第124話 急展開?! 良くない知らせ (ホロ視点)


 翌朝、俺のケージの前、目が覚めたら幸太郎がいた。


 随分とスッキリとした顔をしている。


 俺が夢に入った意味はあったんだなとホッとした俺は朝ご飯をねだるため、ニャンナーと可愛く鳴いた。


 頬を緩ませた幸太郎が俺の頭を優しく撫でている。


「昨日は夢に出てきてくれてありがとう。

どんな夢か忘れちゃったけど、なんだか分かんないけど胸のつかえが取れた気がするんだ。


なーんて、ホロちゃんに言っても分かんないか」



 そう言いながら幸太郎が俺の頭をもう一度、優しくポンポンと撫でた。



 

「ニャンナーオ(眠たそうね)」


 幸太郎の後ろからプディが顔を出した。


 最近、比奈が学校の行きがけに家に寄り、プディを家に預けて学校帰りに受け取りに来る様になっていた。



 なんだか前より慌ただしい気がするが、幸太郎も比奈と会えて嬉しいのか、表情が明るい。



 俺はそんなにいつも眠そうな顔をしているのか、最近、朝、会う度にプディにこの挨拶をされる気がする。



 プディを追いかける様にデンも顔を出した。


 

 皆、若いのに朝が早いな。


 いや、デンっていくつなんだ?


 だけど、どう見ても子犬ではないからデンだけおじさんなのか?



 まあどちらでも良いがプディの尻の穴の匂いを嗅ぐのはセクハラになるとは思うがな。

 俺の尻の穴なら良いと言う話でもないが......。



 幸太郎がキッチンの方に歩き出そうとしたその時、リビングのテーブルの上に置いてあるパソコンから超音波の様な奇妙な音が鳴り響いた。


 俺やプディしかその音は聞こえない様だ。


 幸太郎はそのままキッチンの方に行ってしまったし、デンも何もなかった様な呑気な顔で、プディの尻尾に顔をうずめたりしている。



 プディはそのデンのしている行動を迷惑そうにはしていたがパソコンからの音に、いち早く反応した。



 そしてまただ。



 また空間の時間が止まった。



 幸太郎、デン、俺の動きが......。

この中での空間の動きが止まった。



 そして、プディは素早くテーブルの上に広げられていた幸太郎のノートパソコンの上に飛び乗った。


 そして小さな光と共にプディの右前足の人差し指の爪が2cm ほど伸びた。



 プディが時間を止める他にもパワーを使ったと言う事だ。




 相変わらず俺の心の中の時間までは止まっていない。



 この前と違うのは俺の身体も止まっている様だけど、前足の小指の横が、無性に熱く感じた。




 プディは伸びた人差し指の爪部分で巧みにキーボードを叩く。



 そうしていたらパソコンから声が聞こえてきた。



 厳密にはパソコンからではないのかもしれないが、パソコンの媒体を通じて声が聞こえてきた。


 その声は日本語ではない。


 そう、多分、雪やプディ達の星の言葉なのだろうと思う。



『......、は、はい。

......こ、こちら......ユイリーです。

......あっ!

......プディ王女! 


急な連絡、失礼しました。


......大変なのです。星に残っているモノから先程連絡があったのですが、星での全てのパワー供給が止まってしまい、今現在、星が暗黒に包まれてしまいました。


......すぐに星に戻る必要があります。


私達の改革も、星自体が機能停止してしまったら、もともこもありません』



 ユイリーさんと言う方の声はかなり切迫していて急を要する状況が事情を知らない俺にまで伝わってきた。


『ユイリー、落ち着いて!


どういう事なの?



この前の通信の時には何も言っていなかったじゃない』


 プディの声も震えている。


 はっきりとは分からないが、やばい状況なのかもしれない。


『プディ様、王を潰す前にまず、星を立て直さなければ、パワーはまだ足りないかもしれませんが、一刻を争うのです』



 プディの星はどういう状況なんだ?!


 この状況、本当にプディと雪は俺を置いて、行ってしまうんじゃないか?!



『パワーは......。


足りなくは無いかもしれない。



ホロロさんが集めていた分と......』




 そう言いながらプディは身体が止まっている俺を見た。



 もしかしてプディは俺を連れて行こうと考えている?




 俺は熱くなってきていた小指の横に意識を集中した。



 俺の前足の小指の横はどんどんどんどん熱くなってきて、パリンッという何かが割れた音と共に前足の小指の横から指が生えたと同時に俺の身体は自由になった。



『プディ。


詳しく教えてくれ。


雪がなんと言おうと、俺も、プディと雪と一緒に行く。


一緒に行かせてくれ』



 びっくりした様にプディは俺を見つめていた。


 困った顔をしながらもプディは小さく頷いた。

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