第2話 新たなスキル

──私は、あの後、かなり厳しく大女神であるミカヅチ様に叱られた。

 後輩のミスは先輩のミスだと。

 そして、私が勇者様のお供をしろと言われた。

 さらには、責任を持って世界を救えと。

 どうやって、救うのよ!

 トマトしか出せない勇者と!!


「ていうか私は全く悪くないのに!!!

 ムキィーーー!!!」


「うるさいぞ、いきなり大声を出すな」


 勇者ユウタが言う。


「ごめんなさい……」


「あんたら女神のせいで俺は酷い目にあってるんだ、ちゃんと援護してくれよ?」


「確かに、貴方に悪い部分は全くないわ……

 トメィトなさい」


「ごめんなさいだろうがあああああ

 てめぇやっぱふざけてんなああああああああ」


 バシィ!

 私はユウタのビンタをお尻に食らう。

 ひどい!!

 ママにもぶたれたことないのに!! ……まぁ女神だから、この程度

 痛みなんてないのだけれどね!


「だってだって!! 私は数々の強い勇者を召喚してきた熟練の女神よ!! それなのにそれなのに……こんな仕打ち……!」


「お前にはもっと反省してもらわんといけないようだな…」


 ユウタは、またビンタをする構えをしている。

 ま、まずい……痛みはないけれど、このままビンタを貰えば

 私の女神としてのプライドがズタズタになってしまうわ。

 そうだ……!

 1つ大切なことを忘れていたわ!!


「ま、待って!! 今回は特例だから私の力で貴方のレベルを少しあげることができるの!」


「レベル……?」


 ユウタはそれを聞いて少し落ち着きを取り戻した様子だ。


「もしかしたら、スキル、トメィトゥも進化するかもしれないわ!!!」


「おおおおおおおおお!! 早速上げてくれ!!」


 はああああああ!! 私は手のひらに力を込めて、

 ユウタに呪文をかける。


「森の妖精よ……! 私の力となり、勇者ユウタに力を授けよ! フェアリープロテクション妖精の加護!!!!」


 そうするとユウタの身体は、小さな妖精たちに囲まれ、妖精たちによって力を与えられているようだった。そして、

 しばらく経つと、妖精は消えた。


「ど、どうだ、何か変わったか?」


 ユウタは興味津々でこちらを見ている。


「今確認するわ!!」


 ええーと。ステータスはっと……。


ステータス Lv15

 HP 205

 MP 169

 攻撃力 150

 防御力 169

 素早さ 80

 魔力値 90


 耐性 なし

 特性 なし

 備考 勇敢な性格


 う、うーん。平凡だけどステータスは一応上がってるわね……!

 肝心のスキルはどうかしら……!


  スキル名 トマトカッターの条件が解放されました。


スキル名 トメイトゥ


 スキル一覧 トマト・カッター スキルレベル1


や、やったー!! 何か覚えている!!


「トマト・カッター? を覚えてるわ!!!

 名前だとなんか弱そうだけど、もしかしたら強いスキルかもしれない!!」


「本当か!!!」


「ええ! 早速試したいところだけど、

 どんなスキルかわからない以上、この村じゃあ撃てないわね。狭すぎるわ。

 まぁとりあえずお腹が空いたでしょ?まずは食事をとりましょ!」


「わかった!」


 機嫌を取り戻したユウタと私は、今いる村。ユクモ村の

食堂へ向かった。



♢ ♢ ♢ ♢ ♢



ガラガラガラ。


 少し古びた扉を開けると、いかにも元気の良さそうな

 薄着のおっちゃんがいた。


「へい、らっしゃい! ……ん?

 なんだ嬢ちゃん達のその格好は……ここら辺じゃ見かけねぇ格好だなぁ」


 食堂のおっちゃんは、目をまん丸にして、じっと私たちを見つめている。

それもそのはず、私たちの格好は、村の人たちと比べて豪華である。

衣類の装飾にしても、素材にしても、天界グラウンドヴァルで作られた

特注品。これは、人々がすぐに勇者だとわかってもらう為らしい。



「私は女神リザイア!! 数々の勇者を誕生させた熟練の女神よ!!! 私は……ってそれはもういいか、こっちが勇者よ」


 私はユウタに向けて指を指す。


「ユウタだ、よろしくなおっちゃん」


「へぇー、勇者がこんな小さな村にねぇ……

 まぁ、ここ数百年、魔物に襲われたなどの報告はない平和な村だが、勇者がいるならうちも安泰だな! ガッハッハッハッハ!!」


 おっちゃんは豪快に笑っている。そんなおっちゃんを見て、

 私はユウタにヒソヒソと耳打ちする。


「あらユウタ、あの人、貴方の事を頼りにしてるわよ。

貴方のスキルが登場した時、おっちゃんの唖然とした顔が目に浮かぶわね」


「黙れ。それにしても、この村は平和と言っていたが?」


「ええ、大女神ミカヅチ様に頼み込んで、安全な村からにしてもらったのよ」


「……なるほど、それは助かる。なら俺の出番は必要なさそうだな」


 ホッとユウタは胸を撫で下ろしている。


「そうよ、だからはやく経験値を身につけて、なんとかステータスだけでも魔物に対抗できるようにするわよ!! いいわね!!!」


「おう!!」


 私とユウタは固い握手を交わし、食事をとることにした。

 まずは、目の前の野菜スープからいただく。


「美味しいー!!」


二人同時に声が上がる。


「美味しいわ! このスープ! 絶品ね!!」


「ああ、すごく旨い」


 それを聞くと、

 ガッハッハッハ。とまた、おっちゃんが笑う。


「そうだろう、そうだろう! うちの自慢のスープだ!」


 あぁ……癒されるわー。

後輩サケノミコのせいで嫌な目にあったけど……。

 このスープの美味しさが浄化してくれるわ。

 ずっと、こんな平和な日が続けばいいのに……。

 私は心からそう思った。


しかし、そんな至福の一時は一瞬にして、掻き消されることになるなんて……。


『みんな逃げろおおおおおおおおおおおおおお』


店の外から突如、聞こえたその大きな悲鳴とともに。

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