23.アイテムボックス持ちの商人

 ハシュードさんがまさかの、アイテムボックス持ちだった。


 いきなり披露されて、目の前で肉の山が消えるもんだから、何が何だか分からなくなってしまった。


 あり得ないような事が、目の前で繰り広げられたのだから、まあ無理もないだろう。



 そんなこんなで驚きながらも、何とか落ち着くことができるようになった。


 ここで、カウンターの箱にも肉があった事を思い出す。


 こちらは、肉の状態やなんかを確認するためのものなのだが、生々しい解体現場と、科学的説明が不可能なアイテムボックスを見せられ、すっかり頭から抜けてしまっていた。



 解体された肉の山を、アイテムボックスで颯爽と一瞬で回収してしまったので、あの箱を回収させてもらって、宿へ戻る事にする。



 宿への道中。


 「あの、ハシュードさん。 アイテムボックスって信じられないぐらい凄すぎます! 魔法みたい! 凄く凄く便利じゃないですか!」


 「何を当たり前な事言ってるんだい? これもれっきとした魔法の1つだよ。」


 「そうなんですか!? え、そしたら、頑張れば僕もいつか??」


 「そうだね、もし才能と根性があれば、いつかきっと手に入れられるさ!」


 「やったー!!」


 どうやら、アイテムボックスはよくある固有スキルやなんかじゃないようなので、頑張り次第ではゲットできる可能性も、無くはないようだ!


 「でも、アイテムボックスって、めったやたらに使える人がいる訳じゃあないんだよ。 さっきギルドで秘匿にしてくれるよう頼んだろ? 結構レアらしいんだよ。」


 「そうなんですか?? じゃあ、僕は・・・。」


 「そんなに落ち込まないでくれよ。 俺は使えるから気にした事無かったけれど、努力次第じゃまだ分からないから! まあ、使えるは使えるで、便利な反面、色々と大変だったりもするけど。」


 「え? そうなんですか??」


 「そうだよ。 俺、商人だからさ。 アイテムボックスがあれば、正直言って馬車の荷台なんていらないじゃん。」


 「その通りですよね!」


 「でもそうすると、あいつは能力に頼って何でもかんでも好き勝手やって、みたいな、色んな妬みを他の商人たちから買っちゃうんだよね。」


 「そんなこという奴、いるんですか・・・。 でもそんなのほおっておけば・・・。」


 「そうだね、でも、そうもいかないんだよ。 好き勝手言わせておけば良いかもしれないけれど、商人の世界では信頼も大事なんだ。 ある事無い事、悪い噂が立ってしまうと、ここの商会は信頼できない、だから別のところで買おうってなっちゃうことがあってね。 そうすると一巻の終わりになりかねないからね。」


 「商人の世界って、色々と大変なんですね・・・。」


 「そう、そういう事さ。 まあ、そうは言っても、こうやって便利なものは、余すところなく使わせてもらうけどね! 妬まれない程度にね、ハハハ。」



 ハシュードさんは常に明るいから、悩み何て何も無いかと思ったけれど、誰しもやっぱり、少しは悩みを抱えているものなんだね。


 でも、それにしても、便利過ぎてズルいって妬まれるか・・・。


 そう思っているうちは、その人たちにはアイテムボックスが使えるようにはなりそうにないよね。


 僕は、いつの日にか使えるようになれるように、ハシュードさんを観察してコツか何かがないか見てみたり、使えるようになれ~使えるようになれ~!って祈ってみたりして、気長に頑張ろう!


 そんなこんなで、話しながら歩いていたら、宿に到着したのだった。


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