9.盗賊との戦い

 異世界生活3日目、僕たち一行は最寄りの村に向かい出発した。

 途中、危険地帯に差し掛かった所で昼食を取り、片付けをして出発の準備をしていたのだが・・・。


 突如そこに、2人組の盗賊が現れ、戦闘が勃発した。



 「ハルト! すまんがそっちは頼んだぞ!」


 「頼まれなくても戦ってるところだよ。 カイトもそっち頼むよ!」


 正直、そんな呑気に話している様な心の余裕は無いのだが、少しは落ち着いた。


 僕と対峙している盗賊の斬撃を、ビックウルフの牙で作った剣で受け流すぐらいは、なんとなくでも出来てしまった。



 ただ、ここで最大の課題である。

 どう反撃すればいいんだろう??


 今は防御して剣を受け流すので問題ないが、反撃するとなれば、剣を少しは振りかぶる必要がある。


 そうすると自然に、一瞬でも隙が生じてしまう。

 その隙を突かれたら僕は、一貫の終わりだ。


 それに・・・反撃できたとしても、僕は人を斬る事が、殺める事が出来るのだろうか?

 でも、やらなければいずれ、僕は殺されてしまう。


 迷いを捨てろ!!

 そんな事ではこの世界は生きてはいけないんだから!!


 そんな事は分かっていても、恐怖と迷いで、身体が反撃に繰り出そうとする心とは裏腹に、動かないんだ・・・。



 そうこうしていて、ふとカイトの方を見ると、明らかにカイトが劣勢だ。

 対格差があり過ぎるのだ。

 

 僕が助けてあげないと、カイトたちまで殺されてしまう。


 そんな状況を見た僕は、ふと、自分が何を迷っていたのか分からなくなる。


 そうすると、今まで身体に入らなかった力が入った気がする。

  


 僕は勇気を振り絞り、反撃に出る!


 斬撃を受け流した時に出来た一瞬の隙。

 すかさず僕は、剣を盗賊の喉元目がけて突く。


 一瞬の出来事だ、その一撃で盗賊の1人は息絶えたようだ。

 ピクリとも動かなくなった。



 そうすると、どこからともなく怒号が響く。


 「よくも・・・よくも弟をー!! 許さん、お前だけは俺が殺す!!」


 怒号の響いた方を向くと、もう1人の盗賊が怒りに満ちた表情で睨みながら僕を見ていた。


 そして、僕が振り向いたその瞬間、カイトを蹴飛ばしこちらに猛突進してきた。



 僕は再び剣を構える。

 

 勝てる気はしないけれど、生きるためにはそうするしかないから!



 怒りの感情に任せて、一直線に突進してくる盗賊は、まるでイノシシのようだ。


 「死ねぇー!!」


 盗賊が持っていた剣を振り上げる。

 それも盛大に振り上げている。


 今しかない、この隙を逃したら確実に殺される。

 

 そう悟った僕は、剣を右手で持ち、腰を落として小走りで盗賊の懐へ入る。


 そして、剣に左手も添え、身体を左回りにねじりながら回転の力を付け、身体の右後ろ辺りから剣を、盗賊の身体目がけて水平に斬り付ける。



 盗賊は腹部を斬られ、立っているのがやっとの様だが、それでもその場に立ってこちらを睨んでいる。


 そして出来た一瞬の隙、盗賊がナイフをこちらに投げてきた。


 避けることは出来ない、ナイフがグサリと僕の横腹に刺さる。


 「うぅ・・・。」


 横腹がドクドク言っている、痛いなんてもんじゃない・・・。

 

 僕は片膝を地面についてしまった。


 痛すぎて力が入らないのだ。



 「し、しまった!!」


 そうつぶやいた時には、時すでに遅しかと思われた。

 顔を上げると、盗賊が痛そうな顔をしながらも、僕の目の前で剣を振りかぶっている。


 こうなってはどうする事も出来ない。

 

 歯を食いしばるぐらいしか出来なかった。



 しかし、振り下ろされた剣が一向に下りてこない。


 「危ねぇ、何とか間に合った・・・。」


 カイトの声だ。


 地面には、先ほどまで胴体にくっついていた盗賊の首が転がっている。


 僕は助かったのだ。

 盗賊の剣が振り下ろされる直前に、カイトが盗賊に止めを刺したのだ。


 「あ、ありがとうカイト。」



 安心した瞬間、横腹に強烈な激痛が襲ってきた。


 「痛ってぇーー!!」


 痛みの原因の横腹を見ると、ナイフが深く刺さっていた・・・。


 そうだ、忘れていた・・・。

 ついさっき盗賊の投げナイフを喰らっていたんだった・・・。


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