第10話 ライバル?
「ホロちゃん? 食欲ない? どうしたのかな?」
俺の顔を幸太郎が心配そうにのぞき込む。
本気で心配しているのか少し顔が青くなっているし、普段、俺とデン以外の前では不愛想な顔も、眉尻が下がっている。
俺は幸太郎と目線を軽く合わせた後、俺専用のご飯皿に目線を移す。
目の前には美味しそうなご飯。
ご飯と言っても米ではない。
柔らかめなキャットフードと最近は柔らかく茹でてある野菜も入っている。
人間だった時、和食が好きだった俺。
実はこの野菜が地味に嬉しかったりする。
ただ俺様は今、一人になりたいんだ。
そっとしておいてくれ。
プイっとご飯から顔を背けた俺は三歩ほど足を進めた。
「グ~(鳴ってしまった俺の腹)」
腹が減った訳ではない。
腸が循環しているんだ。
「グ~(またまた鳴ってしまった俺の腹)」
しかたね~食ってやる。
のっそりとスローペースに向かおうと思ったが本能には敵わず、足早に俺専用ご飯皿(程よい大きさの少し深みがある平皿)の元へ向かう。
匂いに誘われてゆっくりと食事が入っている皿へ顔を近づける。
良い匂いだ。
どんな時でもやはり食事は必要だ。
その時、凄い音がしたので隣を見ると、デンが無我夢中でドッグフードを食べていた。皿がひっくり返りそうな勢いだ。
先程も言ったように俺の皿からは柔らかそうな子猫用のキャットフードが程よく入っており、またまた良い香りが俺を誘う。
本能には逆らえねーな。
音が静かになったと隣を見るとすでに食べ終わったデンが俺の食事を狙っている。
危ない、危ない。
俺はデンに奪われない様、慌てて皿に顔を突っ込み、食事をする。
ん? 鼻の頭につきやがった。
鼻を皿にこすりつけて鼻の頭についた一粒程度のキャットフードを取ろうと試みる。
顔の横からすごい気配を感じる。俺の毛に何かが触れた。
この感触は覚えがある。
デンだ!
デンが俺の皿の真横まで移動しており、ギンギンの目でこちらを見ている。
凄い涎だ。
あまりのデンの涎の量に一瞬、俺の動きは止まった。
もしや我慢しているのだろうか?
「デンはもう食べただろう? これはホロちゃんのだよ」
幸太郎はデンの頭を撫でながら優しい目でこちらを見ていた。
俺は再び食べるのを再開したが、頭の中は数日前に見た雪の事でいっぱいだ。
雪と幸太郎はいつ知り合ったんだ?
幸太郎、なんかあの時、いつもの様子と違ったよな?
も、もしや幸太郎は雪の事が……?
俺と幸太郎は……ライバルか?
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