幕間小話 女の勘が囁いてる。やはり委員長はヨッシーを気にしてる!②

「私ばっかりじゃなくて、委員長の好みも聞きたいな」

「えっ、私のタイプ?」


 才媛の委員長は、吉屋衛司と繋がらないタイプを言うことで危機回避に徹する。


「そうね……。面倒臭がり屋じゃなくて生真面目な人が好印象かしらね」

「ふむふむ」

「尽くしてくれる人だと、なお嬉しいわね。気遣いできる優しい人が好きだから」

「なるほど」


「私の好みはそんな感じだけれども、分かってくれたかしら」


 我ながら完璧な回答だったと思う委員長に、姫子はしたり顔で呟いた。


「よく分かったとも……。つまり好みはヨッシー……そうだね?」

「何故そうなるの??」


 白山ナリサのアカウント経由のみならず、リアルでも姫子に絡まれてしまった委員長は、この事態に思わず疑問の声を漏らした。


「だってヨッシーは、私みたいな面倒臭いノリの女子の会話も真面目に付き合ってくれる男子で、さらに私が体調不良だった時も色々優しく気を遣ってくれたし!」


「ごめんなさい。後半の体調不良の件は私、初耳なのだけれど……」

「あれ? そうだっけ?」


 不思議そうに首を傾げる姫子であったが、ふと彼女に疑問が浮かんだ。


「そういえばヨッシーのタイプって、どういう女子なんだろう?」

「彼の好きなタイプねえ……。たった今、多分正解っぽい推測を思い付いたわ」


「聞かせて聞かせて~」

「吉屋くんは、好きって告白された女子を好きになりそうよね」


「委員長……それ私も思った! わかりみw」


 初めて意見衝突せずに、意気投合できた姫子と委員長。

 しかし二人の関係は、ものの数秒で崩れ去る。


「真理に辿り着いた委員長は近々、ヨッシーに告白する気でいる……そうだね?」

「だから何故そうなるの??」


 あくまで吉屋衛司に恋心を抱いていると疑ってやまない陽キャ美少女に、委員長は再び困惑の声を漏らした。


 やや背が低い姫子は自然と委員長を少し見上げる形になるが、委員長は『校内の男子が羨むこの上目遣いに何故、吉屋くんも惚れ込まないのかしら……』と疑問に感じた。


「委員長は前々からヨッシーと交流があるので、非常に危険視してますとも!」

「先に知り合ったかどうかより、今どれだけ交流があるかの方が大事じゃない?」


「恋愛に先着順という概念は無いか~……。あるとすれば告白の時だけだね!」

「そうそう。他の女子に抜け駆けされる前に、告白しちゃえば良いのよ」


「……」


 委員長から、このカウンターを喰らった姫子は一転、押し黙ってしまった。


「二宮さん……? もう一度言うけど、告白を――」

「それだけは出来な~い! 玉砕したら、それこそ交流が途絶えちゃうよね!?」


「もたもたしてると、私が先に吉屋くんに告白しちゃうわよ。なんてね」

「やめてー! 冗談でも、その『なんてね』は聞きたくないーっ!」


 姫子が悲鳴を上げたところで、昼休み終了を知らせるチャイムが鳴り響く。

 長話し過ぎた二人は慌てて屋上の扉を施錠して、駆け足で教室に戻っていった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き

 教室までのダッシュで美人な同級生に先を越されてしまった!

 争奪戦の前哨かな?

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 吉屋衛司、自宅の一人部屋――。

 姫子の裏アカの呟きを見かけた衛司は、呑気な感想を漏らす。

「これは……小食だった委員長も、たまごマヨぱんの魅力に取り憑かれたのかな」

 好物の争奪戦だと勘違いした衛司は、姫子の真意を量り損ねるのであった。

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