第41話 クルルの実家には美魔女がいる
「う~ん――よく寝た! 絶好の帝都行き日和だね!」
「ウンソウダネ。ゼッコウノビヨリダネ」
あのあと結局バレずになんとか宿屋を出ることができた。ちなみにクルルさんの胸は手の平に収まるサイズでした。みなもよりも少しだけ小さい。
宿屋から出る際に女将さんから「昨晩はお楽しみでしたか?」と聞かれたので、行為はしていない事を伝えると、がっかりしたような顔をしながら僕達を見送っていた。
本当だよ? 手は出したけど、行為はしていないから、お楽しみじゃないと思うけど? 大丈夫だよね?
「さて、今の時間だと丁度場所の時間に間に合うわね。どうする? 徒歩? それとも馬車?」
「早めに帝都に入りたいから馬車で行こうか」
「りょうか~い。切符買ってくるね」
その後は特にトラブルもなく馬車に乗り、昼過ぎには帝都が直接見える場所まで辿り着いた。
流石に昨日3回もテンプレ的な出来事が起きたんだ。今回は何事もなく着いて本当によかった。
「さて、まずはクルルの家に行くってことでいいんだよね?」
「うん。さすがにここに帰ってきたんだもん。ただいまの挨拶ぐらいしないとね。それに私ん家が今後の活動拠点にもなる予定なんだから」
そしてようやく帝都の中に入り馬車を降りた。
さすがに帝国の首都だけあって人々の往来が凄く、どこもかしこも人で賑わっているようだった。
「さて、今ここが城下町の入り口である商業街なんで、今から私の実家がある高級街に行くわよ。どうする? 城下町だけを廻れる馬車もあるけど?」
「いろいろと城下町内を教えてほしいから、徒歩で行こう。どれくらいの時間が掛かる?」
「う~ん――まっすぐに帰れば40分ぐらいかな? 喋りながらゆっくり行った場合は1時間半ぐらいじゃない?」
そして僕達はクルルの家に向けて歩き出した。
帝都の城下町は5つのブロックに分かれているらしい。まずは今いる商業街。武器屋や雑貨屋、食料屋等の店の他にも冒険者ギルドもここにある。
次に住宅街と高級街。住宅街には普通の市民が、高級街はヤンホーさんやアマゾーさんといった大商人や、クルルの両親のように貴族達が暮らしているらしい。
そして工場街。帝都の近くには鉱山と森が近くにあり、鉱石と木の加工を同じ地区で行っているらしい。
最後は中央に位置する城。王国でちょっと遠目に城は見ていたが、どうやら同じような形をしているようだ。そこで帝国の政を決めているらしい。
その城の傍には今回の目的地である世界樹がそびえ立っている。近くまでとうとうやってきたが、途轍もなくデカい。
あまりにもデカすぎて、城の高さをはるかに超えて天辺あたりは雲が差し掛かり、全容がつかめない状態となっていた。
そんな感じで教えてもらいながら歩いていたが、いよいよクルルの家に到着した。
まず最初に思った事はデカい。よくアニメとかで見る立派な洋館だ。庭も綺麗に手入れされており、無駄なところが一切ない。
クルルは勝手知った我が家の為、遠慮なく門を開き、玄関にて呼び鈴を鳴らした。
――ピ~ンポ~ン――
『はい? どちら様でしょうか?』
「ただいまー! 私、クルルだよ」
『クルルお嬢様!? 申し訳ございません。直ちにお向かいに上がります』
――ガチャ――
……え? ここって異世界だよね? 何でインターフォン? どうやら声だけみたいだけど、完全にインターフォンだよね?
僕がビックリしていると、クルルが説明してくれた。
「これね? この高級街の家では常備されている呼び鈴型の魔法具よ。どういう仕組みかは専門的な知識が必要だかわからないけど、極短距離だったら相手の声を届けれるんだって」
これはますます僕達以外の召喚者とか、または転生者がかつていた可能性があるね。
転生者だったらともかく、召喚者がかつていたとしたら、その人はどうなったんだろうか?
この世界に永住したのか。それとも元の世界に還れたのか。そっちの方面でも調べてみるか。
そんな感じで物思いに更けていると、玄関の扉が開いた。
「クルルお嬢様。おかえりなさませ」
「うん、ただいまー。久しぶりねシーラ。元気だった?」
「はい。皆様風邪も引いておらず、健康そのものですよ」
扉を開けたのはメイドさんでした。どうやらこの家に雇われているメイドさんらしい。
歳はクルルと結構離れていると思うが、恐らく20代後半から30代前半あたりだろう。
「シーラ、紹介するわね。彼はナガヨシ。今は一緒に行動しているパートナーよ」
「初めまして。長慶です。いつもクルルさんに助けられております」
「これはこれは、お嬢様のお客人でございますか。私はシーラ。長年このエクレール家に雇われておりますメイド長でございます」
エクレール家? そういえばクルルに家の名前を聞くの忘れてたな。お菓子みたいな名前だから憶えやすいね。
「して? お嬢様とはどのような関係なのでしょうか?」
その質問と同時に、シーラさんの眼光が鋭くなった気がする。
「僕は少々訳ありでして、クルルさんにいろいろと助けてもらっている状態なんです。内容については後程ご家族がいる際に言いたいのですけど、よろしいですか?」
そう素直に言うと、シーラさんの眼光の鋭さはなくなり、お仕事モードのような顔になった。
「残念です。クルル様の思い人かと思いましたが、違うのですね」
「ええ、申し訳あr――「ストーップ! シーラ! 今私はナガヨシを堕とそうと頑張ってるの! 応援しててね!」――クルル!? 今それ言う!?」
本当にクルルと言う女性は先が読めない。まさかこのタイミングでそんな事を言い出すとは……
案の定シーラさんはポカンとした表情を浮かべている。
「とりあえず上がるわ。シーラ、今家に誰がいるの?」
「今は奥様とマリアーナ様がおられますが、本日の夜は旦那様とクリストファー様がご帰宅される予定でございます」
「そう。手間が省けて助かるわ。後で全員に報告しないといけないしね。じゃあ私はいったん着替えてくるから、ナガヨシを客間まで案内してて」
「かしこまりました」
そう言ってクルルは僕を残し、階段を昇って行った。
後に残された僕はシーラさんの案内の元、客間に通された。
その間にも家の中を観察させてもらったが、典型的な貴族様の家というべきか、立派な絵画や壺、よくわからない置物などが置かれている。
しかもシーラさん以外にもメイドがいて、今は窓掃除や床の掃除をしており、まさにアニメや漫画で見た光景だと思った。
しばらく待っていると、扉が開き、一人の女性が現れた。
歳は20代後半ぐらいだろうか。ものすごく綺麗な人だった。
クルルと同じ青い髪であるが、髪を結っておらずウェーブが掛かっているように見える。
しかも服装は大胆で、下はロングスカートだけど、胸元が大きく開いているドレスを着ており、クルルと違ってかなりデカい。もしかしてお姉さんかな?
「あら? 貴方がクルルの連れてきた殿方?」
「はい、ナガヨシと申します。何時もクルルさんにはお世話になっております」
「あらそう? うふふ――あの子が誰かを世話してるなんて、大人になったわねぇ」
かなり優雅に微笑んでいるお姉さん。とても美しい人ではあるが、喋り方に凄く品を感じる。
それこそ何十年も備わっていると感じる品だ。果たして本当にクルルのお姉さんだろうか?もしかしたら、よくあるパターンでこの人はクルルの――
「ナガヨシー! おまたせー! ってお母様!?」
ああ、やっぱり。よくあるパターンでしたか……
いや、20代後半に見えている10代後半の子を持つ母親って、本当にいるんだね。
僕に人妻属性がなくて良かった。もしあったら、その色香に一発でアウトだったと断言できる。それぐらい美しい人だった。
「初めまして、ナガヨシさん。私はクルルの母のセイラよ。お義母さんって呼んでちょうだい」
そう言ってその美しい顔でウインクをくれた。なんて危ない攻撃なんだ……
クルルはというと、セイラさんの発言から顔を真っ赤にしていたが、「既成事実が作りやすくなったわ。さすがお母様」と言って、僕に向けてブイサインをしてきた。
「マリアちゃんはお仕事がもうすぐ終わるから、後でこっちに来るわ。じゃあ早速、ガストンとクリス君が来るまで、今までのお話を聞かせてね」
そう言ってセイラさんは美しい所作でティーカップを持ち、絵になる様子で中身を飲みだした。
「――ッアツ!? もう、シーラってば、私熱いお茶飲めないのよ? どうしてこんなに熱いのかしら?」
――セイラさんって、属性モリモリあり過ぎませんか?
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