第13話 委員長に休日の話をすると、当の陽キャ美少女が現れた②

 隣のベンチでずっと黙ったままの委員長に話を振ってみる。


「俺が見かけた人は彼氏じゃなくてお兄さんでしたって話だったけど、他に何か聞きたいこととかある?」

「そうね。吉屋くんは二宮さんを魅力的だと思っているか、聞いてみたいわね」


 委員長の呟きに、タマゴまよパンを食べ終わった二宮さんが食いついた。


「委員長ナイスだ~。それ私も聞きたいです!」


 二人の美少女から視線を向けられて、俺は少し気後れする。


 現役読者モデルでクラスカースト最上位かつ学校一の美少女としても有名な陽キャで、誰にも明るく接する性格も兼ね備えた二宮さんを、魅力的と思わない男子は居ない。


 俺だって文句なしに魅力的だと思うが、面と向かってそう宣言するというのは、異性に対する発言みたいに聞こえてしまいそうだ。そういう意図は無いのだが。


「二宮さんは魅力的だよ」

「外見ですか! 内面ですか!」


 矢のように二宮さんから質問が飛んで来たので、勢いに押されて俺も手短に答える。


「両方ともだ」

「ええっ!? ま、まさかの両方ともですか!?」

「お、おう」

「そっかぁ~……。ふ……ふふ、ふふっ……♪」


 俺の回答を聞いた二宮さんは、どや顔とにやけ顔を足して2で割ったような何とも言えない表情で静かに笑った後、膝の上に乗せたチョコレート菓子を無言で食べ始めた。


 即断即決即行動という言葉が似合う二宮さんがあまり見せない反応に、俺はもしかして途轍もなく見当違いな回答をしてしまったのではないか、と冷や汗を流す。


 徹底して傍観者の委員長が、二本目のイチゴ牛乳を飲み干して呟いた。


「吉屋くん、ごちそうさま」

「うお、本当にイチゴ牛乳だけで昼飯を済ませるとは」

「私は小食だから。それに貴方たちのやり取りも甘くてお腹いっぱい。なんてね」

「そういう冗談はやめて……。俺なんかに女子への意見を言わせるから、お通夜みたいな雰囲気に……」


 自分のコミュ力の無さに焦っていると、横でチョコレート菓子を食べていた二宮さんがガバッと俺の手を握ってきた。


「私、ヨッシーにウザがられてないんですか!」

「え? 二宮さんのどこにウザい要素が?」


「ヨッシーも身をもって知ってると思うけど、ガツガツ前のめり気味にハイテンションで絡んできたりとか!」

「天性のコミュ力で正直かなり羨ましい」


「おぉお~! 本当……ですかね?」

「もちろん。そういうところが二宮さんの魅力だと俺は思うよ」


 すると二宮さんは握手したまま両手を大きく振ってきて、綺麗な双眸を輝かせた。


 どうやら俺が、内心では疎ましく思っているのではと心配していたようだ。


 あまり受け答えが上手ではない自覚はあるので、普段から余計な心配をさせてしまっていたのかなと内省していると、二宮さんが俺にチョコレート菓子を一つ渡してきた。


「ヨッシーは実に素晴らしい友達だね。なので来年のバレンタインに先駆け、友チョコを進呈しようではないか~」

「さすが二宮さん、前代未聞・半年以上フライングの友チョコだ。というか友人なのか」

「ここにきて友達じゃないとか言われたら、女の武器が瞳から溢れ出ます!」

「友達で合ってる! 合ってるから、ありがたくフライング友チョコ頂きます!」


 女子の涙を見てしまったらいよいよお手上げの俺は、慌てて友チョコを食べた。


 二宮さんと委員長が微笑みながら俺のことを眺めていたが、二人の笑みはそれぞれ違う性質のように見えたのが印象的だった。


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・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き

 何故いつもの男子は自己評価が低いのか?

 目の前では言えないけど百点満点だよ!

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「裏アカでも俺の評価高いな二宮さん。でも百点満点って採点が甘すぎないか?」

 多く見積もって赤点ギリギリの三十点とかで妥当だと思うが、むしろ二宮さんの方こそ自己評価が低いようだったので、今日はそれを否定することができて本当に良かった。

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