第8話 友人と談笑中でも、陽キャ美少女は今日とて話しかけてくる①
俺がなろうを中心に読むラノベオタクとすれば、俺の唯一の友人である
毎週月曜日は通学路のコンビニで週刊少年ジャンパーを買って、休み時間にダラダラ読み進めるのが友木のスタイルとなっている。
最近は二宮さんと話すことが多くなっているので、俺以外にも友人がいる友木とは話す機会が減っているが、お互いオタトークできる相手として交流は続いている。
「よお衛司、今週の『医師の石』も面白かったぜ! お前も読んでみろって」
昼休みに入り、週刊少年誌を読み終えた友木が俺に話しかけてきた。
少年誌を手渡された俺はさっそく、友木が言っていた作品を読み始める。
「普段はなろうコミカライズしか読まないが、現物を渡されるとつい見ちゃうな」
「基本無料ってのも良いが、毎回コンテンツに対価を支払うってのも良いもんだぞ」
「これだけ分厚い漫画雑誌が数百円って、冷静に考えるとコスパやばいね」
「少年漫画沼にハマりたければ、いつでも俺が道連れにしてやるぜ」
友木は少年誌と共にコンビニで買ったであろうカツサンドを、俺の机のそばで豪快に立ち食いする。
作品を読み終えた俺は、早食いでカツサンドを完食した友木に少年誌を返した。
「さすが最大手雑誌のメジャー作だけあって毎回面白いな。ありがとう友木」
「気にするなって。それよか購買に行く前なのに、邪魔して悪かっ……んお?」
友木が言葉を飲み込んだが、それもそのはず。
今日も亜麻色のセミロングの髪をふわりふわりと揺らしながら、陽キャ美少女二宮さんが俺の机にやってきたからだ。
「デデデン! ここで問題です!」
「おう」「えっ?」
二宮さんのノリに慣れていない友木だけ疑問の声を漏らすなか、俺の机の上に大きめのお弁当箱がそっと静かに置かれて、問題が出される。
「このお弁当箱……中身は何でしょうか!」
「実は中身が空で『二宮さんの料理など無い』が正解とか?」
「ぶぶ~」
左右の人差し指をクロスして不正解と告げた二宮さんは、チラリと横の友木を見た。
「衛司……。女子が弁当持参してるのに、何もないってこたぁ無いだろうに」
「いや、二宮さんなら引っ掛け問題を用意してきても不思議じゃないと思ってさ」
「むむっ! さすがヨッシー、当たらずとも遠からずかも」
そう言うと二宮さんはお弁当箱を開いて、俺と友木に中身を見せてきた。
「見よ、私のお姉ちゃんが彼氏のために料理した余り物……ザ・二軍メンバーを!」
「へぇー。普通に美味しそうだ」
ケチャップで味と色が付けられたご飯に、ミートボールや鶏の唐揚げ、ブロッコリーやコーンなどが姿を現す。俺の母さんが用意すると、いわゆる「茶色弁当」になってしまうのだが、お姉さん力作というこのお弁当は彩り豊かで、食欲もそそられる。
もし俺が『二宮姫子の料理は無い』と答えていれば正解だった等と思い返していると、二宮さんから箸を渡された。
「味は彼氏用のお弁当と変わらないから、クラスの誰かに食レポしてもらってきてーってお姉ちゃんに言われちゃいまして! 今後の参考にしたいんだってさ~」
「やったな衛司。購買で飯買わなくてもガッツリ食べれるじゃん!」
「おう。じゃあ二宮さん、ありがたく食べさせてもらうよ」
どれから食べようか迷っていると、友木が自分の椅子を二宮さんのもとに運んできた。
「二宮さんすまねえ。俺は空き教室で箒野球やるんで、衛司のことは任せた!」
「よっしゃ、任されたぜ! あ、生徒指導員にバレたら大変だよ~?」
「大丈夫! この前『雑巾をボール代わりにするとは汚いだろう』って叱られたのを考慮して、今回はピンポン球を持参して箒野球することにしたんで!」
「いや、それ全然大丈夫じゃないのでは」
「ヨッシー真顔w」
俺の指摘も気にせず友木は他の友人たちと遊びに出かけて、二宮さんは友木が用意した椅子を俺の席に寄せて座った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます