第40話 委員長の助言で、陽キャ美少女のスキンシップが激しい件①

 二宮さんとRINE交換した俺だが、その後、委員長とも交換している。


 とはいえ、そこまで頻繁に彼女とは連絡を取り合っていないのだが、今日は朝早くから委員長がRINEで通話してきた。


「おはよう吉屋くん。登校前に伝えたいことがあって」

「委員長から電話とは珍しい。またSNSで二宮さんから何か相談されたの?」


「ええ。貴方との『距離を縮めたい』と、また最近恋愛相談されたの」

「まさか『所持金チート』の作者が委員長とは、二宮さん知らないからなあ……」


 どうやら委員長は、恋愛相談だという勘違いを、まだ引き摺っているらしい。

 なので俺は、「友人として距離を縮めたいと相談された」と脳内補正を掛けた。


「私だけリアルバレしてないから、何だか二宮さんを騙し続けているようで心苦しくて……。だから真面目に恋愛アドバイスしたわ」


「恋愛アドバイス? 何だか嫌な予感がしてきたぞ」

「そんなに距離を縮めたいならスキンシップを激しくしましょう、と助言したの」


「既に二宮さんは、あの陽キャ的ノリでスキンシップ過剰なのだが!」


 さっそく嫌な予感が的中し始めたが、まだまだ俺の予感は当たり続ける。


「男子は物理的接触を増やせば、案外コロッといくものよ。と後押しもしたわ」

「二宮さんからは『距離を縮めたい』とだけ相談されたんじゃないのか?」


「そうよ。つまり『異性として距離を縮めたい』ってことでしょう」

「……」


 恋バナ好きなのか委員長の強固な勘違いを前に、『友人として距離を縮めたいということだね』と訂正する気力も無くなってしまった。


 俺の無言を同意と受け取った委員長は、RINE通話をこの言葉で終わらせた。


「恋愛相談は言い過ぎ? 恋愛一歩手前相談が妥当かしら。今日は頑張ってね」




 早朝からとんでもないRINEをされたが、俺の決意は変わらない。

 二宮さんにとって俺はただの男友達。今までのように変わらず接するのだ。


 俺は普段通りの時間に登校して教室の扉を開けると、扉の近くに潜んでいた二宮さんが横から飛び出してきた。


「ヨッシー、大好きだ~!」

「うぉわっ!? さっそくか!?」


 勢いそのままに手を握られたと思ったら、二宮さんが恋人繋ぎをしてきた!


 クラスカースト下位層の地味な俺と、クラスカースト最上位の陽キャ美少女という組み合わせだからこそ、今まで見逃されてきたようなものの、さすがに今回は……。


 教室でさらりと恋人繋ぎを見せつけられたクラスメイトたちに浮かぶ驚愕とした表情に、最悪の事態も覚悟したが、コミュ力カンストな二宮さんが本領発揮し始めた。


「お姉ちゃん直伝のこの早業! 長年の初恋相手を落とした決め技らしいよ~」

「恋人繋ぎに加えて上目遣いも流石……。これがモデル姉妹の必殺技か……」


 どうにもしまらない俺の返答で、張り詰めていた教室の空気が一気に和らぐ。

 二宮さんとのやり取りを見た同級生たちが「いつものノリ?」と認識し始める。


「今の恋人繋ぎ状態からの派生技も、教わったけど体験してみます?」

「格ゲーみたいになってきたな。じゃあ見せてもらおうか」


「ふっふっふ、では! 少ししゃがむようなモーションを挟んでから~……つま先立ちで背を伸ばして相手の耳元まで急接近! そのまま甘い言葉を囁くべし☆」


「本当に格ゲーの技入力コマンドみたいな動きだ……けど、二宮さん残念」

「……ああっ! よ、ヨッシーの耳元で囁けない!?」


 恋人繋ぎをした腕に胸を押し当てながら、間近で耳打ちする狙いのようだったが、二宮さんは意外と背が低いので、俺の耳元に届かず仕舞いで終わった。


 しかしクラスカースト上位の女子たちには見所があったらしく歓声が上がる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る