第42話 委員長の助言で、陽キャ美少女のスキンシップが激しい件③

「もっとお喋りしたいのは確かですけども! 私はそれ以上を望んでるぞ~!」

「え?」


 二宮さんは俺にもたれ掛かった状態から、そのまま俺の太ももに両腕と頭を乗せてきて、わざとらしく「ぐすんぐすん」と声を上げながら、泣きついてきた。


 膝枕にも近いような状態なので、俺は緊張して少しだけ太ももの筋肉が強張る。


「うう……。ヨッシーともっとお近づきになりたいぃ~……!」

「物理的な距離で言えば、これ以上ないほどの距離間だと思うが……」

「リアクションだけじゃなくて、ヨッシーからのアクションも欲しいよぉ~……」


 早朝RINEした委員長の『異性として距離を縮めたい』って解釈は間違いとしても、本当に二宮さんは俺に『友人として距離を縮めてきてほしい』のかもしれない。


 それならきちんと答えてあげねばと思った俺は、委員長や竹内さんがまだ隣のベンチで見ているが、顔を伏せたままの二宮さんの頭を撫でてみた。


「……ん!? まさか私、ヨッシーから……ヨシヨシされてる!?」

「いや、そんな親父ギャグ的な感覚で頭を撫でたわけでは……」

「でも確かにヨッシー自ら、撫でてくれたよね!」


 俺の太ももに頭と腕を預けていた二宮さんは、先程まで泣き真似をしていたとは思えないような勢いで身を起こして、俺にいつものドヤ顔を見せてきた。


「でもですね~。親父ギャグ的とは、言い得て妙ですなヨッシー♪」

「と言うと?」

「だって今のナデナデは父親が小さい娘をあやすような感じ……だったような? なので今度は恋人を愛しむような感じで、ナデナデお願いします!」


 日差しが照りつける中、暑苦しい密着状態でそう言ってのけた二宮さん。

 満面の笑みで完全復活した様子の二宮さんに、俺の気持ちも明るくなってきた。


「恋人いない歴=年齢の俺に、恋人っぽく撫でてと言われても困るぞ」

「おや、奇遇だね? 私も恋人いない歴=年齢ですが?」


「俺は恋人作ない歴で、二宮さんは恋人作ない歴。雲泥の差があるかな」

「観念するんだヨッシー! 無駄な抵抗はせず、私に恋人ナデナデを~!」


 昼休みも終わりそうだというのに、俺は二宮さんとベンチで揉み合いになる。


 いつの間にやら猫鑑賞から同級生鑑賞をしていた委員長と竹内さんは、ようやく昼食を食べ終わり、俺と二宮さんの方を向いて手を合わせてきた。


「「ご馳走さまでした」」

「いえいえ、手前味噌ですがご賞味頂けたようで。私はおかわり希望ですが~」

「待って二宮さん。これ以上、誤解の輪を広げたらいけない」


 委員長の友達の竹内さんにまで、どうやら勘違いが伝染してしまった気がするが、その誤解を解く余裕は無く、俺は二宮さんから何度も頭を擦り付けられるのだった。


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・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き

 頭を撫でてくれた男子に嘘ついちゃった!

 本当は優しい手つきが嬉しかったな~。

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「嘘って何だろ? 父親っぽい撫で方が、実はお気に召してたのだろうか」

 父親から撫でられるようで嬉しかったけど、ファザコンと思われたくなかった?

 親との仲が良好なのであれば、それはむしろ誇って良いことだと、俺は思う。

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