24.カイトへの報告

 冒険者ギルドで、ビックウルフの買い取りを終わらせたハルトとハシュードの2人は、宿へと戻ってきた。


 辺りは既に、夕やみに包まれ始めていた。


 宿屋のドアを開けると、食堂で飲み物を飲んでいたであろうカイトが、勢いよく立ち上がっていた。


 「兄さん兄さん! ハルトも! 酷いじゃないかー。 一緒に起こしてくれよー!! 俺も、ハルトの初めての成果の場面を見たかったのにー!!」


 「ごめんね、カイト。 でも、あまりにも気持ち良さそうに爆睡していたもんだから、何だか起こすの悪いかなって。」


 「ううん・・・。」



 しばらくごねていたカイトだったが、観念したようだ。


 落ち着いたのか、椅子に座りなおした。


 そして現在、カイト、ハシュードさん、僕、そして何故か、マコトさんも机を囲んで話している。


 「それでーさ、どうだったの? 初めての成果は?」


 「凄く良い成果があったよ!! 買い取り自体は、頭部と毛皮、それと小さな魔石を買い取ってくれて、全部で45,000ヨークだったけど、これだけじゃないんだよ!」


 「45,000、凄いじゃん! でもそれだけじゃないって??」


 「ちょうどビックウルフが討伐対象のモンスターになっていたみたいで、討伐報酬の10,000ヨークも併せて、55,000ヨークになったんだよ!!」


 「おお! 良かったじゃん!!」


 「それだけじゃないんだぜ、カイト。 な、ハルトくん。」


 「はい! 討伐クエストをクリアした事でほら!! 見てこれ!!」


 そう言って、僕はカイトに冒険者カードを見せる。


 「おお!! ハルト! ランクが2になってる! 凄いよハルト!」


 「ハルトさん凄い! 初日からランクアップなんて!!」


 そんなこんなでしばらく話していたら、徐々にお腹が空いてきた。


 というか、カイトはもう、空腹で死ぬんじゃないか!?


 僕とハシュードさんは、焼串を2本ずつ食べたけど、カイトは何も食べていないのだ。



 「おっと、すいません。 話に夢中になって夕食を作っていなかったですね。 今作ってきますので、少々お待ちください!」


 「は、早めで頼むよ~・・・。」


 カイトが弱々しく言う。


 「分かりましたー! あ、カイトさん、お腹空いてたら、これお先にどうぞ。」


 そう言ってマコトさんは、カイトにバスケットに入ったクッキーを渡した。


 カイトは、受け取るや否や、クッキーを次から次に口に運び、段々と生気を取り戻していく。


 「はあー、うっまいー!! 生き返るー!!」


 厨房の方では、マコトさんの笑い声が聞こえる。


 さあ、今晩の料理は一体、どんなものが出て来るのか楽しみだ!



 料理が出来るまでの間、僕たちは再び話し始める。


 「そういえば、僕が冒険者登録している間、2人はどうでした?」


 「ああ。 明日広場で、店を出そうと思ってね。 その事を村の人たちに宣伝してきたんだよ。」


 「おお! お店ですか!!」


 「そうだよ。 で、誰も来てくれないと寂しいから、宣伝してきたのさ。」


 「たくさん来てくれるといいですねー!!」


 「そうだね。 明日が楽しみだよ!」


 「ムシャムシャムシャ・・・。」


 カイト、全部食べる気かな?


 僕もあとで、ちょっと食べたいんだけどな・・・。


 「でもこの村、あんまり貨幣が浸透していないんじゃ?? 来てくれても買ってくれますかね?」


 「その点は問題ないよ。 そういう場合は、物々交換でも対応可能にするからね。 ここでしか手に入らないようなものじゃなくても、あって困る事はないし、それを別の街で売れば儲けれるからね。」


 「それなら大丈夫ですね! 楽しみだなー!!」


 状況に応じて、対応していくようだ。


 でも、商品の価値とか村人が持ってきそうな物の価値を事前に把握しておかないと、少なく交換しちゃうと逆に損してしまう。


 結構商人って、頭を使いそうで大変そうだなー。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る