第6話
三日後、無事に港に着いた私たちは御者の人に頭を下げて、海を見た。
「わあ!!」
海は青くて、キラキラしてて、どこまでも続いているようだった。
「アルクトスさん!これが海ですか!?」
「ああ、これか海だ。」
「わあ!すごい!!」
他の使い様がいるのに、私ははしゃいでしまった。
「アルクトスさん、もっと近くで見てもいいですか?」
「あ、ああ…。なら、一緒に行こう。落ちたら大変だ。」
「はい!!」
アルクトスさんは少し驚いていたけれど、優しく笑ってついてきてくれた。
しばらく海を眺めていると、大きな船を見つけた。
「アルクトスさん、あの船、すごく大きいですね。」
「ああ、あの大きさなら国の重役とかが乗っててもおかしくないな。」
「そ、そうなんですね…。」
「おーい、そろそろ行くぞー!」
太司様にそう言われて二人で向かう。案内された船は…さっき見つけた大きな船だった。
「こ、ここここここの船に乗るんですか?」
アルクトスさんが珍しく動揺していた。当たり前だよね、さっき話してた船なんだから。
「そんな緊張しなくていい。…この二人を部屋に案内してくれ。」
「かしこまりました、お二人ともこちらへどうぞ。」
そう言って案内されたのは広い部屋。こんな広い部屋を二人で使うのは…。
「こちらがアステール様のお部屋になります。アルクトス様のお部屋はお隣の…」
「え?ここ一人部屋なんですか?」
「ええ。」
そ、そんなこんな広い部屋なうえに一人なんて…。私、大丈夫かな?
「あの、出来れば同じ部屋がいいんですが…。」
「え?ですが、この船は一人部屋しかありませんが…。」
「俺たち同じベッドでもいいのでこの部屋二人で使わせてください。」
「わ、分かりました。」
そう言って案内の人は出ていった。
「アルクトスさん、ありがとうございます。このお部屋一人じゃ寂しいと思っていたので良かったです。」
「それなら良かった。さて、荷物置いたら甲板に出てみるか?」
「はい!」
甲板に出ると、海の風が気持ちよく頬を撫でる。エストレリャは山の中にあったからいつもと違う風だ。
「風が気持ちいいですね。」
「ああ、そうだな。」
二人で風を浴びる。何も言わなくても心地よい時間が流れる。これってなんだか、恋人みたい…。いや、恋人なんだけど。
「どうした?」
「え?」
「なんだかいい顔してるから…。また何か考えてたのか?」
また気付かれてしまった。なんだか恥ずかしいな…。
「なんだか、こうしてると恋人みたいだなって…。」
正直に話すと、アルクトスさんは小さく吹きだした。
「な、なんですか!?」
「いや、お前もそんなこと考えるんだなって思ってな。それに、俺たちは恋人同士だろう。今さら何を言ってるんだ?」
「だって、今までこういうことなかったじゃないですか。だから、嬉しくて…。」
「…そうか、そうだな…。」
そう言うと、アルクトスさんは優しく頭を撫でてくれた。
「おーい、何してるんだー?」
その声を聞いて二人してビクッとなった。
「た、太司様!どうなされたんですか?」
「いや、二人を見たから声をかけただけだが…邪魔をしたかな?」
そうニヤリとされた。いい所だったのに…。
「そうそう、これからの予定を話しておこうと思ってな。」
「予定、ですか。」
「ああ、こっちへ来てくれ。」
そう言って太司様は歩き出した。それにアルクトスさんとついて行く。向かった先のドアには船長室と書かれていた。
「船長、邪魔するぞ。」
「これは太司様とお客様方。何の御用で?」
「地図が見たい。」
「かしこまりました。」
そう言って船長さんは席を外した。机の上に大きな地図があった。
「これから俺たちはソルに向かう。これから、大体5日くらいだ。その後は陽神様と星神様が決めると陽神様は言っていた。それでいいか?」
「はい、大丈夫です。」
そのことなら星神様に事前に聞いてるけど、話してくれるのはありがたい。
「では、そのような感じで。船の中では好きなように過ごしてほしい。何かあったら遠慮せず行ってくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
「それじゃ、戻るか。」
「はい。」
こうして、私にとっては初めての船旅が始まった。
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