泥沼編7話 愛の泥沼



「ツモ!ゴメンね♡ 上がっちゃった♡」


画面の中のパン1美少女のウィンクを呆然と眺める野郎二人。親のダブル役満、96000点也か。こっちの持ち点は1500ぽっちだってのに、オーバーキルもいいとこだろ。


「おい、いくらなんでも国士13面待ちを2巡で張るのはおかしくないか?」


カウントダウンが進むコンティニュー画面、何度も繰り返される惨劇にうんざりした様子のマットはボヤいた。


「ダニーが言ってただろ。最後の1枚になったらCPUは鬼になるって。」


「確かにそんな事を言っていたが……鬼というより悪魔だな。まったく、カナタの相棒よりも可愛げがない。……その分、色気はあるけどな。」


「リリスは将来有望だぞ。ああまで造形が整った娘はそうはいない。」


これは贔屓目で言っている訳ではなく、単なる事実だ。


「確かにな。容姿端麗で才色兼備、性格を除けば非の打ち所がない。とりあえずコンティニューだ。武芸も勝負も諦めてはいけない。俺は勝つまで戦い続ける!」


脱衣麻雀の筐体の前じゃなきゃ、カッコいい台詞なんだがなぁ。


「配牌からすると三色が見えるが……」


マットは脱衣麻雀の極意がまだ掴めてないらしいな。人間相手に打つのとはセオリーが違うんだ。


「三色なんかいるか。食いタンでも翻配のみでもいいから、とにかく早上がりするんだよ。」


「確かにな。持ち点を少々増やしたところで役満が容赦なく飛んで来るんだ。」


「相手は3巡で張ってくるんだ。安手の早上がり以外に活路はない。」


鬼の高手早上がりVS無限コンティニューのお大尽アタック、この勝負の勝敗は見えている。こちらの兵力は無限なんだからな。欲望…もとい、気力が続く限り負けはない。


「喰らえ!中のみ、1000点だ!」


何度もコンティニューを繰り返した後、若き格闘家渾身の安手が炸裂し、勝敗は決する。


「見たかコラァ!俺らはまだ半分の力も出しちゃいねえぞオラァ!」


マットとハイタッチしながら素っ裸の豊満お姉ちゃんにオラついてみる。オレとマットは飲みかけのビールの小瓶を合わせて勝利を祝った。


「さて、ハイパーゴージャス麻雀は攻略したし、次は何にいく? 脱衣麻雀のROMはまだまだあるぜ。」


「今夜はここまでにしておこう。明日の朝からトーナメントに向けて鍛錬せねばならないからな。」


ビールを飲み干したマットは、そう言って席を立った。


「トーナメント?」


「カナタが優勝した例のトーナメントだよ。今年もまた開かれるんだ。」


最強中隊長決定トーナメントか。しかしあれから1年経ってるかね?


「ちょっと開催時期が早くないか?」


「俺達は兵士だからな、きっかり1年周期で開催は出来ないだろう。コムリン市長は戦局が落ち着いてる今が好機と考えたんじゃないかな。」


「あのトーナメントでロックタウンの財政はかなり潤ったらしいからなぁ。やらない手はないか。特訓するなら付き合…」


「部隊長は手助けもアドバイスも禁止、そういうルールが追加された。カナタだって友達と部下を天秤にはかけられまい?」


そうか。前回のトーナメントでは、オレはクリスタルウィドウ代表として出場した。今回の1番隊の代表は、成長著しい空蝉修理ノ介が選ばれる可能性が高い。案山子軍団からはリックかビーチャムが選ばれる、つーか、俺が選ぶんだろう。親友と弟分、手塩にかけて育てたそばかす娘が戦うとなれば、どっちを応援するか選べやしない。


「もちろんだ。皆の健闘を祈るに留めるしかなさそうだな。マットも頑張れよ。」


「おう。前回のトーナメントでは格闘で敗れるなんて屈辱を味わったからな。あの轍はもう踏まない。」


マットはキーナム中尉のプロレス技で轟沈させられたんだったな。今回はあんな禁じ手は許さないぞ。副長を兼任してる中隊長の出場は不可、を厳正に守らせる。


────────────────────


マットが宿舎に帰ったので、オレはプライベートサロンで一人になった。冷蔵庫から新しい瓶ビールを取り出して一気に呷る。オレも宿舎に帰るか、それともここで寝るかだが、どうするかな。


……ん? 呼び鈴が鳴ったぞ。誰かがサロンに来たようだ。キャバクラ帰りのダニーあたりかな?


「こんばんは、隊長。いえ、。……お一人ですか?」


サロンを訪ねてきたのはシオンだった。夜も更けてからの来訪、呼び方があなたってコトは、イチャつきタイムだと考えてもいいのかなぁ……


「ようこそ。見ての通り、オレしかいないよ。」


「よかった。お邪魔しても……いいですよね?」


モジモジしてるシオンさんって超ラブリーだよなぁ。


「もちろんさ。狼の別荘へようこそ。」


「ホラバッカ作品の新作を持って来ました。一緒に鑑賞しましょう。」


Z級映画じゃムードもへったくれもないが、シオンはオレの好みに合わせてくれてるんだろうなぁ。オレは未来の嫁の手を取って、超大型立体テレビを備えたミニシアターに誘い、何も考えずに作られた娯楽作品を楽しむ。


「……いかにも主人公って感じだったイケメンが序盤で退場しちゃいましたね。」


「Z級映画じゃよくある。バッカリーノ監督のしたり顔が見えるようだな。"まさかコイツがここで死ぬとは思わんかったやろ!"ってなとこだ。」


「監督はマリノマリア系移民ですよ? 神難弁は使わないと思いますが……」


「ホーランド・バッカリーノ監督は高校を出るまで神難で過ごしている。むしろ神難弁しか喋れないはずだ。」


じゃなきゃ"エイリアンVSヤクザ"なんてイカれた映画は撮れない。高校を卒業した監督は低予算映画の製作スタッフに加わり、Z級映画のノウハウを学んだとのコトだ。そんな彼の映画作りのモットーは"深く考えるな、浅く適当にやれ"らしい。


「言われてみれば、作品全般が神難のノリですね。」


ホーランド・バッカリーノ、略してホラバッカ監督の新作、"ピテカントロプスの逆襲"を鑑賞し終えたオレ達は、あまりのオチのくだらなさに笑ってしまった。


「いやいや、なんでピテカントロプスが未知のバクテリアで全滅するんだよ。それだと現代人類だって全滅するじゃないか。」


「ええ。それにタイムスリップホールから大量出現したのはいいとしても、バイオメタル並みの怪力や超感覚はピテカントロプスにはありません。もしあんな超人類だったら、ホモサピエンスに代わってこの星の支配種になってます。」


「相変わらず、何も考えてねーなぁ。ま、そこがいいんだけど。」


「ふふっ。私もZ級映画の面白さがわかってきました。……あなたのお陰ですね。」


愛しの副長殿がそっと顔を近付けてきたので、応じようとした矢先に…


、ねえ。ああ、お邪魔虫は気にせずに盛り上がンなよ。アタイが見ててやるからさ。」


オレとシオンが並んで掛けてるソファーの陰に、仏頂面のマリカさんが頬杖をついて胡座をかいていた。いくら忍者の頂点とはいっても、神出鬼没にも程がある。


「マリカ隊長!どうしてここに!」


「どうしてもこうしても、ここの合鍵を持ってンのはシオンだけじゃない。アタイだって持ってる。……カナタ、逃げンな。どういう事なのか説明してもらおうか?」


退却を試みるも、襟首はマリカさんに掴まれ、着座と同時にシオンに腕関節で締め上げられる。左右から迫る女二人を前に、オレは脂汗と冷や汗を流すしかない。


「答えな!アタイだけじゃなく、シオンともヤッちまったんだね?」


「あなた!怪しいとは思っていましたが、やっぱりマリカ隊長とも関係を持っていたんですね!しかも私よりも先に!」


「……ええと……その…色々悩んだ挙げ句ですね……優柔不断とは思いますが……オレの好きなコは全員嫁にしようって結論に至った訳でして……だったらえっちな関係になっても許されるのではないかと思った次第でありまして……」


……きっと、しどろもどろって言葉は今のオレの為にあるんだろうな……


「やれやれ。おおかたアタイがやったみたいに、シオンにも迫られたンだろう?」


「あなた、マリカ隊長とはいつ関係を持ったんですか!」


モゴモゴしてるオレの代わりにマリカさんが答えてくれ…答えてしまった。


「カナタが部隊長に就任した時、餞別代わりに男にしてやったのさ。アスラ部隊の顔が童貞じゃカッコがつかないからね。」


「もう!それだったら私が…ゴホン。本当に、本当に優柔不断なんだから!」


手加減なしで首を絞めないでください。本当に死んじゃいます……


「シオン、それに関しちゃ早い者勝ちって事にしときな。それよりこれからの事を話そう。アタイはカナタを諦める気なんざないし、シオンもそうなんだろ?」


「当たり前です!いくらマリカ隊長でも譲れませんから!」


「だよねえ。だけどこの宿六をケーキみたいに半分こって訳にはいかない。」


シオンは拳をプルプルさせながら答えた。


「私としては、斬馬刀で真っ二つにしたい気分ですけど!」


馬殺し♡は潰す刀で、斬る刀じゃありませんよってツッコミたい……


「そう怒るなって。シオンはアタイと家族になンのは嫌か?」


「……いえ。マリカ隊長にはお世話になりましたし、心から尊敬しています。私の"憧れの女性"でもありますから……」


宿六候補を完全に蚊帳の外に置いて、女二人の話が進んでゆく。オレに発言権などないのだから当然なのだが……


「アタイもシオンを妹みたいに思ってる。だったらアタイ達は家族になりゃいいのさ。男一人に女複数、世間から見りゃ歪でおかしな関係かもしれないが、当人が納得してりゃあ問題ないだろう。」


「そうですね。天掛カナタは生粋の変人ですから、歪んだ関係が正常なのかもしれません。問題は、女がさらに増えそうな事ですね……」


「ナツメとリリスまでは覚悟しておこう。わかりきった事だ。」


「私もあの二人が加わる事は想定していましたけど、かつての上官まで毒牙にかけるだなんて……」


毒牙は勘弁してください。オレがド畜生みたいです……


「話がまとまったところで、姉妹嫁の親睦でも深めようか。」


「映画ならもう一本あります。ロマンスですから丁度良いかも…」


「アタイは甘ったるい映画は嫌いだ。だけど、甘ったるい事なら大好きなのさ。」


そう言いながらマリカさんは上着を脱ぎ捨て、下着姿になった。


「マリカ隊長!何をする気なんですか!」


「決まってるだろ。シオンも脱ぎなよ。一緒にこの宿六を悦ばせてやろう。」


ま、まさかの3人えっちですか!夢のようだ!そんな桃源郷があっていいんですか!


「そんなはしたない事、出来ません!」


……ガックリ。そりゃそうですよね……


「じゃあシオンは見学してな。アタイが房中術のお手本を見せてやっから。」


ブラの金具がパチンと外され、生のおっぱい様がオレの顔に迫ってくる。


「……もう!…ま、負けませんから!私の方が胸は大きいんです!」


意地なのかヤケなのか、上着とブラを脱ぎ捨てたシオンも参戦してきたぞ。やったぁ!


「カナタ、アタイの胸が一番だよねえ?」 「あなた、私の胸が一番でしょう?」


頬に押し付けられる大きな乳房、なんて幸せなシチュエーションなんだ!


「おっと、宿六だけじゃなくてシオンも悦ばせてやンないとね。ほら、アタイの乳首がシオンのに当たってるだろ。フフッ、もうしっぽり固くなってるねえ……」


「あんっ♡ マ、マリカさんのも固くなってますよ……」


め、目の前でマリカさんとシオンさんの乳首が擦れ合ってるぅ!


「さて、次は二人で挟んでやっか。胸と胸で棒を包み込んで…」


ソファーに押し倒されたオレは、女二人にされるがままだった。こんな甘美な挟撃に抗うのは無理ってもんだけど……


「うふふっ。もうはち切れんばかりにそそり立っていますね。いけない人だわ。」


マリカさんはシオンの細い顎を指で摘まんで自分の方を向かせる。


「……シオン、アタイとキスしてみないか?」


「……いいですよ。はむっ…んっ♡」


女二人は糸を引きそうな濃厚なキスをした後、屹立したンまい棒に二人がかりで舌を這わせ、張りのあるおっぱい様と柔らかなおっぱい様でサンドしてくれた。……気持ち良すぎて気を失いそうだ。



愛の泥沼とでも言うべきだろうか。オレの夢のような一夜はこうして始まった。


※作者より 

お仕事多忙で更新が遅れました。申し訳ない。

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