第6話 勇者が現地人ってしんせーん。
一体、どれ程俺は眠っていたんだろう。
神の爺さんの野郎、忘れてずっと放置してたんじゃないか?
まあ、この事はこの辺にしとこう。
今、俺は。
目の前のこれに対処しなければならない。
俺と外界を繋げる光の道の向こう側はまだスイカくらいの穴からしか見えない。
何やら、騒がしくなるが、どうやら結構な岩場なのか慎重にその穴が広がる様に岩を取り除かれていく。もう間もなく俺はこの暗闇から救い出される事だろう。
本来なら、この人たちにお礼を言って回るべきだが。
何分、俺は今無機物とされる異世界の武具『剣』になってしまっている。どうやら声も出せないらしいし、今後俺はどうなるのだろう。一番困るのは扱いに困って破棄される事だ。そうなるとどうなる?
剣の場合、生涯ってどうなる?
朽ちて土に還るまでか?
それって何年?
え?
それまでどうなるの?
そんなこんなを考えていると、すっかりと周囲の景色が開かれていく。
ああ………ここが、俺が憧れ続けた……いせか……
………。
あふりか?
俺の目の前に見えるのは広大な大地に彩りを加える草原と遥か彼方に連なる森と山。緑と茶色と黄土色。空は真っ青。
そして、俺を睨む様に見つめる方々は、その逞しく鍛え上げられた上半身を衣服で隠すなんてマネはせずに男らしく裸。下はまるで腰ミノっていうのだろうか? あれ。
そして、思わず声を飲み込んでしまうその風貌。
俺の記憶で一致する人種は、アフリカ大陸の先住民の方々。どう呼べば解らんから、そう言う風に文章では表現しとく。
「剣だべ。まっこと、なしてあんな場所にこげな立派な剣さあるべ? 」
……ん? あれ? 今、あそこの短距離走で世界記録出しそうなお兄さん、日本語喋った?
「どうすっべ? 班長。見た感じ町さ行って売りさばきゃ、上手い酒が飲めそうなくらい立派だっぺ」
少し離れたフライドポテトにシェイクを付けて食べそうなおじさんが今度はそう言う。
「長老さ呼ぼう。んで、判断してもらうべ。長老なら、なんか知っとるかもしれんし。ラモス。お前ちょっくら、長老連れて来てくれや」
素手でクマを屠りそうな彼がそう言うと、傍に居た一番若そうな少年がこちらをおどおどと眺めた後、素早くその集団から離れていった。
暫らくしたのち白髪と白髭が地面につきそうなくらい伸びた老人がその少年に背負われてやってきた。
そして、俺を見た瞬間。心臓が弾けたんじゃないかと言うくらい驚きの叫びを挙げた。
「こ、これは………‼ 」
全員が息を呑むのが聴こえた。
来た来た。流石に神のじじい、ここは伝説の剣とかにしてくれてんだろう。いや、待て。そもそもミスって俺は剣に転生されてるって訳で……つまり……。
「知らんのう、昔誰か旅人が忘れていったんじゃろう」
土曜日の正午なら盛大に皆がずっこける所だった。
「よっしゃ、なら町さ行って酒に換えてくるべや」
「んだんだ、見つけたわしらのもんだべ。班長」
途端に、数人の屈強なおさーんたちがわいやわいやと騒ぎ出す。
……おい、神のじじい。俺、売られるぞ?
……おいーーーーー‼ じじいいーーーー‼ てめえ前話みたいに、ちょっと話にでてこいおらーーーーーーーー‼
「へへぇ、んじゃあ、さっそく……」
そうこう神の爺さんへ激おこしている内に、例のポテトシェイクおじさんが俺を拾う様に手を伸ばしてきた。
いいいいやああああああーーーーーーー‼ よりによってポテトシェイクおじさんが一番手はいやあああああーーーーーー‼
「あ?? 」
所がおじさんが手を伸ばすがそこにまるで見えない壁がある様におじさんのべとべとしてそうな指が弾かれる。
「な、なんじゃあ、こりゃあ面妖な。わしゃこんな気味悪い剣いらんで」
一体何が起こったのかと考えていたところ。
「ほっほ---間に合った様じゃな」
脳内に響く、腹が立つ声。まあ立てる腹なぞないのだが。
じじい。お前………まあ、いい。そうか。今の不思議な感じはあんたの仕業だな?
「うぬ。まあ……わしもいんたーねっと? でなろう小説を色々と読んでな。
まあ、お主の言うとる事の大体は理解した……と約束しよう」
………ん?
おい、じいさん、何言うてる?
「まず、そちらの世界に『魔王』を生み出しといた。
んで、それを倒せるのは、お主だけ
必然、お主を手に出来るのは
この世界の救世主。すなわち勇者じゃな。
お主はこれからその者と出逢う悠久の時を過ごさねばならん。
一応、脳内にPSPとかDSを送れるけど、どうする? 」
なんで2010年代だよ。まあ、一応もらっとくけどさ。ソフトはテイルズ系がいいな。
って、そうじゃないだろ。
いや……まあ
……うん。剣にされた時点で、この世界で俺の理想にするのなら。
まあ、魔王と勇者は必要だよね。
……あれ?
その時の伝説の剣が俺って……
それ、悪くなくなくない?
うん……うん……
でも、確かに勇者が現れるまで……「お、なんやラモス。おまんも挑戦してみるけ? 」
俺ってこのアフリカ風の土地で放置プレイされちゃうの?
なんつうか、それも……
「うおおおおおおおおおおおおおおおお‼ 」
いや、丁度成人した時で忙しくて出来なかったPSPのソフトとかを脳内で楽しんでおけば、案外それも悪くないのかもしれないぞ
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼ 」
ちょ、さっきから、俺の内面文に割り込んでくるこのカギかっこ、なにぃ?
……うん?
ちょ、な、なんで景色が動いて……うげっ
ちょ、とま
止まれって
その時――俺はその現象の原因と目を、正確には俺に目は無いんだが
とにかく合わせた。
「ほえ? い、今止まれって……」
その少年は、先程糞役にも立たない村長を背負って走り回っていた
芸能人で言えば、読売巨人軍のオコエに似た。
アフリカ系の少年だった。
ぼっちの俺が魔剣転生~タマケンの異世界魔剣冒険譚 ジョセフ武園 @joseph-takezono
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