第109話 雪? 俺に聞かれちゃ困るって、全部聞いてしまっているんだが? (ホロ視点)
ぽかぽかな部屋の中、雪、幸太郎、比奈ちゃんに食べている所を見守られている俺達3匹。
雪から美味しいご飯を貰ってご満悦な俺だ。
なんだか元気がモリモリ沸いてきた。
力コブを作ったらモリっとコブが出てきそうなほどだ。
(猫な俺には無理な事だが)
フー、食った食った。
あまりに美味しくて夢中になって食べたから今日はいつも気になるデンの視線も気にならなかった。
俺は満足げに自分の腹をペロペロと舐めた。
が、その時、違和感を覚えた。
毎日の様に食べた後、気にしていた俺の腹。
ふくれてくることに気がつくのは朝が多かった。
人間の時、友達の所で見た子猫の腹がポッコリふくれているのが可愛くて、良く触らせてもらったりしていた。(クウロも良く食べていたのにそんなに腹はふくれていなかった)
そいつらに今は謝りたい。
ぽっこりと腹がふくれていくのはやはり嫌だ。
そんな風に気にしていた腹だ、こんなに腹一杯なんだ。
ぷっくりとふくれるはずの俺の腹がなんだか……。
おかしい……。
何度見てもスッキリしている様に見える。
俺は何故だか分からず、だけどスリムになった事が嬉しくて、自分の身体中を舐めまわして毛づくろいをしながら確認した。
ほっそり成れた事がちょっと嬉しかった。
雪、ダイエットのサプリでも入れていたのか?
って、そんなの即効性がありすぎて怖いよな……。
俺はちらりと雪を見ると、にこにこと笑っている雪と目が合う。
久し振りの雪の笑顔は眩しすぎる。
日の光を浴びてキラキラきらめいて見える。
雪の肌は本当に名前の通り雪の様に白くて、透明感がある。
俺って死んでいるから生まれ変わるまでいくらか年月が経っているはずだよな?
いや、待てよ幸太郎の携帯を見た時、日付を見るとそんなに経っていなかったか?
そんなに早く生まれ変われるなんておかしな話だ。
も、もしかしたら俺はどこかで身体が重傷で生きていてこのニャンコに生霊として憑りついているとかか?
おおっと、また妄想モードに入っちまってた。
俺は怪訝そうな目で見つめているプディの視線に気がついた。
俺の百面相を見てプディに呆れられてしまった。
と、違うか……。
俺の腹が凹んだからか?
プディが、怪訝そうに眉を潜めて(ニャンコだから眉は無いが人間だったとしたらそう言った表情と言う感じだ)食べるのを止めて雪の事を睨んでいる。
俺のこのスマートになった腹を見て、雪におかしなものでも入れられているとでも思っているのか?
雪に限ってそれだけは絶対無いぞ?
多分、猫にあげちゃダメな物とか、調べ尽くしている様に感じる。
幸太郎は俺のこの変化をどう思っているんだろう?
と、そう思い幸太郎に目線を動かした所で、部屋の空気が凍りつくのが分かった。
寒かった訳では無い。
空間が止まったと言ったら良いだろうか?
それと同時に俺の身体も動かなくなった。
『やっと話が出来る。どうしてここに居るの? プディ王女』
そう雪が喋り出した言葉は日本語じゃなかった。
どちらかと言うと俺達猫の言葉に近い。
だけど、何処の言葉か分からないが俺にも話している意味が分かった。
ど、どういうことだ?
俺はリアクションを取りたかったが身体も表情も動かせない。
部屋の色もなんだか淡い色に変わり、幸太郎達の動きもすべて止まっている。
この空気には覚えがある。
プディと初対面の時のあの空間だ。
ただあの時と違うのは俺も止まってしまっているという事だ。
『朝峰 雪さん、いいえホロロさんね? ちょっと調べさせてもらったわ。あなたは私の事を父に報告するの? そうよね貴方は父に従っている調査員なんだものね?』
ど、どういうことだ?
話が全然見えない。
雪? ホロロ?
『ホロロさん、ご飯に何を入れたの? ホロの腹部が凹んだのは何故?』
『私もプディ王女に聞きたいことがある。
私はアナタの事を王に言ったりしません。
それより、どうしうて? どうして辰君を巻き込んだの?
ご飯にはパワーを抑える為の抑制剤を入れたの。
もちろん身体に害は無いわ。他には美味しくてバランスのとれたものを入れただけ。
辰君に私達の話を聞かれたら困るもの。
アナタが何をしたいのか目的も知りたかったからアナタと二人きりで話す必要があったの。
どうして辰君を私達の星の事情に巻き込んだの? 私はその事に一番腹が立っているの』
雪の言葉に再びプディが困ったように表情を歪ませた。
『どういう事? なんだか話が食い違っているわね? まず辰君って誰の事?』
俺の頭の中は混乱状態に陥っていた。
ゆ、雪?
どういう事だ?
説明して欲しいけど、先程も言ったが、今の俺は表情一つさえ動かせない。
後、雪? 俺に聞かれちゃ困ると言っているが......。
俺、全部聞いてしまっているんだが……。
そんな風に突っ込みたかったが俺の身体は動かなかった。
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