第36話
自転車で掛井先輩の後ろを付いていくと、彼女は10階建てマンションの敷地内に入って行った……ここが自宅なのか……。
駐輪場に自転車を止めて2人で向かった入口はオートロック、この規模のマンションなら当然だろうな。
「ここの最上階になりますわ。 家には誰も居ませんからどうぞお気遣いなさらずにいらしてください」
誰も居ないのか……なんか緊張してくるな、早いところ手を洗わせてもらって帰ったほうが良さそうだ……。
しかし、乗り込んだエレバーターが中々10階に付かない……これが止まったりしたら大変だろうなぁ……。
なんて、そんなフラグを回収するはずもなく2人で最上階の10階へと着く。
エレベーターから降りた俺と掛井先輩はそのまま廊下を歩き10階の角部屋の前にたどり着いた……どうやらここが掛井先輩の家らしい、表札は出ていないようだけど。
「どうぞ、お入りになってください」
ドアを開けた掛井先輩に促されて玄関に入る……結構広いな……。
「廊下の左側にあるドアを開けるとそこが洗面所とお風呂になっていますので、そちらでお手を洗っていただけますか」
後から入ってきた掛井先輩が教えてくれる……こっちか、やはり初めて入る人の家はどこか落ち着かない……なっ!?
ドアを開けて中に入ると、脱衣所も兼ねているスペースで洗濯機や棚が置いてある。
置いてあるのは良いんだが……部屋干しをしていたのか、ブラやショーツなどがそのまま干してあった。
ピンクや水色のそれらは意外と大きいようで……美央と同じかそれ以上……先輩着痩せするタイプなんだな……まだ明莉の方が大きそうだが、ってなに比べているんだ俺はっ!?
そちらを極力見ないようにして洗面台の前に立つ。洗面台なんだから当然鏡が付いてるんだが……視界の隅にちらちらと映りこむんだよな……。
まぁ掛井先輩は気にしていないようだし意識しないようにしておこうか、石鹸を借りて手を洗い出すが、やはり中々落ちない……お湯にした方が良いかな?
悪戦苦闘しながらもなんとか洗い終えたので廊下に戻る……さて俺の用事は済んだし、声かけて帰ろうかな。
「掛井先輩ありがとうございました、何とか落ちたので俺はこれで失礼しますよ」
奥の部屋にいるであろう先輩に声をかけるが……返事が無いな? 聞こえなかったのかも、廊下の奥へと足を進めた。
そこは広めのLDKになっていた、20畳くらいだろうか……先輩の姿は……ないな?
もしかして自分の部屋に戻っているとか? とはいえ勝手に部屋のドアを開けるのも失礼だし……。
「掛井先輩? 手も洗ったし帰ろうと思うんですがー」
少し大きめに声をかけるとガチャッと奥のドアが開いて……下着姿の掛井先輩が出てきた……はぁ!? え? なんでその姿で出てくるの!?
「相馬さん、ゆっくりはしていっていただけないのですか?」
パタパタッと俺の元まで駆け寄ってくる掛井先輩……その前に服を! 服を着てきてください!
「か、掛井先輩!? わ、わかりました、もう少しゆっくりしていくので……服を……」
その場でぐるりと回れ右をした俺は、何とか掛井先輩に服を着てきてもらおうと声をかける……このまま帰るなんて言ったら先輩が何するかわからないからな……。
「良かったですわ……あ、あらわたくしったらなんて格好で……お見苦しいものをお見せしてしまいましたわ、ごめんなさい。すぐに着替えてきますので、お帰りになられては……嫌ですわよ……?」
駆け寄ってきた時よりも幾分早い足取りで掛井先輩は部屋へと戻っていったようだ、俺に見られて恥ずかしいとかは無いんだろうか?
それにしても……今日はワンピースに合わせた青色の下着だったな、実際に見ると出るとこは出て凄くスタイルが良いんだな、掛井先輩……。
あー、なんか驚いてドキドキしたな……待ってる間に落ち着かなきゃ……。
何とか落ち着きを取り戻した頃、タイミングよくドアを開けて掛井先輩が出てきた……着替えたのだろう、ニットのオフショルダーにチェックのスカートという服装になっていた。
「お待たせをいたしました、掛けていてくださっても良かったのですが……いえ、わたくしがきちんとお伝えしなかったのがいけなかったのですわね」
「あぁ、大丈夫ですよ。着替えているとは思わなくて……すみませんでした」
「相馬さんはなにも悪くありませんわ。わたくしが勝手にしたことですから。それより、どうぞお掛けになって。すぐ飲み物をご用意いたしますわ」
そう言いキッチンへと向かう掛井先輩……リビングスペースに置いてあるソファにかけて待っていようか……これ、座り心地良いなぁ、凄く高そうだぞ。
ソファの手触りに夢中になっていると、いつの間にか掛井先輩が戻って来ていたようだ。
「そのソファはお気に召しましたか? 相馬さんはコーヒーでよろしかったかしら……わたくしったら何も聞かずにご用意してしまって。浮かれてしまっているのかしら、いやですわ」
少し頬が染まっているようにも思える掛井先輩はそう言いながら俺の前にコーヒーを置いてくれる、お茶請けとしてチョコを一緒に用意してくれたようだ。
「コーヒーで大丈夫ですよ、ありがとうございます」
「そう、良かったですわ。隣、失礼しますわね」
掛井先輩はそのまま俺の隣に腰掛ける。3人は座れそうなソファなので当然少し離れた位置に、だ。
「どうぞ召し上がれ。チョコもお口に合うと良いのですけれど」
「それじゃあ、遠慮なく」
なんだか予想外の展開も多く少し疲れてしまっていた俺は貰ったコーヒーに口を付けた……美味しいな、いつもインスタントしか飲んでいないからそう感じるのだろうか? チョコもほんのりビターな感じが好みだ。
「美味しいですよ、ありがとうございます」
「お口に合ったようで何よりですわ、私もいただきますわね」
微笑みながらチョコを口に運ぶ掛井先輩、心なしか機嫌が良さそうに見えるのはチョコが好きだからなんだろうか。
「ふふっ、今日はありがとうございました。相馬さんにはいつも助けていただいてばかりですし、わたくしにも何かお返しが出来ればよろしいのですけれど」
「気にしなくて良いですよ、俺は出来ることをしただけですしね」
「出来ることをただするだけ、それがどれほど難しい事なのか、相馬さんは御存じではないのですわ」
「そうですかね? まぁそこまで大げさに捉えなくても良いってことですよ、知らない仲でもないわけですし」
「ふふっ、そういうところも相馬さんの素敵なところですわね」
そんな話をしていると、徐々に掛井先輩が寄ってきているのに気が付いた……既に手を伸ばせば届いてしまいそうな距離だ。
本人は気が付いていないのかもしれない、少しづつ動いたせいかスカートが捲れ上がり、白い太ももが半分ほども見えてしまっている……何か……変だな? 掛井先輩ってこんな事をする印象じゃなかったんだが。
「ふぅ……相馬さん、わたくしなんだか……暑くなってきましたわ」
くいっとニットの胸元を引っ張り、手で扇ぎ始める掛井先輩……そのせいで胸の谷間がより
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