違和感。
私がいつも通りに違和感を感じたのは、駅から帰る道すがらに黒い猫を見た時だっただろうか。たまにはそんなこともあるだろうと思う人もいるだろう。でもそれは私にとっては、違和感でしかないのだ。昔から猫とは縁がなくて、見たことも触れたこともない。それなのに、出会って、猫が私をずっと見つめていた。とても不思議に思う光景であった。
違和感を感じ始めると、全てにおいて違和感を感じるのは人間の嫌なとこだ。いつも通りではない日常。全てに歪みが生じ始めた。
次に大きな違和感を感じたのは、街並みだろうか。私が住んでいるのは、山を切り出して作った住宅街で、近くに大きな公園がある。それが朝起きると少し変わっているのだ。少し…ではないか。かなり変わっていた。道を挟んで建ち並ぶ建物は、子供が機嫌を損ねてぐちゃぐちゃにしてしまったかのように、地形が、街並みが歪んでいた。それに、近くにあるはずのなかった鉄塔が、2軒挟んで向こう側に見える。
それはもう違和感ではないのかもしれないけれど、いつも通りを守りぬきたいがために、ただの違和感だと思いたかった。
幸いにもその日は、祝日だった。外に出なくてもよい。だからもう一度寝てしまえば元に戻るだろう。ただの夢なのかもしれないと。そう思い込みたかった。
この時の私は知らないのだ。そんな甘えた考えと、現実逃避のせいで、寝たことを後悔するのことになろうとは。
二度寝から目覚めた時、時間は分からなかったが、部屋に入ってくる光の加減で昼過ぎだということはわかった。かなり寝ていたのに誰も起こしに来ない。まだ違和感が残っているのかと少し残念に思ったが、街並みさえ戻っていれば生活も元に戻っていくだろうと思ったのだ。私はベッドから出て、ベランダに向かった。
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