第123話 幸太郎と俺 苦笑い過去の修復(ホロ視点)
幸太郎の心のシコリ。
今の俺になら、とる事が出来るんだろうか?
『猫の目』の画面には幸太郎少年とクウロが写っている。
だけど、このクウロ(雪)は幸太郎少年が過去に帽子を届けてくれた猫がいた。そう思っていて、それが夢に反映しているだけだから実際のクウロじゃない。
偽物でもクウロに会える。
その事自体は少しだけワクワクした。
このクウロは俺に懐いてくれるかは分からないが......。
そんな事より今は幸太郎少年だよな。
俺が夢でパワーを集める事で、雪の為に手伝える何かに繋がるなら、俺はやり続ける必要がある。
それに、少しでもパワーをつけて、雪達の行動を察知出来ないと、気がついた時には雪もプディも居ない。探し様もない。
そんな取り返しのつかない事になる可能性もある。
それに......。
俺はもう一度、『猫の目』の画面の中の幸太郎少年とクウロを見た。
こんな辛そうな思いを幸太郎にさせてしまっている。
俺の事はきっかけにすぎないかもしれないが、そのせいで幸太郎が人嫌いになったのなら、俺がなんとかしなければ......!
俺は意を決して画面の中に飛び込んだ。
幸太郎の夢の中は少し冷たくて、暗くて、幸太郎の心がそのまま反映しているかの様だった。
画面の中の幸太郎少年が、俺を見て驚いた表情を浮かべている。
この幸太郎少年は、見た目は子供だけど、ある意味、精神的には今の幸太郎にきっと近いんだよな?
俺もあの頃の俺じゃない。
あんな自分の自己満足を押し付ける様な子供じゃない。
「よう。帽子、貰ってくれたんだな?」
子供の姿だからだろうか?
相手が幸太郎だからだろうか?
笑って言いたいのに、ちょっと素直に言えない俺がいた。
「た、辰也。辰也か?
元気にしているのか?
これは夢だと分かっているんだ。
いつも見る夢だから。
だけど、お前が出てくる事なんか初めてだから、
ちょっと動揺してしまっているよ」
幸太郎少年の声はびっくりしているかの様に声が掠れていた。
幸太郎少年は夢を夢と分かっている。
しかも見た目は子供だけど、心の中はまるっと今の幸太郎の様だ。
素直ではない昔の幸太郎が頭の中にあった俺は、ほっとしたのか身体の力が抜けて、その場を座り込んだ。
びっくりした幸太郎少年が俺の側にかけよってきた。
「あの時は酷い事言って、ごめん。
あの後、かなり後だけど、大人になってから、辰也の家を訪ねたんだ。
だけど家はもう無くて、近くに居た人から辰也の母親が亡くなっている事を聞いて......。
ずっと、ずっと心配していたんだ。
とお前に言ってもコレは夢なんだよな?」
そう言って幸太郎が俺を支えてくれていた。
「夢、だけど......。
夢じゃない......よ。
帽子、ちゃんと、貰ってくれてたんだな。
ありがとう。
俺もごめん。
子供だった。
お前の気持ちを全然考えてなかった」
俺は近くに落ちていた『黒猫の刺繍』の帽子を幸太郎に被せた。
「お前ほど、俺は傷ついちゃいないよ。
俺は大丈夫。
お前は?
お前は大丈夫なのか?」
苦笑いをした幸太郎は気がつくと大人の幸太郎になっていて、俺はホロの......。
真っ白い子猫の姿になっていた。
幸太郎の心のシコリが俺に謝った事で取れて大人に戻ったのか、俺も使命を果たせたから、元のホロの姿に戻ったのかは分からない。
大人になった今現在の幸太郎が、ホロに戻った俺を抱え上げ優しく抱きしめた。
幸太郎の夢の中にはクウロは居なかった。
この夢。
幸太郎のシコリを取ると言うよりも......。
逆に俺自身の為の夢の様な気もしたよ。
幸太郎の胸のシコリ、少しでも減らす事、出来たかな?
幸太郎はこの夢を夢と自覚している様だったから辰也=ホロだと、思う事もないだろう。
夢の登場人物が他の奴に変わるなんてしょっちゅうある事だ。
幸太郎の胸の中で、再び白いモフモフな足になってしまった俺の手をペロっと舐めながら、優しそうな目で見つめる幸太郎を俺は下から見上げていた。
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