第34話 俺は何がなんだかわからない
よくよく思い返すと、昨日の俺って、相当クサいセリフ吐いてたよな……。
翌日。午前の授業中。
昨日の出来事を思い返して、無性に恥ずかしくなっている俺がいた。
ま、まあ、言ってしまったものは仕方ない。と、とりあえず、今日の昼休み、あのグループのボスっぽい
……本当になんとかなるのか?
昨日とは打って変わって、めちゃくちゃ不安なんですけど! やっぱちゃんとした対策を考えておくべきだった!
◇◇◇
というわけで、結局何も思いつかないまま昼休み。
「
「うん、いいよ!」
姫川さんのおかげで、太陽がぼっち飯になることは避けられそうでなによりだ。
姫川さんが太陽と仲良くなりたい理由は謎のままだが、そんなことはどうでもいいことだ。
つーか姫川さん、いつの間にか太陽のこと下の名前で呼んでるし。たった1日で随分と仲良くなったもんだなぁ。
気を取り直して、俺は碧たち4人に近づいていく。
「あの、ちょっといいか?」
そして、話しかける。
「どうしたの?
卓を囲んでいた4人が、一斉に俺を見る。
「ちょっとそこの、碧さんに用があるんだけど」
どうでもいいけどさ、俺ってこの4人の名前知らないんだよね。
碧だけ唯一知ってるけど、フルネームは知らないし。後で調べておこう。
「あ、いいよ~」
彼女は快く承諾する。
「じゃ、ちょっと俺に着いてきて」
「了解ぃ~」
太陽の名誉のためにも、俺は
人気のない場所っていったら、あそこしかないよな?
俺は真っ先に思い浮かんだあの場所へと向かうことにした。
そして俺は、内緒話をする時の定番の場所になりつつある特別棟へとやってくる。
「それで、話っていうのは?」
碧がさっそく問いかけてくる。
「心当たりはないのか?」
「ん~、ないかなぁ」
すっとぼけやがて……。
「最近、俺の彼女と喧嘩でもしたのか?」
俺はすぐに本題を切り出すのではなく、探るように問いかける。
「え〜? してないよぉ?」
猫をかぶっているようなその声に、俺はイライラする。
「じゃあ聞くが、昨日も今日も、あまり愛美と話してないよな? それはどうしてだ?」
つい先週までは、昼休み以外の時間は太陽と仲良くしていたのに、昨日と今日はそれがなかった。俺はそれについて碧に言及する。
「ん〜、確かに今日はあんまり話してないかも? でも、たまたまだよ〜。ほら、せっかくの彼氏さんとのイチャイチャを邪魔するわけにもいかないし」
「……それは、愛美から頼まれたのか?」
「別に……頼まれてはないけどさ。でも、普通に考えて、彼氏とイチャイチャしてる時に友達に邪魔されたくないでしょ?」
もしも碧が本気でそう思っているなら、その認識は間違っている。
お前は知っているのか? 太陽が昨日、どれほど悲しげな顔をしていたのかを。
「多分愛美は、そんなふうには思ってないと思うぞ?」
「……そう? 影谷君だって、愛美とイチャイチャしてる時にうちらに邪魔されたら嫌でしょ?」
それは……どうなんだろうか?
俺は実際には太陽と付き合っているわけじゃないので、そこらへんの感情はよくわからない。
もしも俺が、恋人とイチャイチャしていたとして、それを邪魔されたら、やっぱり嫌なんだろうか?
……って、今はそんなことはどうでもいい!
このままじゃ
「あのな、要するに! 俺が何を言いたいかというと、最近愛美のことをハブいてないかって
話の流れとしてはかなり唐突だが、仕方ない。
「……へぇ? やっぱり、わかっちゃう?」
俺が本題を切り出した瞬間、彼女は悪い笑みを浮かべた。
……本性を現したな。
「そうだよ。実はね、愛美のことハブいてるんだよね、うちら」
ドクンと俺の心臓が跳ねる。
なぜ……だ? 彼女の悪い笑みを見た瞬間、俺の足の震えが止まらない。
俺は今、彼女を恐れているのか?
どう……して?
「やっぱり愛美の彼氏である影谷君としては、うちらに憤りを感じてるわけ?」
俺が彼女を恐れていることを悟られてはいけない。俺はそう考え、彼女を睨み、威嚇する。
「そんな怖い顔しないでよ? 全部君が悪いんだよ?」
『おいおい、そんなに怖い顔するなよ? 全部、お前が悪いんだぜ?』
その瞬間、気づいた。
俺が、必要以上に碧のことを恐れている理由を。
彼女のあの悪い顔が、あいつに似ているんだ。
──
俺を裏切った、最低で最悪なあいつに、彼女は似ているんだ。
だから俺は、恐れているんだ。
……上等じゃねえか。
つまり、今のこの状況は、あの忌まわしき過去を乗り越えるためにはうってつけの状況ってわけだ。
決めた。
俺は太陽愛美を救い、そして、自分の過去も乗り越える。
「全部俺が悪い? 何を言ってるんだ、お前は。愛美をハブいて、愛美に辛い思いをさせたのはお前たちだろ!」
「……違うね。知らないの? うちらがどうして、愛美をハブいているか」
「ああ、知ってるよ」
俺は碧の目を見据え、はっきりと告げる。
「愛美に彼氏ができて、嫉妬してるんだろ?」
碧は眉をひそめて、不快そうな顔をする。
「なによ、それ。それじゃあまるで、私たちが悪者みたい……」
「どう考えても悪者だろうが! 友達に恋人ができたのに、それを素直に祝福してやらないで妬むなんて! 悪者以外の何者でもない!」
「……………………」
俺は碧の胸ぐらを掴み、
「わかったら早く、愛美に謝れよ。ハブいてごめんって、謝れよ!」
そう言って、俺が彼女を睨みつけていると、
「…………ふふっ。……合格、かな?」
彼女は唐突に、俺にそう笑いかけたのだ。
「……は?」
俺が困惑していると、
「愛美ぃー! もう出てきていいよー!」
碧が廊下の曲がり角に向かって、そう呼びかける。
すると、曲がり角の方からひょいと、太陽が姿をあらわにした。
「……ん? ……え?」
俺はいまだに状況がつかめない。
なんだなんだ? いつの間に太陽はこの場にいたんだ? 姫川さんと昼飯中じゃなかったっけ?
「ごめんね!
それが太陽の、第一声だった。
「……は? 一体これって、どういう状況?」
俺は碧と太陽を交互に見て、説明を求める。
「……まあ、その、なんて言うか……ドッキリ? みたいな?」
碧が少し気まずそうに、そう言った。
「……へ?」
それを聞いた俺は、情けない声をもらす。
「まあ、とにかく聞いてよ、隼太君。今から全部話すから」
太陽はそう言って、今の状況について語り始めた。
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