第21話 私……処女なので……。
ようやく落ち着いた元生徒会長の神宮寺早苗さん……。
「早苗と呼び捨てにしてください……なんならお前で……」
「いや……早苗……先輩で……」
「先輩……そ、そうですか……」
俺がそう呼ぶと、何故か悲しそうな顔をする早苗先輩……。
「──えっと……今日はその……相談に来たんです」
「は、はい! 何なりと、私に出来る事なら、いえ出来ない事でも何でも致します!」
いや、えっと……出来ない事をどうやってやるのか、少し興味あるけど……。
まさかこんな調子になるなんて全く想像してなかった。
早苗先輩はよく飼い慣らされた犬の如く、僕の指示をワクワクしながら待っている。
なんだか前に聞いた事がある……偉い人は普段命令されないので、そういう事に飢えているとかいないとか……。
そんな性癖の様な気さえする彼女の異常な行動に僕は若干引いていた。
しかし──何でもするで脱ぐって……いや、まあ俺の持ってるその手の本じゃお決まりのシチュエーションだけど……実際そうなって見るとああはいかない……当たり前だ!
やはり本で得た知識、エッチな本だけじゃあどうにもならない……だから当たり前だ。
──俺は意を決して彼女に今回の本題を話し始めた。
「……えっと俺が相談したい事って言うのは……その……女心を知りたいというか……じ、実は好きな人がいて……告白なんかをしたいなーーと……」
シドロモドロになりつつなんとか本題の相談事を告白する……もしだ、もしも彼女が、早苗さんが俺に少しでも気があるなら……ここは悲しい顔をしたり、『私にそんな事を聞くな』等と怒ったりするのだが……。
「女を知りたい?」
「ち、違う、いや違わないけど、言い方! 女心です! 心!!」
「ああ、そうなんですね!」
なにやら嬉しそうに俺の話を聞く早苗先輩……えっとわかってるのかなあ? 俺の言ってる事……とりあえずわかってるならこれで、俺の事を好きだから何でもするっていう理由は無くなる……。
良かった勘違い野郎にならなくて……。
危うくお前俺の事好きなのか? なーーんて聞く所だった……。
「……恥ずかしいけど……俺こういう事に慣れて無くて……まあ、色々あって友達もいなくて……でも……どうしても、失敗はしたく無いんだ……嫌われたく無いんだ……だから……先輩に教えて貰えたらと……女心とか、付き合い方とか……」
顔から火が出る思いとはこの事だ……穴があったら入りたい……でも……例え女々しいと言われても……どうしても失敗したくない……俺はその思いだけで、早苗さんに、早苗先輩に哀願した。
俺の話を頷きながら聞くと、早苗先輩は少し考え、そして俺を真っ直ぐに見つめて言った。
「話は
「あ……そう……なんですか……」
これだけ綺麗なのだからそういう経験があると踏んだんだけど……綺麗過ぎると逆に皆彼氏がいると思い遠慮して逆にモテないと聞いた事があるけど……。
「勿論処女なので、男の人とどうやってお付き合いし、どう進展するのか? とかも、わかりかねます」
「いや……えっと……」
聞いてない、聞いてない、そこまで聞いてない……。
「しかしながら……何でもすると言った私の思いは変わりません……なので……匠様のお好きな様に私をお使い下されば言いかと存じます」
「存じって…………使う?」
なんだなんだ? また何か変な事を言い始めたぞ?
真剣な表情、いや仄かに微笑んでいる様な……アルカイックスマイルの早苗先輩は自分の胸に手を置き俺を見つめている。
「はい……私は匠様の物です……なので私をお好きな様にお使い下さい……告白の練習でも、デートの練習でも、キスの練習でも、何でも……その方と考え方は違うかも知れません、でも私も同じ女ですので、私がどう思ったか、どう感じたかを匠様にお伝えすれば多少なりともお役にたてるのではないでしょうか?」
「れ、練習……台って……」
なんだ? この娘は一体……なんなんだ? もう過去って今世ではなく……前世とかで、俺はこの娘に1億回くらい殺されたとか、そういう事なのか?
天使の様な……女神の様な……いや……悪魔の提案に俺は躊躇した……そもそもそんな事をして良いのか? もし詩ちゃんに見られたら……だからと言ってこのまま詩ちゃんに告白して問題無く付き合うなんて出来るとは思えない……。
「えっと……とりあえず練習……台なんて失礼な事は先輩の為にも、俺の好きな人の為にも出来ない……でも……話だけ……それだけ聞いて貰えて意見をして貰えるだけでも助かります……なので……俺の恋愛の手助けをして貰えますか?」
「……はい匠様の仰せの通りに」
そう言うと早苗さんは俺に向かって頭を下げた……。
俺は信じて良いのだろうか? この人を……過去俺に対して何かをした人物……俺を裏切ったらしい人物……改心したのか? 俺に対して何でもすると、尽くすと言っているが……本当に?
でも他に頼る人はいない……彼女に頼るしか無い。
俺は彼女を信じて……詩ちゃんとの今後を、俺の考えを、思いを話す事にした。
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