第24話 Ⅴチューバー kuroonちゃん ?(ホロ視点)
<ホロ視点>
『辰君、コーヒー出来たよ?』
俺は、その、ちょっと消え入る様にかすれていて、でもゆっくり目で優しい聞き覚えのある声にびっくりして飛び起きた。
ゆ、雪?
俺は慌てて辺りを見渡した。
ソファーの上にはデンが欠伸をして眠そうにしている。その横には高志、珍しく高志の横に幸太郎も座っている。
いつもと変わらない風景。
まあ、いつも見ない余計な奴も目の前には居るが……。
余計な奴?
もちろん、高志の事だ。
幸太郎と高志は、二人でスマートフォンの一つの画面を眺めている様だった。
しかし、先程のは、何だったんだ?
雪の声が聞こえた気がしたんだが……。
「に~あ(どうしたの?)」
俺の隣に座っていたプディが、突然俺が飛び起きて辺りを見渡す様にそわそわしたため、珍しく驚いたように声をかけてきた。
「ニャ(ああ、なんでもない)」
軽く返事を返すが、俺の落ち着きは取り戻せない。
白昼夢か?
『ありがとね』
可愛らしい、のんびりとしたアニメ声が高志と幸太郎が覗き込んでいるスマートフォンから聞こえた。
「な? 可愛くね? 俺の最近の推しなんだよ」
そうやって、話をする高志と幸太郎に、何を見ているのか気になったプディも幸太郎の膝の上に移動した。
そうか……、声は全然違うが、話のトーンやスピード、周りを暢気な気分にさせる空気感が、一瞬、雪と錯覚したのか……。
未だに治まらない鼓動を落ち着かせ、大きく息を吸った俺は、気になる声のする音の方に足を動かした。
俺は幸太郎と高志とデンが座っているソファの背もたれの上部分に立ち、ソファーの前のテーブルに置いてある小さな画面を覗き込んだ。
画面には、コンピュータグラフィックスのキャラクターである、女の子が、先程はしゃべっている様だったが歌を歌い始めた。
澄んだ声に心が安定していくような……。
それでいて、メッセージ性のある歌詞に涙が思わず出てしまうほど胸が熱くなった。
俺は珍しく感動している様だ。
俺は画面の目の前まで移動し、更に画面をよく見ようとしたが……。
「ホロちゃん? そこに居たら邪魔だからこっちにおいで?」
そう言いながら膝にプディを乗せた幸太郎に、抱え上げられた。
俺はジタバタと足を上下にうごかしたが、プディの隣にせせこましく納まった。
「まあ、ホロちゃんも気に入ったみたいだし見てみるよ」
「おう、Vチューバ―のkuroon(くーろん)ちゃん て言うんだ。はまると思うぞ? 俺はファン仲間が欲しいし、幸太郎もはまってくれると嬉しいんだがな」
そんな風に話す、幸太郎と高志だったが俺は未だに画面から目が離せないでいた。
俺は今まであまり、好きなアーティストは居なかった。
辰也だった時も、好きな歌を聴くと言う感じで、推しなんて居なかった。
可愛く揺れ動き、ゆるいダンスを踊るkuroonちゃん。
思わず、小さく揺れている胸に視線を奪われる。
Kuroonちゃん……可愛い。
雪……、これぐらいは、浮気じゃないよな?
揺れるものに反応する、猫の習性だよな?
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