第7話
出港して三日目。初めての船旅は全然飽きが来ない。アルクトスさんに釣りを教えてもらった。お魚は大好きだからうれしい。
「アルクトスさん!釣れましたよ!!」
「おお!なかなか筋がいいな!」
「本当ですか!うれしいです!」
そんなことを言ってる時だった。
「アルクトス、アステール!大変だ、海賊がこっちに向かって来てる!」
そう言って太司様が駆け寄って来た。
「本当ですか!?」
海賊、本で見たことある。海の上で悪さをする人たちだ。私は怖くなってアルクトスさんの腕に縋った。
「アステール。」
「はい。」
「海賊たちが乗り込んでくればここが戦場になる。危ないからお前は部屋にいてくれ。終わったら迎えに行く。」
「で、でも、それだとアルクトスさんも危険なんじゃ…。」
「心配するな。」
そう言ってアルクトスさんは行ってしまった。
「まあそういうことだ!アステールも早く部屋に行け。」
「はい…。」
こういう時、力になれないのが辛い。私にも戦う力があればいいのに…。
部屋につくとすぐ戦闘が始まったのか剣が交わる音が聞こえる。私は怖くて部屋の隅に隠れた。どうか、どうかアルクトスさんやほかの皆さんが無事でありますように。
しばらくして扉が開く音がした。私は顔を出してしまった。
「お、こりゃ上玉だ!!」
「やりましたね親分!!」
なのに、そこにいたのは賊の格好をした男の人二人。この人たち海賊だ!!そう思ったころには腕をつかまれていた。
「や…は、放して…。」
「あ?何言ってんだ?さあ、来い!」
「キャ!」
無理やり腕を引っ張られ、甲板まで来てしまった。いや、このままだと連れてかれちゃう…。
「ア、アルクトスさん、助けて…。」
「アステール!!」
私がつぶやくとそれが聞こえたようにアルクトスさんが叫んだ。
「アルクトスさん!!」
こっちに来るのが見えて、涙が出そう。それくらい安心した。
「おのれ、賊の分際でアステールに触れるな!」
「ほう、王子様の登場か?いいだろう、俺にかったら返してやる。おい!」
「へい!」
「その女、放すなよ。」
「わかりやした。」
多分子分なんだろう人に渡されて戦いが始まった。
「アステール、この男、斬らない自信がない。目を閉じていろ。」
「は、はい。」
ギュッと目を閉じると剣が交わる音がした。怖い。こんな近くでこんな音を聞いたのは初めて。
「お、親分!!」
「キャ!!」
その音が聞こえなくなると、私は投げ飛ばされて転んでしまった。
「アステール!」
そう言って優しい手が起こしてくれた。
「もう大丈夫だ。奴のことも斬ってない。目を開けていいぞ。」
そう言われて目を開けると。今度はアルクトスさんの優しい顔がそこにあった。
「アルクトスさん…。」
「もう大丈夫だ。」
そう言って優しく包み込んでくれる。そうすると安心して私は泣いてしまった。こんな大勢の前で恥ずかしいのに…。
でもアルクトスさんは優しく背中をさすってくれた。そのやさしさに私はまた泣いてしまうのだった。
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