10.ポーション
まさに危険地帯と言われている所で、僕たちは盗賊に襲われた。
何とか盗賊は倒したんだけれども・・・、その戦闘で僕は、ケガを負ってしまった。
盗賊が投げた投げナイフが、僕の横腹に深く刺さったのだ。
戦闘が終わったことに安心していた僕は、ふとその事を思い出し、激しい激痛に襲われていた。
「大丈夫かハルト??」
「大丈夫・・・じゃないくらい痛いかも・・・。」
カイトが心配してくれたが、どこからどう見ても大丈夫とは言えない。
出血もあるが、それは良い。
けれど、この息をするたびに襲う激痛どころじゃない強烈な痛み、こいつが半端ないのだ。
そこに、ハシュードさんがやってきた。
「大丈夫かいハルトく・・・って、こりゃ大丈夫じゃないな。 ちょっと待ってて。」
そう言って、ハシュードさんが馬車に戻っていく。
しばらくして・・・。
「はいこれ、ポーションだ。 高いけれどお金は良いよ仲間だし、守ってくれたし。 カイトにその刺さっているナイフを抜いて貰うから、半分傷口に垂らして、半分は呑むんだ。 分かったね?」
僕はうなずく。
声を出すのも出来ないくらい痛いのだ。
「いくぞ、ハルト!! 我慢しろよ。 3・・・2・・・1・・・。」
ナイフが抜けていく感触がある、というよりも痛すぎる・・・。
僕は、ハシュードさんに言われたとおり、瓶の中の薄緑色の液体を半分傷口にかけた。
「うぅ・・・沁みる・・・。」
傷口に滅茶苦茶沁みて痛いのだ。
そして、瓶の中の残り半分を呑み切る。
これが、結構苦くて渋いのだ。
センブリ茶か何かかこれは!?ってほど苦い。
「ホントに一気に呑みほしたなぁ。 相当苦いはずだけど・・・大丈夫かい?」
ハシュードさんが心配そうに尋ねてくる。
そんな顔するくらいなら、最初から言っておいて欲しかったよ。
「ゲホッゲホッ、うぅ、苦いですよ、それも相当に!」
「ハハハ、そりゃ苦いだろう。 兄さんも酷いやつだよ、先に言ってやればいいのに。 ハルト、それなぁ、ほんとはちょっとずつ呑んでも効果は変わらないんだぜ。 ハハハハ。」
ゲホゲホしてたら大笑いしやがった、仲間が大ケガ負っているっていうのに能天気だ。
でも、実際このポーション、元の世界の化学では説明が付かないような効果があるようだ。
傷口に染み渡っていくのにつれ、尋常じゃない痛みだったものがスッっと抜けていくのだ。
それに、もう出血も止まっている。
何だよこれ!
一気に僕の常識が塗り替えられていく。
ハシュードさんの話によると、このポーションは傷を"完治"させる用のもので、一度使うと後は自然に元通りに完治してしまうのだという。
ただ、傷の程度により量や完治までの時間には差がある様で、早く治したいときには通常の量よりも多く使うと良いんだそうだ。
ただ、あまり多く使い過ぎても、直ぐに治らないようなものは治らないようなので、程度によりけりだそうだ。
今回の僕の傷は、通常ならば2日もすれば治るようなのだが、外からも中からも使ったのと、明らかに傷の程度以上の量を使ったので、明日には治るだろうとの事。
「え!? これが今ので明日にも治るってマジですか!? えぇーーー!?」
「そうさ。まぁ、明日になったら本当かどうか分かるさ。」
まぁ、明日確認してみる事にしよう。
冗談を言っているようにも思えないし。
そんなやり取りを一通り終えた僕は、ハシュードさんに気になっていたことを聞いてみる。
「あ、そういえばこのポーション、高いって言っていたじゃないですか。 実際どのぐらいのお値段なんですか?」
「それ聞いちゃう? まあいいけれど、聞いて驚くなよ! その一瓶で10万ヨークだぞ!」
「じゅ、10万!? え!? そ、そんな高いものを・・・、すいません。」
思いもしない値段に驚愕だ。
確かに、効果対費用で考えればそのぐらいするだろう。
でも、こんなに高いとは思ってもみなかったのだ。
これはこの世界では、下手にケガを出来ないなぁ・・・、そう感じた瞬間だった。
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