俺の手を見ろ！ 注※それは足です

第88話 この女性、朝峰 雪は何者なの？ （プディ視点）

　比奈ちゃんの目からの滴が私の背に落ちる。

　比奈ちゃんは本当に感情豊かよね。

　私が比奈ちゃんの家に飼われる事を決めたのも、たまたまと言えばそうだけど、彼女から何となく、感じとった力があったから。

　私はこちらに来たばかりの時、すぐにこちらの空気に慣れる事が出来ず、力を少しでも貯めれる様に子猫の様に身体を小さくしたのだけど......。

　子猫になった事で、パワーは貯められても、使える量も制限されている様で、寒空の下で生活するには私はひ弱すぎた。

　私は、自分の星では、自分が住んでいた城からほとんど外に出た事がなかった。

　私は世間知らずだった。

　そんな私は比奈ちゃんの側は心地良かった。

　感情豊かな彼女の側では、なんだか元気が出た。

　笑う事が少ない私も、彼女の笑顔を見ると、心が明るくなった。

　そんな彼女は泣く時も全力だ。

　彼女の目から溢れてくる涙がまた私の背に落ちる。

　比奈ちゃんをこんなに泣かせるなんて......。

　私は幸太郎さんに対して少し腹を立てていた。

　それにしても、この人。

　朝峰　雪と言ったかしら......。

　私は比奈ちゃんの胸の中から雪と言う名前の、何も考えていない様な色白な優しい顔の女性を見あげた。

　この人間から何故か私の星のモノ達と同じ匂いがするのよね。

　私の父はこの地球からパワーを吸い取り送らせる為、調査員を派遣していた。

　ホロからもその匂いがしたけど、調査員にしてはホロはまた違う匂いだったし、もし調査員の一員だったとしてもその記憶は無い様だった。

　この女性、雪さんからもこの匂いがするということは......。 　もしかして......。

　雪さんはその調査員？

　私の事、気づいているのかしら、バレたら父の元に戻されてしまうかしら？

　父のパワーは巨大すぎるの。

　今、連れ戻されたとしても父に対抗するにはまだ全然パワーが足りないはず。

　だけど......。

　私は比奈ちゃんの胸の中から少しだけ顔を上げて雪さんを観察した。

　そもそもなんで......。

　この人が私の星からの父が派遣した調査員だったとしたら、何故、この星の生物である人間の姿をしているの？

　私は小さな脳味噌をフル回転させながら、ペロリと自分の右前足に落ちた比奈ちゃんの滴(涙)をなめた。

　もうちょっと、探る必要があるかしら？

　私がそんな風に思っていたら雪さんと話をして元気が少し回復した比奈ちゃんが私を胸に抱いたまま立ち上がった。

　送ると言っていた雪さんをやんわりと断った比奈ちゃんは雪さんと連絡先を交換し笑顔で雪さんに挨拶した後、家に向かって歩き出した。

　そうして私は比奈ちゃんの家に久しぶりに帰ってきた。

　比奈ちゃんの家の中では、私は基本比奈ちゃんの部屋にいたけど、自由に家の中を歩かせて貰っていた。

　ホロ、ミーちゃんの事、大丈夫だったのかしら？

　まだもうちょっと側にいた方が良かったかもしれないけど、そろそろ、私と一緒にこの地に降りたモノ達と、連絡を取らないといけなかったし、丁度良い機会だったのかも。

　先程の話を聞く限りでは日曜日にまた幸太郎さんの家に行くみたいだし、ホロとはその時に話せるわよね？

　だけど、まだ得体がしれない雪さんも一緒なのよね？

　ホロとその話をしていたら雪さんに怪しまれてしまうかしら？

　それに......。

　雪さんとなんとか笑顔で別れた比奈ちゃん。

　まだ無理をしていたのか部屋に帰ってから、また落ち込んでる。

　私は比奈ちゃんの膝の上に乗り、自分の目元を擦っている比奈ちゃんの指を舐めた。

　悲しそうな表情をしてほしくなくて、笑ってほしくて。

　くすぐったいと言われるまで、比奈ちゃんの涙が止まるまで、比奈ちゃんの手や頬、あらゆる所を舐め回した。