第2話 旅人と再来

 あの変な旅人がやってきてから一週間程経った。


 相変わらず、俺が門番をしている街には対して人が入ってこない。よって、俺の仕事もほとんどない。


 かといって暇が嫌いではない。俺はぼんやりするのが好きだし、暇で悪いこともない。


 だから、俺はむしろ、そんな暇な時間を満喫していたのだが……


「おーい!」


 と、視界の向こうから、人影がこちらに向かって迫ってくる。聞き覚えのある声……俺は思わず目を凝らして遠くを見る。


「……嘘だろ」


「やぁ、門番君! 久しぶりだね!」


 まさしくやってきたソイツは、あの変な女旅人だった。


「……まさか、また来るとは……」


「フフッ。言っただろう? また来ると」


 確かにコイツが去っていくそんなことを言っていた気がするが……正直、適当な事を言っているだけだと思っていた。


 それなのに、まさか本当にまたやってくるとは……


「……いいか? 前に言ったとおり、通行証がないと街の中には入れないぞ?」


「だから、言ったじゃないか。通行証より価値のあるものを持ってくると」


 旅人は得意げな顔でそう言っている。といっても、仮にどんなに高価な宝石であっても、通行証でなければ絶対に通すことは出来ないのだが。


「……なぁ、お前話聞いてたか? 通行証がないと通さないって――」


「君は、ここからずっと西に行ったことはあるか?」


「……は? 西?」


 いきなり話し始めた旅人に面食らってしまった。旅人は構わずにそのまま話を続ける。


「僕は西に旅してきたんだ。そこで何があったと思う?」


「……さぁ? 知らないな」


「……金だ」


「金?」


「静かに! 声が大きいよ!」


 なぜか怒られてしまった。納得いかなかったが、俺は謝罪する。


「……金って、あの金か?」


「他にどんな金があるっていうんだい? 間違いなく、あの金だよ」


「つまり、金脈があったっていうことか? それは本当なら確かにすごいことだが……」


「金脈? なんだそれは?」


 旅人は不思議そうな顔をする。そんな顔をされて不思議なのはむしろ俺の方なのだが。


「いや……だって、金があるってことは、金脈や金山があるってことだろ? いや、でも、西の方にそんなものがあるなんて聞いたことはなかったけどな……」


「金山? 金脈? 違う違う! そんなものじゃない! もっと価値のあるものだ!」


「は? いや、だって、お前金だって――」


「僕が見つけたのは……金の池のことだよ!」


 目を輝かせてそう言う旅人。やはり……コイツはちょっと変わった奴のようだった。

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