第48話 通り雨に降られた後も、陽キャ美少女という嵐が待っていた②
カーテンの裏に隠れている二宮さんは、まだ濡れたYシャツを着たままである。
「ヒントその一、私の肩のあたりを見てみよう!」
「カーテンに隠れているから、そもそも肩のあたりまでしか見えないのだが……」
「ふっふっふ、仕方ない。ヒントその二、観測すれば事象は収束するよ!」
「多分その量子力学の話って今は関係ないよね? 観測……。肩……。んん!?」
雨に打たれて下着が透けてしまっている二宮さんの為にと思って保健室まで走ったが、言われてみれば、その肩紐が今は透けていない。
つまりブラだけ脱いだのか。
「雨に濡れて気持ち悪かったのかもしれないけど、俺が戻ってくるって分かっているのに下着を脱いじゃうのは、さすがに無防備すぎでは?」
「待ちたまえヨッシー助教授。もっと間近で観測してみないと、私が下着を付けているか確定出来ないのではないかな? そうは思わないかね?」
そう言うと二宮さんは、端整な顔を挑発的な笑みで歪ませる。
安易に『ブラを付けてない』と答えたことを煽るかのような二宮さんだが、天は彼女に味方しなかった。
「晴れてきたなあ……。やっぱり通り雨だったみたいだ」
「正解が分からないからと言って、回答を誤魔化そうとしてるのかな?」
「えっと……雲間からの日光で、カーテンに全身の影が映ってきた……。胸元から包帯みたいなものが垂れ下がってるよね? まさか隣室からサラシ借りてきた?」
「なっ!? 完璧にバレたーっ!?」
旧校舎の空室の幾つかは部室として使われているのと、隣が演劇部の部室ということも思い出したので、試しに推測で答えてみたら正解してしまった。
ドヤ顔気味に煽っていた二宮さんであったが、おもちゃを突然取り上げられてしまった子供のように呆然と立ち尽くす。
「ヨッシーに『ノーブラですがサラシ付けてますしw ヨッシーえっちーw』ってからかうシュレーディンガーのブラ作戦を思い付いたのにぃ~……」
「その作戦、二宮さんにメリットある?」
「超ありますとも~。失敗しちゃったけど! あとで演劇部の友達に謝らねば~」
「とりあえずシュレーディンガーさんと、保健室の先生にも謝ろうか」
「シュレーディンガーさん、保健室の先生、それにヨッシーごめ……くしゅん!」
「ほら。ちょうど晴れてきたことだし、風邪を引く前に着替えを済ませよう」
「ぐぬぬ~……。全く動じないとは……。完全敗北だぁ~……」
俺自身も早く着替えたいので、保健室の先生が貸してくれた体操着とタオルを渡すべく近寄ると、二宮さんがしょぼくれた表情でカーテンの裏から出てきた。
体操服とタオルを受け取ろうと両手を差し出してきた二宮さんだが、演劇部の部室から拝借してきたサラシの巻き方が甘く、大きな双丘がサラシから零れそうになっている。
いつものあがり症とはまた違う理由で、頬が熱くなる感覚に襲われた。
「おやおや? カーテン越しのシルエットと実物では勝手が違うようだね?」
「そ、それは当然だと思う……。やっぱり二宮さん、無防備すぎると思う……」
「さすがに鉄壁のヨッシーでも照れるようだね! 隣の演劇部の部室にブラを放置しっぱなしの私も、かなり恥ずかしいので引き分けということで~」
「……恥ずかしがるところ、そこ?」
しおれた花みたいになっていた二宮さんの顔が、いつもの見慣れた明るい表情へ変わったことに首を傾げながら、俺は別の空き教室で着替えた。
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・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き
いつもの男子をからかうことに成功♪
なにせ背丈の割りに意外と胸が大きいですし!
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「寿司屋での俺の発言を流用してる。あの発言は彼女から振られたけども……」
先日あの寿司屋で『二宮さんの好きなところ十一個』を宣言してから、これまで以上に距離感が近い気がする。
勘違いするな俺、今日の二宮さんはからかってただけなんだ。
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