南国編9話 罠と知りつつ、踏み潰す
プライベートビーチにやって来たコトネを交えてビーチバレーなんぞやってみる。
スク水様&オレVS巨乳ビキニ様&コトネの対決だ。ホイッスルを咥えたリリスが審判。さあ、勝負だぜ~!
「貧乳組VS巨乳組、勝負開始よ!」
え!? 俺も貧乳にカテコライズされてんの? おっぱい革新党員として言わせてもらえば、男の胸は貧乳じゃなくて、無価値なんですけど……
まあいっか。コイントスは強運のナツメに任せて、と。よし、勝った。ここはあえてサーブ権を取ろう。オレの華麗なジャンピングサーブで、ビーチの視線を釘付けにしてやるぜ!……プライベートビーチだから、オレ達以外に誰もいねーけど……
初めて打ったにしては上出来のジャンピングサーブ。しかし、融通無碍を極意とする
「ゴーですわ!」 「オッケー。えいっ!」
コトネが上げたトスを、長身のシオンがスパイクする。うーむ、まさにパワースパイク。特にパワフルなのはブルンと揺れるお胸だ。
「カナタ、おっぱいに見とれてちゃダメ!」
レシーブしたナツメの声で我に返る。いけねえいけねえ、勝負の最中だったな。抜群のジャンプ力を誇るナツメに適した高さは、こんぐらいかな?
「ナイストス!いっくよ~!必殺、スク水スパイクぅ!」
「カナタはんじゃおまへんし、ウチらはスク水なんかに幻惑されたりしまへんよ。」
そうなのか。オレだったら絶対に幻惑されっけどなぁ。そしてやっぱりスパイカーはシオンか。長身のパワーキャラだから、当然っちゃ当然だな。
唸りを上げながら、再度襲ってくるパワースパイク。だが、オレにも
「チラッ♡」
コトネがずらした水着に目が向いている間に、ボールは砂浜でバウンドしていた。
「ピピー!巨乳組の得点、1-0よ。」
宣言した後にホイッスルを投げ付けられ、背後からはスク水キック、喉元には巨乳ラリアットを喰らってダウンさせられる。
「カナタの浮気者!」 「どうせ見るなら私の胸にしてくださいっ!」 「……殺していいわよ、二人とも。」
おっかしいな。ビーチバレーがプロレスになってる。……なぜだろう?
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潮風の中のプロレス大会は、オレが一方的にやられる塩試合だった。海だけにしょっぱい試合になんのは仕方ねえよな。
「キャメルクラッチを喰らったのにニコニコしてるなんて、カナタってMなの?」
「ナツメ、少尉はMじゃなくてスケベ。シオンのお尻の感触を背中で堪能してご満悦なの!」
スク水様とフリル様はおかんむりだ。親睦を深めるどころか、亀裂が深まったような気がしてならない……
「シオンはんは座りのええ安産型してはりますもんねえ。」
素敵なボリュームでした。おっぱいもいいが、お尻も素敵です。
「隊長!戦場ではあんな醜態を晒さないでくださいね!」
安産型のお尻を持つ副長に、耳を引っ張られる。赤くなってるお顔が、本当に可愛い。
「おっぱいもお尻も堪能したし、そろそろホテルに戻りますか。」
プライベートビーチはホテルの庭園に繋がっている。南国風に設えられたお庭には、花を愛でるホタルの姿があった。ホタルは耳を引っ張られながら連行されているオレの姿を見て、苦笑した。
「またカナタの病気が出たの? 三人とも苦労するわね。」
「これはこれは、白い下着の若奥様。憲兵総局からもうお帰りですか。」
ホタルさんがポキポキ指を鳴らし始めたので、慌ててシオンの背中に隠れる。
「シュリとカナタのお仕置きは後にするとして……真面目な話よ。」
「わかった。オレの部屋で話を聞かせてくれ。三人は待機だ、場合によっては少し仕事を頼むかもしれん。」
「了解なの。」 「
「街のド真ん中で無酸素爆弾を炸裂させようとしはった連中には、キッチリお仕置きしてくんなまし。ウチに出来る事があったら、遠慮のう言ってもらえればよろしおすえ?」
コトネの手を借りるまでのコトはないと思うがな。とはいえ、話を聞いてからじゃなきゃ判断も出来ないか。
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部屋でアイスコーヒーを飲みながら、ホタルが調査結果を話してくれる。
「……そんな経緯でね。リーダーの持っていたハンディコムを詳しく調べた結果、龍餓鬼島にある中継点が浮かび上がってきたの。」
「そのコトを憲兵総局には教えたか?」
「いいえ。さっき言った通り、リーダーのハンディコムには龍球防衛部隊の要人の電話番号もいくつか隠されていたわ。内通者がいる可能性がある以上、話すのは危険でしょ?」
「たぶん、その電話番号のほとんどはダミーだろうがな。いや、全部がダミーの可能性もある。」
「どういう事?」
「司令の話によると、龍球は最重要拠点と認識されていて、家柄ではなく能力主体で人員が配属されている数少ない拠点らしい。そりゃそうだ、龍の島から大陸を牽制出来る要地だもんな。軍人の忠誠心と能力が高いこの龍球に、裏切り者がゴロゴロいるとは思えない。十中八九、共喰いさせる為のブラフだ。」
沖縄に国内最大の米軍基地があったように、この島の戦略的価値は高いに違いない。それに、龍球総督を司令は"まぁまぁ"と評した。司令のまぁまぁは、当てにならない。ヒンクリー少将やテムル総督も似たような評価だったからな。司令は自分を基準に採点するから、人物評がとにかく辛口なんだ。司令の言う、"まぁまぁの総督"の下に裏切り者がゴロゴロは、ちょっとありえない。
「なるほどね。あえて密書に名を記して主従を離間させる策は、大昔からあったものね。」
戦国武将で言えば、毛利元就の得意技だな。彼は密偵と知りながら、その男をあえて※祐筆に起用し、偽情報を敵方に流すなんて手まで使った。元就と言えば結束の重要性を伝えた"三矢の教え"が有名だが、あれは後世の創作だ。長男の隆元は元就より先に死んでいたんだから、遺言を残せる訳がない。むしろ元就の人生は、結束するコトよりも、結束を崩すコトの重要性を教えてくれている。弱小勢力だった毛利家が、大内、尼子といった巨大勢力を食って中国地方の覇者に成り上がった原動力は、元就が戦と謀略の双方を得意としていたコトにある。大勢力を分裂させて片方に付き、勝った後に裏切る。元就ほどこれを上手くやった英傑はいない。
同じ英傑でも織田信長なんか、裏切ったコトより裏切られたコトの方が多い。主立ったところでも、実弟の織田信行、義弟の浅井長政、荒木村重、別所長治、松永久秀、最後に明智光秀に裏切られてる。……いやいや、どんだけ裏切られてんだよ。これで天下統一の目前までこぎ着けたんだから、やっぱ稀代の英雄ですわ。
「それに調査対象が広がれば、その分、時間と手間を食うからな。龍球の事情は脇に置くとしてもだ、いくら同盟軍が腐敗してるつっても、ホタルが名を上げた要人全員が不正に関与していたとは思えないね。龍餓鬼島の中継点も怪しいもんだが、調べない訳にもいかない。昼からオレと三人娘で調べに行ってみるよ。ホタルはリストにあった要人を、シグレさん達"凛誠"と協力してあたってみてくれ。」
「オッケー。完全適合者"剣狼"がいれば、龍餓鬼島の調査は問題ないでしょうけど、十分気をつけてね?」
「シュリが顕彰式から戻ったら、高速ヘリでスタンバイさせておいてくれ。ゲンさん達にも声をかけてな。オレ達が島に着いた頃にはバックアップチームの準備も出来てるだろう。」
オレを絡め取る罠である可能性もある。もし、罠だとすれば、大人数で行けば、罠師は作戦を断念するだろう。無酸素爆弾で大量殺戮も辞さないなんて輩は、龍餓鬼島で始末しておくべきだ。司令から龍球総督に頼んでもらって、海上封鎖の準備もしてもらうべきだな。潜入するより、コトを成し遂げて脱出する方が困難、が特殊作戦の常識だ。敵さん、そこんとこまで考えてるかね?
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「バウ!(お出掛け!)」
用意させたクルーザーには雪風先輩も乗り込んでいた。調査となれば雪風の鼻は頼りになる。やれやれ、オレもまだ思慮が浅い。罠だと決め打ちせずに、本当に中継点がある可能性にも備えておくべきだったな。
「ありがとな、雪風。」
キャビンで尻尾をフリフリしてる忍犬の頭を撫で撫でしながら、礼を言ってみた。
「バウバウ!(リリスちゃんにお願いされたの!)」
さすがちびっ子参謀、気が利くねえ。
「シオン、クルーザーの安全は確認したか?」
「ダー。私ではなく、雪風が確認済み。」
よし、だったら問題ない。姿を隠した暗殺者だろうが、精巧精密な小型爆弾だろうが、雪風の鼻からは逃れられない。
三人娘と忍犬を連れて、龍餓鬼島へ向かうとするか。龍はいなさそうだが、餓鬼はいるかもしれん。
※祐筆 主君の代わりに手紙を代筆する係。その役目柄、主君の傍に控える事が多くなります。昔の日本では地位のある人間が直筆の書状を書く事もありましたが、祐筆に代筆させてサインだけする場合も多々ありました。
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