第110話 頭の中だけパニック状態(ホロ視点)

 怪しげな、冷えたこの薄暗い空間の中でプディと雪の会話は続く。



 幸太郎、比奈、デン、俺。

 俺も含めて、二人と二匹は行動、表情が止まっている。

 風も吹いていない。


 空気まで止まっているのか?


 感覚はあると言えるか分からない。

 無いと言う訳でも無い。

 不快な訳でも無い。




 プディ―と雪以外はすべての時間が止まってしまっている。


 だけど、これは時間を止めているだけで幸太郎達の身体には支障がない事は以前、似たような事があったから分かっている。



 あの時はプディとの初対面だったし、幸太郎とデンの事を本気で心配したんだよな。


 


 で、現在、雪達は俺の時間も止めていると思っているが……微妙に違う。


 さっきも言った様に、俺の意識だけは動いてしまっている。



 雪とプディも俺が聞いてしまっているって思っていないみたいなんだよな......。


 こんな中途半端な感じで、俺の身体は大丈夫かちょっとだけ心配になった。




 て、いうか俺。


 冷静そうに見えるって?

 


 いやいや、めっちゃパニクッてるよ。




 実際、今動ける状態だったら、同じ場所でグルグル回ったり、酔っぱらいおじさんの様にウロウロしながらワタワタしていたと思うよ。



 それに……。

 恐ろしい……。


 あんな迫力ある雪、初めて見た。

 いつもの、のほほんとしている雪からは想像できない。


 まず、オーラが違う。


 普段はお日様みたいにポカポカで、喋っていたら一緒にお茶でもすすりたくなる雰囲気なのに。


 いつもより一オクターブ低い声だし、なんか背筋が凍りそうだ。(どっちにしても俺の身体は動かないが)



 それに私達の星とか言ってなかったか?

  ど、どういう事なんだ?


 星?


 この世界は俺の知っている世界ではなくて、ゲームか何かの転生?


 それとも......。


 星、という事は......。


 ま、まさか宇宙人? 

 ゆ、雪もプディも宇宙人って事か?


 なーんて、まさかね......。



 俺は思考をフルスピードで回転させながら雪達の言葉に耳をすます。



『えっ? あの......。えっと......』


 【辰君とは誰】かとプディに問われて、さっきまでの迫力が弱まった雪。


 声の高さも、いつものちょっと間が抜けたノホホンなトーンに戻り、言葉も焦っている様に少し自信なさげだ。


 雪には悪いがいつもの雪に戻ったみたいで俺も少し安心した。



 て、言うか、辰君って俺の事だよな?

 俺って巻き込まれてしまっているのか?





 雪やプディ達の星の事情に、って事か?





 確かにプディは【宇宙人】って言うのはあり得るかもしれない。


 色んなことが出来るし……。

 見た目もなんだか綺麗すぎてオーラみたいなモノがあるものな。


 だけど、まさかの雪?


 えっ、ちょっと待ってくれ。

 いったん落ち着こう俺。



 それに、雪が言っている様に、プディに星? の事情に巻き込まれたなんて、そんな危ない事をされた覚えはないが......。



『ホロロ......、ホロ』



 そう呟いてプディが眉をひそめている(何度も言うが猫に眉は無いからイメージ的にそういう表情と言う事だ)。



 プディが呟いているのに合わせて、雪の顔が青くなる。



 ど、どうしたんだ? 雪?

 めっちゃ顔色悪いぞ?


 日頃怒らないのを無理して怒ったもんだから、血圧でも上がって体調を悪くしたのか?


 俺は心配で駆け寄りたかったが、何しろ俺の身体や表情は動かない。



『私はね、ホロは一体、ナニモノなのかと思っていた。

アナタと同じ調査員かもしれないとも。


だけど、ホロからは私達特有の星の香りはしないし、星の話をほのめかしても反応はなかった。


だけど、能力を引き出すのに、ほんの少しだけ手助けをしたら、それには反応があった。


しかも、私達の星のモノよりも大きなパワーを秘めている事が分かった。


ホロの事、アナタはもしかして知っているの?』





 プディが話すたび雪の表情は青くなる。


 雪の事が心配だし、プディの話を聞くと俺は、頭の中だけパニック状態。


 訳が分からず余計に頭がこんがらがった。



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