18.コルト村の宿屋

 無事に冒険者登録を終え、冒険者ギルドを後にした一行は、宿に向かうことにした。


 せっかく村にやってきたのだ、わざわざキャンプをする必要もないのだ。


 ただ、この村に宿は1軒しか無いという。


 予約も何も無いので、行ってみて満室だったらどうしようもない。


 ただ、せっかくならばフカフカのベッドで寝たいものである。



 そんなことを話しながら歩いていると、この村に来て初めて商店を発見した。


 軽食を売る屋台に、飲食店、八百屋に肉屋、武器や防具を売っている鍛冶屋もある。


 規模は限りなく小さいが、これでも立派な商店街だ!



 屋台や飲食店、鍛冶屋からは、煙突から湯気が出ており、幻想的だ。


 八百屋や肉屋からは威勢の良い声も飛んでいる。


 道も今までの土の道ではなく、石畳状の道に変わっていた。



 何度も言うが、規模は限りなく小さい。


 でも、異世界の冒険で憧れる、まさにこの、異世界の街という世界観の中に自分がいるのだ!


 これほどワクワクするような事があるのだろうか、というぐらいに、ワクワクが止まらない!



 この光景が見れただけでも、異世界に来て良かったと思えるのだ。


 確かに、そう遠くない将来、MMORPG系のゲームがVRゲーム化されれば、同じような光景は拝む事ができるのかもしれない。


 しかしそちらは、この空気や食欲をそそる匂いがあるわけでもなければ、実際に触れれる訳でもないのだ。


 それに、そちらに現れる人々は、あくまでプログラムで作られた者達なのだ。


 いくらか技術が進化したとしても、実際の人々とは違うだろう。


 だから、実際にこの世界に来なければ、こういった真の体験はできないのだ。



 余談を挟んでしまったが、この魅力的な商店たちを回るのはまた後だ。


 今の目的は、宿屋に行く、そして宿の空きを確認し泊まらせてもらう事だ。


 なので今は、後ろ髪を引かれながらも商店街を後にする。


 向かうは、この村唯一の宿屋だ。



 これだけ盛大に振った割には、宿屋は商店街を抜けて直ぐの一角にあった。


 もう、見るからに宿屋というような、中世ヨーロッパ風の2階建ての建物だ。


 これが宿屋でなければ、領主様か何かの屋敷以外この村では考えられないであろう建物だ。



 早速馬車を宿屋の脇で止め、一行は宿屋の扉に手を掛ける。


 そうして中に入ると、声が掛かる。


 「いらっしゃいませ~。」


 その言葉が発せられた方へ進んで行く僕たち。


 そうして早速、僕らの今晩の運命を賭けたあの質問をする。


 「すいません! 今晩お部屋の空きはありますか!?」



 宿屋の店主と思われる青年は、僕たちのあまりの気迫に一歩後ずさりしてしまう。


 しかし、僕たちが客と分かると態度を改めて運命の答えを僕たちに告げたのだった・・・。



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