第47話 通り雨に降られた後も、陽キャ美少女という嵐が待っていた①
校舎裏でのぼっち飯には幾つか利点がある。
人懐っこい野良猫を鑑賞できたり、静かに昼食を楽しめるのも利点だが、昼食後に誰も居ないベンチで寝転んで、なんと昼寝まで出来てしまうのだ。
今日は二宮さんと一緒に校舎裏で昼食を摂ったのだが、話を聞いた彼女はさっそく俺の隣のベンチに移動して、猫に囲まれながらの昼寝にチャレンジ。
結果は――。
「起きてヨッシー! 敵襲だ、雨に打たれてる! 私たち濡れてるんですけどw」
「ば、爆睡し過ぎた! ポケットに入れてた単語暗記カードまで濡れてる!」
「英語の鬼怒川先生、超怖いもんね~。ヨッシーは小テスト対策してるんだ~」
「いや、それよりも今は俺たち自身がヤバイ! 上から下まで結構濡れてるぞ!」
――見事に通り雨を浴びてしまった。
元々空模様は怪しかったのだが、大丈夫だろうと油断した俺と二宮さんは、爆睡してしまったのである。
全身びしょ濡れとまではいかないが、さすがに制服を着替えたくなるほどだ。
特に二宮さんの制服のYシャツは水分を含んで、うっすらと下着が透けている。
「急ごう二宮さん! ひとまず旧校舎の空き教室に逃げ込もう!」
「水も滴るイイ女を誰も居ない部屋に連れ込むなんて、どういう目的かな?」
「二宮さんだって(透けてるブラを)他の生徒に見られたくないでしょ?」
「わお、やっぱりお持ち帰り宣言なのかな!」
「……え?」
何やら勘違いしている二宮さんだが、これ以上雨に濡れる訳にはいかない。
俺は「いやあ~、本当はヨッシーの意図は分かってますって。ありがとね!」とはにかむ二宮さんを引き連れて、旧校舎の空き教室に駆け込んだ。
二宮さんと空き教室に避難した俺は、唯一の男友達・友木にRINEする。
最近はRINEを多用していて、友木ともRINE交換したのが功を奏した。
『友木すまない、雨に濡れた。保健室で体操服とタオルを借りてきてくれ』
……このRINEメッセージに既読が付くことはなかった。功は奏さなかった。
恐らく教室で友木も寝ている。
そもそも次の授業が自習になり、その次の英語授業まで暇だったのが、今回の爆睡の一因になっていた。
険しい顔をしているであろう俺に、陽キャ美少女が笑顔を振りまく。
「スマホと睨めっこして、ヨッシーどうしたの~?」
「それが友木と連絡つかなくてさ。二宮さんもRINEで誰かに救援頼めない?」
「オッケ~……じゃなかった! スマホを教室に忘れてきたっぽい~」
普段と変わらない元気な二宮さんだが、このままでは風邪を引きかねないし、あと一応男である俺の前で、いつまでもブラが透けたままというのも嫌だろう。
「そうだ、俺だけ保健室に行って体操服とタオルを借りてくる。ここで待ってて」
「ヨッシーって私の服のサイズ分かる? スリーサイズを教えておこうか!」
「いや、普通に服のサイズだけ教えてくれれば良いよ」
「上から八十ろ――」
「行ってくる」
「あぁーっ! 冗談ですってばー!」
二宮さんの回答をスルーして保健室へと向かった俺は、先日お世話になった養護教諭に頼んで、二宮さんの体格に合うサイズの体操服とタオルも借りる。
若干好奇の視線を感じながら現校舎の廊下を走り、旧校舎の空き教室に戻ってくると、何故か二宮さんはカーテンの裏へと身を隠した状態で話しかけてきた。
「ねえヨッシー、シュレーディンガーのアレを知ってるかい?」
「シュレーディンガーの猫? 観測するまで猫の状態は決定してないって話かな」
「それですそれ♪ さてここで問題、今の私はブラを付けているでしょうか?」
「えっ」
二人分の着替えとタオルを手にしたまま俺は、妙な出題をされてしまった。
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