第9話~専門学生(就活)

 2年生。N倉くんと別れて目の前にあったのは就職活動だった。私はそれに手をつけた。若い証拠。何かをしていないとどうにかしてしまうとでも、潜在意識が動いたのだろうか。


 就職面接のため、学校では毎日「笑顔、笑顔、笑顔…」と先生は言った。呪文にしか聞こえなかった。でも私は笑った。笑いたくなんかないのに。私は頑張った。頑張りたくなんかないのに。


 N倉くんに夢中だった1年生。勉強なんてしてこなかった。だから就活時には何の資格も持っていないし、ボランティアなどの目立った活動もしていない。武器が何もないまま就活をしていた。


 それでも頑張った。エントリーシートは辞書を片手に、自分の思い付いた言葉の意味を一語一語辞書で調べ分析し、それをまとめて書き上げた。髪型も変えた。先生に『あなたはその髪型は老けて見える』と駄目出しされたからだ。背の低い女子はヒールが7センチ以上のパンプスを履きなさいと教わる。私は背が低い。7センチのヒールは足が痛かった。アイシャドウ、チーク、口紅も先生に言われた通りの色に変えた。立ち居振る舞いは家でも練習し、敬語は目と頭と口で覚えた。




 頭も要領も悪くなったのはこの頃からか。




 就活は人生の中で一番頑張ったと、今でも胸を張って言える。でもうまくはいかなかった。当然だ。面接を、受けては落ち、活動を止め、その繰り返しだった。

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