第41話 委員長の助言で、陽キャ美少女のスキンシップが激しい件②
「ヒメっち、それ良さげ! 上手く成功すればさ、恋人繋ぎの直後に、身体を密着させて彼氏に可愛くおねだり出来そうだし!」
「その通り! 以上、モデルのお姉ちゃんたち直伝の女子力磨き講座でした~」
確かに恋人繋ぎされた直後に、さらに女子の方から胸の感触まで感じるほど接近されて甘えられたら効果抜群かもしれない。実際にドキリとしてしまった。
クラスカースト上位の女子たちは恋人に試すのだろうか。リア充すぎる。
そして男子たちからの「吉屋め! 二宮さんの恋人役として、あんなことされるなんて羨まし過ぎる!」という血涙すら出そうな視線を、強烈に感じているが問題ない。
俺はクラスカースト下位なので「運の良い奴」という感想に落ち着くだろう。
結果的に二宮さんは、教室で恋人繋ぎ+腕に抱きつきまで成し遂げてしまった。
事の発端である委員長を見ると、お茶目にピースサインを向けてくる。
「委員長……。あれは絶対に楽しんでるな……!」
小声で呟く俺に、二宮さんは手の仕草で『腰を屈めて』と指示してきた。
男子陣が「俺にはツキが無かったんだ……」と己の運を呪うなか、背の低い二宮さんに合わせて、俺は指示通りに腰を屈める。
すると二宮さんは、俺にだけ聞こえるように、そっと耳打ちしてきた。
「お姉ちゃんが初恋相手を落とした技だし、ヨッシーも恋に落ちたはず!」
改めて二宮さんの顔を見てみると、絵に描いたようなドヤ顔だった。
俺は教室を元の雰囲気に戻した彼女の手腕に、驚き混じりの笑みを返した。
お昼休み、野良猫の溜まり場の校舎裏――。
今日は委員長が友人の竹内さんも連れて、猫鑑賞と洒落込んでいた。
俺は委員長たちの隣のベンチで、二宮さんにくっつかれながら座っている。
「あついわね。何がとは言わないけど」
「そうだねクロポヨ! 何がとは言わないけど!」
委員長と竹内さんは、俺にべったりともたれ掛かりながら、大好物のたまごマヨぱんを食べている二宮さんに向けてのようなセリフを漏らした。
雲一つない快晴で日光も強い今日だと、冗談抜きで暑いので、俺も呟く。
「暑いね二宮さん」
「安心してヨッシー。お姉ちゃん直伝のメイクは、この程度の汗では落ちないよ」
二宮さんに続けるように、委員長と竹内さんも合の手を入れ始めた。
「でも吉屋くんの心は、恋に落ちてしまうかも。なんてね」
「上手い! クロポヨに座布団二枚!」
今回の騒動に至るアドバイスを二宮さんに吹き込んだ委員長はともかく、竹内さんまで何だか楽しそうだ。
このままではいけないと思い、俺は二宮さんを通常状態へ戻すことにした。
「二宮さん、俺ともっとお喋りしたい……みたいなこと思ってる?」
「むむっ! いつの間にかヨッシーが、読心術を身につけている……。思っていたことを言い当てられてしまった!」
「いやまあ、さすがに昨日の今日で二宮さんの様子が変わり過ぎだったから。別にスキンシップを増やさなくても友人なんだし、いくらでも話しかけてもらって大丈夫だよ」
これでお喋り好きな二宮さんは、スキンシップに頼ることは無くなるだろう。
――そう思った俺が甘かった。
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