第44話 皆で読書会のはずが、陽キャ美少女と家で二人きりになった②
まだ夏ではないが、窓が閉め切りだと暑いのかなと思い、俺は窓に手を掛ける。
「ほら。窓を開けると涼しいよ?」
「だ、ダメだよヨッシー! その……窓は閉めておかないと、こ、声とか……」
「そうか、失念していた。じゃあ窓は閉めておくよ」
これから二宮さんとラノベ読書会なのだ。
例えば『再ゼロ』をお借りしたとして、涙なしで語れないシーンの時に、俺が感極まって嗚咽を漏らす可能性も無くはない。
「鍵も閉めて、と……。二宮さん、ご家族の予定は分かった?」
「え、うん! 午後二時頃にお姉ちゃんたちが戻ってくるのが最速っぽいかな」
「なら午後一時くらいまでなら大丈夫だろう。さっそく始めるか」
本棚のラノベをお借りしようと立ち上がると、二宮さんが慌てて制止してきた。
「た、確かに今の私は、ヨッシーも来る読書会ってことで、休日お出かけ仕様でバッチリ服や髪型もセットしてますけど、まだその……そういうのは早くないですかね!?」
何故か身だしなみについて言及されたが、俺は俺で肝心なことを忘れていた。
普段は電子書籍派なので、リアル書籍を触る時の配慮に及んでいなかった。
「忘れてた……。こういう時は前もって洗っておかないとな」
「あぅ……その……。わ、わかった! ……いや待って? ヨッシーが何か勘違いしている可能性も……。でもとりあえず、よ、浴室までご案内しようか~」
「んん? 手を洗うなら洗面台じゃなくて、台所でよくないか?」
「……はい?」
「え?」
「身体を洗うんじゃないんですか?」
「いや、普通は手を洗うだけで充分では? 二宮さんって意外と潔癖症なの?」
「……??」
赤ら顔だった二宮さんは、俺の話について行けず、その場で固まってしまった。
しかし俺が無言で、ラノベを触るジェスチャーをしてから、両手を洗うジェスチャーをしてみると、再び頬に赤みが差してきた。
「え、あ、ああ! なるほどそういう意味ですよね! いやあ冗談ですよ冗談~。別にどこも洗わなくても、普通に本を触って頂いて問題無いです!」
「そうか。ならさっそくラノベ読書会を始めようか」
「お、おうともさ~。本棚から好きなものをあさるが良い~」
お言葉に甘えて、映画化もされた『あのすば』を選んで、俺は読書を始める。
二宮さんは子供が不貞腐れた時のような、でも非常に可愛らしい表情で呟いた。
「むぅ~。ヨッシーはドキドキしてないの~?」
「ドキドキしてるぞ。彼氏持ちリア充のお姉さんたちに恨みは無いが、恋人いない歴=年齢のコミュ障には荷が重い。午後一時あたりで俺は帰ろうかなと思ってる」
「そういうヒヤヒヤしてる的な意味の、ドキドキではなくてですね~!」
その後も二宮さんから謎の抗議を受けながらも、読書会は無事に終了した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き
お姉ちゃんに「二人きりでドキドキした」と報告したら
「不埒な奴め~」と笑われた!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「委員長がドタキャンしたとはいえ、結果的には家で二人きりだしな。二宮さんといえど緊張してたのか。俺がやましい目的の不埒な奴と、お姉さんが誤解しても仕方ない」
とはいえ二宮さんがその気でもない限り、不埒な真似などしないのだが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます