第4話 幼なじみ
俺には一つ下の幼なじみが居る。
俺は妹の名前同様に「すみ」と正式な名前で呼んでいた。
純は現在高校2年、セミロングの茶髪で、若干癖毛、パーマがかかっているようなので、少しギャルっぽいイメージだ。妹に負けず劣らず小柄で、幼児体型……見た目は一見バカっぽい。
でも純は……その見た目に反して昔から物凄く頭が良く、俺は両親に子供の頃からずっと純と比べられていた。
純の性格は一言で言うとお節介でお人好しだ……さらに面倒見が凄く良くて、うちの両親と妹は純の事をいたく気に入っており、遠い親戚という事もあってずっと前から家族の様な付き合いをしていた。
うちの両親は共働きでかなり忙しく、母の帰りが遅い事が以前良から凄く多くあった。そんな時純は、わざわざ家まで来てくれて、家事やまだ小さかった妹の世話を率先してやってくれたりもしていた。
小さい頃から家族の様だったからか、俺は純の優しさに甘え、憎まれ口を叩いたりしていたが、実は内心では物凄く感謝している。
純は俺よりも一つ年下、勿論学年も一つ下だった……だったと言うのは過去の話で今は同じ高校の同じ学年だ。
俺は高校受験の際、とある事故に遭いその時の怪我のせいで浪人する事になってしまった。そして翌年純と同じ高校に受験、俺は1年のハンデを挽回するべく必死に勉強をして地元の最高難易度の高校に入学した。中高一貫の進学校で特に高校から入るには最難関とされているが俺はなんとかギリギリで合格するも純は余裕の合格……ただでさえ頭の出来を比べられたくないのに、俺達は同級生になってしまった。
辛いんだよ、一つ下の昔から知ってる女子、親戚の幼なじみが同級生になるって……だから俺は純から距離を置きたかったんだが……。
「ねえねえ昨日なんで来なかったの?」
「……別に……」
「ねえねえ、さいちゃん探しに来てたよ?」
「……知ってる……」
「ねえねえ」
「うるさいよ」
「もう~~」
こんな調子で純はやたらと俺に付きまとう……子供の頃からずっとこんな調子なので、慣れてはいるが、やはりこの1年は正直そっとしておいて欲しかった。
俺は人よりも1年遅れている……だから焦っていた。どんなに頑張っても飛び級の無い日本では社会に出るのが当然1年遅れる……理由を聞いてくれればわかってくれるかも知れないが、世の中そんなに甘くはない……遊んでいたと思われるかも知れない。
1年遅れる事はそれだけで将来が不利になるんだ……だからせめて……その不利を挽回出来る程度の学校に、浪人して入る価値のある位の大学に行かないといけない。
「俺の事は停学くらった時からほっとけって言っただろ」
「えーー? しらなーーい、ホットケーキって聞こえたああ」
「オヤジかよ……」
「ねえねえそれよりも、来週から沖縄だけど、今年は一緒に行くでしょ?」
「沖縄……か」
中学迄俺は純一家と毎年沖縄に行っていた。純の母親が沖縄出身なので俺と菜は夏休みに毎年連れていって貰っていた。
「さいちゃん水着買って貰うってはしゃいでたからさあ……私も新調したし……見たいよね! 見たいよね!?」
「別に見たくねえし……ああ、それであやが昨日……」
沖縄……正直少し行きたい……一昨年は事故で、去年は停学の関係で夏休み補習を受けさせられたので、もう2年も行っていない……。
「……俺はいいや」
「えーーーーーなんでなんでえええ?」
「ごめん……な」
だって……来週は……詩ちゃんと会わないといけない……運命の人が俺を待ってるから……。
純はしつこく食い下がるも俺は頑なに断った……。
沖縄はかなりの魅力だ……でも……俺にはもっと魅力的な人が待っている。
もう決めたんだ……次会った時に告白しようって……来週俺は詩ちゃんに告白しようって……俺はこの時そう心に決めていた。
しかし……週明け公園に行くも……俺の天使は……運命の人は……詩ちゃんは……公園に現れなかった。
俺は2週間通い続けたが……彼女は公園に一度も現れなかった。
俺の運命の糸は……あっさりと切れてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます