々とした二宮さんの姿は、どこにもない。

 オトナ美人な委員長から『俺とえっちした』と疑われたせいで、色々と頭の中で想像してしまったのか、耳まで真っ赤になっている。


 二宮さんに同意を求められたが、羞恥心からか中々俺と目を合わせてくれない。

 さすがに傍観し続ける訳にもいかなくなり、俺も再び会話に参加した。


「委員長、信じてくれ。ショッピングモールに行ってただけだよ」


「でも二宮さんの慌てぶりを見る限り、事実を言い当てられて、必死に誤魔化しているようにしか思えないのだけれど……」


「この際だし訂正しておくが、外に出してくれたっていうのも蜘蛛のことだからね。二宮さんに近づいてきた蜘蛛を、俺が殺さないように追い出したんだ」


 ついでに『小さくて早い』という誤解もといておきたい衝動に駆られたが、まず最優先すべきは『俺とえっちした』という勘違いの早期解決だ。


 自身の間違いに気付けた委員長が、赤面中の二宮さんに声を掛ける。


「……どうやら私、誤解していたようね。今までの話を勘案してみると『試着室で二宮さんが着替えていたら、蜘蛛がいて一悶着あった』みたいな感じかしら?」


 おおー。白山ナリサの身バレ防止で、機転を利かせたな委員長。


 裏アカの呟き『勝負下着じゃないのを見せる事態に~!』を黒山紗理奈いいんちょうでも、口に出して可笑しくない言葉で締めくくったぞ。


 最後に二宮さんは、何かを悟られまいとするかのように伏し目がちに囁いた。


「委員長、正解~。本当にヨッシーとは夏服を買いに行ってただけですし」

「二人ともごめんなさいね。デートしただけなのに、変な誤解をしてしまったわ」


「「……」」


 面と向かって『デート』と言われてしまった俺と二宮さんは、せっかく致命的な誤解を解決できた現状を崩したくないが為に、赤面しながら黙秘を続ける。


 委員長は黙秘に対して『やはりこの二人、不純異性交遊したのかしら?』という疑いの抜け切らない表情で、俺と二宮さんを見比べるのであった。


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・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き

 美人な同級生に、えっちしたって誤解された!

 今も想像しちゃうし、どうしよう!?

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「二宮さん、相当パニックに陥っていそうな感じだ」

 委員長にあれだけ勘違いされ続けたせいか、俺も変な想像をしそうになる。

 先日の下着姿を思い出さない為にも、俺はラノベを読み続けることで対処した。

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