第14話 その角の先に……。


 菜ちゃんの家から出るともう夕方だった。お母さんが心配するのです。なので早く帰らなければと私は家に向かって足早に歩いていた。


 今日は菜ちゃんに一杯教えて貰ったです……こういう事を教えてくれる人なんて今までいなかったです。


 凄く勉強になりました……です。


「……そうなんだ……結婚する前に色々するんだ」

 菜ちゃんにそう言われたです……私は皆、運命の人がわからないからお試しでデートとかをしていると思っていたです……でも違うって菜ちゃんは言いました。


 でも、必要あるのかな? だって一生一緒にいる人なんだから、すぐにでも結婚しちゃえば良いと思っていたです。 でもまさか結婚に年齢が関係あったなんて……。

 グランマは愛に年齢は関係無いって言ってたです。おかしいです。


「たっくん……どこにいるですか、早く会いたいです……」


 いつか会える、きっと会える……でもその確証は無いのです……。


 グランマは運命の人に会えばわかると言っていたです。でも必ず会えるとは言っていなかったです。既に1回会ってしまったから次また会えるとは限らないのです……あうううう、自分で言ってて悲しくなったです。


 暗くなる前に帰らないと……でも帰り道には猫トラップが一杯……あそこにもいるです…………ちょっとだけなら…………。


 私と同じ銀色の毛の猫さんが足にすり寄って来るです……お家は猫が飼えないのでこうやって遊ぶです。

 私は髪の毛をフリフリして猫さんをじゃれさせる。


「かわいいいですうう」


 私は暫く猫さんと遊ぶ……可愛い……でも……ううう、もう限界ですうう。


「お母さんに叱られます……バイバイ猫ちゃん」


「にゃああああ」


 私は後ろ髪を引かれながら急いでその場を後にした。




◈◈◈




 夕方まで一人寂しく街中をあてもなくウロウロしてきた……何故だか純は慌てて帰ってしまったからだ。

「俺なんかしたっけ?」

 なんか怒ってるような……泣いている様な……そんな感じがした。


 純には本当頭が上がらない……事故後退院してから、いやその前も……ずっと世話になりっぱなしだ。


「いつか恩返ししなきゃなあ……」


 俺はそんな事を考えながら家の近くの道を歩いていた。


 それにしても……詩ちゃんと出会ってそろそろ1ヶ月……何故出会えないんだ……。


 出会った場所近くの高校、駅や繁華街……ファーストフードやファミレス……ゲームセンター……高校生の行きそうな所は全部探した。


 しかし何故見つからない……転校してきたと言ったんだからこの辺りには絶対にいるはずだ。



 その角を曲がった所にいるかも知れない、あの時の様に猫と戯れる詩ちゃんが…………いた。


「にゃああああ」


 詩ちゃんと同じ髪の色の……猫がそこにいた……。


 俺はその人懐っこい猫を座って撫でた……銀色の毛、碧眼の目……まるで詩ちゃんの様だった。


「おい……まさかお前じゃ無いだろうな? おい?」

 俺はそう言いながら猫を撫でた……この猫を撫でる様に……いつか彼女偶然、詩ちゃんの髪を撫でたい……って……そう思いながら……。


「にゃああああ」


 しゃがんで撫でている俺の足元にすり寄って鳴く猫……首輪が在るので野良ではなさそうだ。

 

 「おい、お前の毛と同じ色の髪の女の子を見かけ無かったか?詩ちゃんって言うんだ……俺の運命の人なんだ……知ってるか?」


「なああああああ」

 そう返事をする猫……


「生憎猫語は必修科目じゃないんだ、日本語喋ってくれ」


「にゃあああ」

 

「喋れないかあ……そうかあ」

 何故だかもし喋れたら、こいつは詩ちゃんの居場所を言いそうな……そこの角を曲がった先にいるっぞって、そんな風に言いそうな気がした。


 こんな戯言にも頼りたくなる程、俺は完全に追い込まれていた。もう探す所は無い……これだけ探していないって事は……何かが間違っている……何か根本的に間違っているってそう思っていた。


 そろそろ帰らなければ……今日も母さんは遅い……妹の為に俺が夕飯を作らなければならない……。

「うう……純のありがたみがこんな時にわかるとは」


 俺は猫にわかれを告げ立ち上がると急ぎ家に向かった。

 可愛い妹がお腹を空かして待っている。


 とりあえず、今日も妹で癒されよう……。


 いつか詩ちゃんで癒される時がくる事を願って……。




【あとがき】

フォロー、★レビュー、♥エピソードに応援ありがとうございます。

引き続き応援よろしくお願いいたします。

特に★レビューをよろしくお願いいたします。m(_ _)m

現在他にも作品集中更新中です。

https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054884994656

妹に突然告白されたんだが妹と付き合ってどうするんだ。

https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054890642651

国による恋人マッチングシステムを使ったら、選ばれたのは隣の席の大嫌いな女子だった。


こちらも合わせてよろしくお願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る