第3話 王子と王女
「……。」
「…………」
さて。
なんなのだこの時間。このような時間が私は1番嫌いなのに。
まぁ空いてる時間が勿体ないので説明しよう。
私が無言で向き合っているのは恋愛脳馬鹿王子。
何しに来たのか分からない。
私が本を読んでいると突然奇声を上げながらノックもせずに部屋に入ってきた。
お前は猿かと頭を引っぱたいてやりたかったが今のところあの王子の方が身分が上なのだ。
だがしかし全くマナーがなっていないアホ王子だ。どんな教育を受けてきたのやら。
そして何故か私の横には馬鹿王女のカタリア。
ずっとニコニコしていて気色が悪い。
そして沈黙の中、王子が口を開いた。
「…カタリア王女殿下。どうしてこんな女の為に我が国との関係を切りたいなんて言うのですか。」
アホ王子がきたのはこういう理由か。
だがどうして私の家に?都合良くカタリアが来たので良いものの……。
それまでずっと奇声を上げ続ける予定だったのか?
「あら。それも分かりませんのね。アルフォンス王国の王子様はどのような教育を受けてきたのでしょう。」
鼻で笑いながらカタリアが言う。王子を煽っているようにも見えた。
「……っ。たかだか王女である貴女にそんな権限があるとは思えません。なんならこちらは戦争を起こしても良いんですよ。」
ニヤリと勝ち誇った様に笑う王子。
コイツ馬鹿だろ。
自分の国より大きな国の王女に喧嘩を売り、戦争を起こすぞと脅しをかける。
カミールと戦争なんてしてみろ。数日でこの国は潰れる。
それも分からないほどこいつの頭はお花畑なのだ。花引っこ抜いてやろうか。
「……あらあらまぁまぁ。随分と強気ですのね。残念な事に、お父様もお母様もこの件については了承しています。
……で、戦争でしたか?いいですよ。
いずれ後悔するのはそちら側です。さぁ。クロード王へ宣戦布告をしてきましょう。」
「えっ。」
立ち上がったカタリアはニヤリと笑って私の手を引っ張った。
「……なんで私も行くのよ!?!?!?」
「証言者です!そこの王子の不躾な発言のね…
そうそうエドガー殿下。貴方も着いてきてください。」
「えっいやでも」
「……まさか後の事を考えずに戦争を起こしてもいいと発言したのではないでしょう?
流石にそこまでアルフォンスの王子は馬鹿では無いはず。」
「チッ……。分かりました。ついて行けば宜しいんでしょ?行ってあげますよ」
鼻で笑いながらエドガーは立ち、私らの後に着いてくる。
……時間の無駄だ。
私は本を読みたい。
だが今戦争が起こってしまうとノアレイズ公爵家が危ない。
というかレオンはどこへ行ったのだ。
主を守るのもあいつの役目ではないのか。
役立たずめ……
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
1時間もせずに王城……の門まで来た。
相も変わらず無駄に大きいなこの城。
門番が立っており、人形かと思う程静かに動かないでいた。
「……どうもこんにちは。ここ、開けてくださいます?」
カタリアが言った。
「……あなた方は?。」
「…ふふ、少し王様に用があります。開けてくださいませんか?」
「……残念ながら、陛下は面会の予定のない、ましてや誰かも分からない者とは会われません。」
ため息を零す門番。
そんな門番を見てカタリアは笑った。
「実は私、隣国の王女カタリア・カミールです。ノアレイズ公爵令嬢、エドガー王子もここにいます。通して頂けますね?」
私は通る理由にならないと思うのだが……
門番は私達の顔を見ると慌てて門を開いた。
……城に入ったはいいものの、そんなにすぐに国王に会えるものなのか??
「こっ、こちらへどうぞ。国王がお待ちでございます……!」
兵士は私の顔を見るなり、怯えた顔付きで国王の元へ案内した。
なんだろう。この城失礼な奴がいっぱい居る。
国王がいる、と言われた部屋に入ると、そこには上等な椅子に腰を下ろした国王、クロードがいた。
「これはこれはカタリア王女。一体どうしたのですか。」
国王の顔色が悪い。
これはまたバカ息子が何かやってしまったなと察しているのだろう。国王も苦労するものだ。
「ごきげんようアルフォンス国王陛下。実はですね、エドガー殿下が我が国と戦争をしたいと仰っていまして。
私とて…争い事は好みませんわ。ましてや戦など……ですが…」
「もっ、申し訳なかった……!愚息がそんな戯言を……。」
「ですが父上!!カミールは我が国より文化が発展してない。ということは武器も発展していないのです!それに、友好関係が途切れた今、カミールとはなんの関係も無く、何の支障もない。よって我が国の勝利はほぼ確実です!」
何を言ってるんだこいつは。
カミールとの友好関係が途切れたという事だけでこの国は危険な状態なのに…。
「お前は黙っていろ!!」
「いっ…」
……驚いた。急に大声を出すなど…国王らしくないではないか。
彼は常に冷静沈着。人前で大きな声なんて出したことがないのに。
カタリアの目からは光が消えているし…
私は早く帰りたい。もう話は終わったのではないのか。
「…ねぇカタリア。貴方本当に戦を起こすつもりではないでしょうね?」
小声で問うてみると、カタリアは少し口角を上げてこちらを見た。
「まさか。レイシア様がいるのでそんな事はしませんよ。我が国もそんなに暇ではありません。
…まぁ、レイシア様がカミールに来て下さるのでしたらもう未練はないので潰してもいいかもしれませんね。」
これを悪い顔で言うのだ。
これだからこいつは敵には回したくない。
「…カタリア王女、レイシア嬢。すまないが……」
「えぇ勿論ですとも。私もそこまで小さい人間ではありません。王子には頭で考えてから発言しろと伝えておいてください。」
「あ、あぁ…。その、我が国との関係、少しだけ見直してほしいのだが…。」
先程とは違い、青い顔をしながら言う国王。
流石に可哀想だ。
「…カタリア。」
「はい。……レイシア様に免じて。今回だけです。次はありませんよ。アルフォンス国王陛下。」
「…感謝する…カタリア王女…。」
その言葉を最後に、私達は城を出た。
全く疲れた。私いる意味あったか?
「ふふ、あの王子、うちの国が発展していないって…!可笑しいですよねぇレイシア様!」
「…そうね」
「アルフォンスより遥かに文化は発展しているのですけれど…。あの王子には他の国の状況が分かっていないのですかね?」
「…そうね」
「…レイシア様」
「…そうね」
「今日私の城にお泊まりしていきませんか!?」
「断固拒否するわ。」
「なんてこと!!」
「流れで行けると思ったら大間違いよ。」
なんて会話が帰りの馬車内であったのは内緒の話。
濡れ衣令嬢は時間が惜しい 桜乃春妃 @where
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