第二章 友達以上恋人未満の間柄?
序幕話 陽キャ美少女は知らない。委員長も裏アカの事に気付いたとは①
今日も俺は昼休みの教室を抜け出し、人気のない校舎裏のベンチに座った。
普段通り野良猫たちに囲まれ、購買の惣菜パンを静かに食べる。
軽く胃袋に放り込んだところで、珍しく委員長がこの校舎裏へとやって来た。
「こんにちは吉屋くん。恋バナでもしましょう」
「……はい?」
黒髪ロングで美人な委員長が口にしても特段おかしくない話題だが、そういう話相手としては、俺は相応しくないはずである。
委員長は俺が座っているベンチへと歩み寄り、そのまま隣に腰を下ろした。
「何から話そうかしら……。吉屋くんってSNSに参加していたりする?」
「別に発信はしてないな。RINEもやってない。友人の友木にもスマホに入れとけって言われたけど、既読がどうとか何だか面倒臭そうだと思って断ったから」
「あら。てっきりもう二宮さんとRINE交換済みだと思っていたわ」
「そういえばだいぶ昔に、二宮さんにも言われたことあった気がする……。その時もインストールすらしてないって断ったんだけど、凄く渋い顔をされたっけ」
俺なりに当時の二宮さんの表情を思い出し、表情を真似して作って見せる。
委員長は面白そうにくすくすと小さく微笑んでから、本題を切り出してきた。
「私ね……。つい最近、SNSで二宮さんに恋愛相談されたみたいなの」
「二宮さんが委員長に恋愛相……ん? されたみたい、ってどういうこと?」
当事者が用いるには少々おかしい言い回しに、俺は首を傾げる。
「百聞は一見に如かず、よね。私のアカウント画面を見てくれるかしら」
隣に座っていた委員長が俺に肩を寄せるように近づき、スマホを見せてきた。
二宮さんが年齢相応の顔立ちをした美少女とすれば、委員長は才媛の大学生と言っても通用しそうなくらい大人びているので、女子慣れしていない俺は少しだけ緊張する。
「ほら見て。匿名で知り合った【おしゃべり好きな宮姫】って名前の子と、呟きSNSのDM機能でやり取りしてるんだけど、話を聞けば聞くほど二宮さんとしか思えなくて」
「……!? へ、へぇー……。あの二宮さんが裏アカで呟いてた、のかー……」
二宮さんの裏アカを、委員長も気付いてしまったと知り、さすがに
委員長は【白山ナリサ】というアカウントでログインしているが、この名前、どこかで見た気が……。委員長の本名は黒山
響きが似てるから、ただのデジャブかな。
「さて、二宮さんのこの裏アカ。この呟き。吉屋くんにはどう見えたかしら」
「うーん……。日記用アカウントじゃない? 鍵かけてないけど結構そういう人も多いし。知り合い用の表アカじゃなさそうだし、やっぱり日記の代わりでは?」
俺の言葉を聞き届けた委員長は、何故か少しだけ呆れた様子で紙パックのいちご牛乳にストローを挿して口をつけた。
「信じ難いけど、ラブコメの主人公みたいな人って本当に居るのね……」
「なんで急にラブコメなんて話が出てくるんだ?」
まさか委員長は、恋バナ独り言用の裏アカだとか勘違いしているのだろうか。
委員長は飲み干した紙パックを折りたたみながら、困った様子で呟く。
「何だか手詰まりになってしまったわね。第三者からは見られない
「本当に? 委員長個人の解釈が入ってないか」
「もちろん文字通りそう思ってるとは、送られてこなかったけど……」
「なら委員長の勘違いだよ。この裏アカだって日常の呟きしかされていないぞ? あとなろう作家をフォローしてるみたいだし、作家情報収集用アカなのかも」
「……あ、頭が痛くなってきたわ。もうDMも直接見せてしまおうかしら……」
整った美顔を曇らせ始めた委員長が心配になって、表情を窺おうとしたら、聞き慣れた陽キャ美少女の声が、背後から聞こえてきた。
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