第4話 さぁ! 異世界に行こうよ!
爺さんは、やれやれ。と両手をひらひらさせた。
「では、もういいかの?
え~~っと。
モンスターのいる世界で?
勇者が居なくて?
あんさんが剣士で?
唯一モンスターに対抗出来る強者?
……………
ふぅ。
じゃあ、そろそろ送ろうかの?
ええか?
向こうの世界で願いの異世界人生を
それにより、あんさんの今回のこの人生の因果は全て昇華となる………
以上に納得したら、そのまま転生されるまでじっとしときんさいや」
神の爺さんがそんな大切な事を言っている中。俺は、何かを忘れている様な衝動にかられ、必死でそれが何かを導き出そうかと思念していたんだ。
「さて…………では、時空を掌りし神として世界の理に命ずる………」
「――んおっ! 」
俺の身体の周囲に、青すぎる程の青を帯びた光の粒がまるで沸騰した様に湧き出てくる。
――な、何か………忘れてる事………あ! ――
「ま、待ってくれ! 」
俺のその言葉に、神の爺さんは「マジ? このタイミングで普通まだ何か言う⁉ 」とでも言いたそうな表情をした。
「マジ? このタイミングで普通まだ何か言う⁉ 」
おい、一語一句的中だよ。
「魔法だよ!
異世界なんだから、当然だけど魔法は在るよね⁉ 」
少しずつ、その青の粒子に覆われていく俺に対して神の爺さんは溜息をついた。
「あのねぇ
普通の世界に『魔法』なんて、在る訳無いでしょう?
あんた、何歳まで生きとったん?
じゃあ、逆に訊くけど?
あんたの世界に、魔法はあったん? 」
こ………
このジジイ……! もう、俺の事なんか面倒くさくなってやがる‼
思わず、白目を向いて俺は爺さんを睨んでいた。
すると、爺さんは隣の天使ちゃんの腰に手を回すと溜息を再度つく。
「わかった。わかりました。タママギ君。
そんな、戦争を起こしそうな顔は止めなさい。
魔法ね。アレやろ?
伝説の能力でしかも君だけが何故か使えるって、設定にしとけばいいんよね? 」
神の爺さん、西尾ファンかいい趣味してやがる。いや、多分、物語シリーズだけ齧ってるニワカだろう。
「恩に着るぜ‼ 神さまよぉ‼ 」
その言葉の瞬間「パアァ~~」っと周囲の青い粒子が眩い光を放ち始める。
「ええ~~っと。
剣士で。魔法を………
ん?
剣を扱える魔法使い……で?
んん?
あれ?
魔法を覚えた勇者………
いや、勇者は居なくて…………」
「お…………おい………神さま………?
……………爺さん?
な、なんか、もう俺の周囲が
転生間近って、雰囲気なんだけど?
ねえ?
ちょい? 」
神の爺さんの、どうしようもない爺さんの部分の行動言動に俺は隠しきれない不安を覚え、思わず声を掛けた。
「う…………うっさいのぉ。
集中力が切れ…………あ‼ 」
突如、ぶつぶつと念仏の様な呪文を唱えていた爺さんが放った。その驚いた声に俺は目を見開き反応した。
「何⁉ 」
その俺の反応に、爺さんは目を合せずに明るいトーンで返す。
「な、なんでもないおー」そう言いながら、慌てて傍の天使ちゃんに指示を出して何やら分厚い本を持ってこさせた。
タイトルは………初めてでも解る。異世界転生の方法⁉
「じ…………爺さん⁉ おいっ、俺の身体、もう半分くらい消えてっけど⁉ おまっ。
おまっ、まさか…………」
しかし、爺さんはまるで無視して乱雑に本のページを捲っている。
間違いない。
このジジイ、なんかしくじりやがった。
「おい‼ ジ「じゃかましいいいいいわぁあああああ‼ 」聞いて……」
「⁉ 」ちょ、このジジイ。今、俺の
「今、わしが頑張って、調べとるんわ、誰の為じゃ?
お前さんの為じゃろう?
何でそれが解らんのん?
え?
あ?
なんなん? 」
爺さん、神と言えどもどうやら人間の老化と似た経年を追うらしい。
もう、完全に昔近所に居た困った爺さんだよ。
だが、俺にももう余裕は無かった。気持ち的にも。時間的にも。
「あ…………あ~~~⁉ 」
両手の先が完全に消え去っているし、もう首の下まで完全に透けてきてしまっている。
もう、本当に、次の瞬間には………
「パッ」
…………
え。
ちょ…………
え?
突如の暗転。いや、それどころか。声も完全に聞こえない。
完全なる無の領域。
これって…………?
まさか………?
『転生』
されちゃったのーーーーーーーー⁉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます