実況:クスト 解説:マッソー
「密着勇者第二回!今回は、実況クストでお送りします」
「解説はマッソーでお送りするぞ!」
「比較的まともに実況解説をするという方針なので、今回は自重をお願いしますね」
「何の話だ?」
「……ま、まあいいです。今回は、軍資金を貰った勇者のお買い物回ですね」
「とりあえず、タンパク質が多く脂質の少ないものを選べばよかろう」
「……。まずは武器屋に足を運ぶようですね」
「うむ、攻撃こそ最大の防御。武器にはこだわったほうが良いな」
「どうやら、オーソドックスに剣の類を見ているようですね」
「うむ、悪くないチョイスだ。槍などと違って、ストレートに腕力を生かすことができるからな」
「ですが、私の見たところでは、あの勇者はあまり筋肉質ではないようですが」
「それはこれから鍛えればよかろう。戦いの中で磨くもよし、トレーニングするもよし」
「な、なるほど」
「お勧めのトレーニングは、爪立て伏せだ」
「指ですらないんですね。それはさておき、剣の内の一本を手に取りましたね」
「ショートソードと呼ばれるタイプだな。取り回しが良く、切れ味に優れるものの耐久性はイマイチじゃ。皮膚が鱗で覆われているような、防御力の高い敵には相性が悪い」
「なるほど。ちなみに、マッソーさんのおススメは?」
「そりゃ、斬馬刀一択じゃろうよ」
「彼には持ち上げる事すら難しいでしょうね」
「しかし、貧弱な筋肉だな。数度素振りしただけで、既にへばっておるわ」
「まあ、元の世界でも鍛えていたわけではないようですし、当然かと」
「嘆かわしい。いざという時に頼りになるのは、やはり磨き上げた己の肉体ぞ」
「どうやら、ショートソードを諦めるようですね。今度は短刀のコーナーを覗いているようですが」
「ちなみに、短刀だからと言って軽いとは限らん。素材によっては重い刃を持つものもあるからな」
「どうやら、最軽量の物を試しているようですが」
「軟弱な。それでは護身用としても心許ないだろうに」
「おや、最軽量二本をもって二刀流を試しているようですね」
「いかにも素人のやりそうな選択じゃな。それをするのに必要なのは何よりも速さ。そして、度胸と反射神経、的確な判断力じゃ。玄人向けの選択肢というべきじゃろうて」
「そうなのですか?」
「二刀流という事は、身を守る盾は存在せん。速さが必要だから鎧も軽装となる。つまり、一撃貰えば即致命傷になりかねん。相手の攻撃に竦むことなく向かっていき、それを紙一重で避けて急所などを的確に抉る。それができねば話にならんわ」
「確かに、それは理屈ですね」
「ちなみに、わしなら攻撃は全てこの鋼の肉体で弾き返してしまうからノープロブレムじゃ」
「あっはい。……どうやら、短刀一本と魔術の威力を上げる腕輪を購入するようですね」
「ふん、魔術とは軟弱な。魔力が尽きれば役に立たんではないか」
「戦闘での選択肢が増えるのはいい事では?」
「己の肉体という究極の一さえあれば、他は捨ておいても問題あるまい」
「潔いと言うべきか、脳筋と蔑むべきか悩ましいところですね」
「む!あいつ防具屋に入りおったぞ!」
「みたいですね。どうやら、胸当てや膝当ての類を見ているようですが」
「軟弱な。鍛え上げた筋肉さえあれば、そんなもの必要なかろう!そんな無駄なモノを吟味するくらいなら、体脂肪率を0にするところから始めるべきじゃ」
「もはや人外の域ですね」
「マイナスにするよりははるかにマシじゃろう」
「体脂肪率でマイナスって何なんですか!どういう域ですか!?」
「それはもちろん、未知の領域じゃよ」
「でしょうね。……どうやら、胸当てと膝当て、それにヘルムとバックラーを選択したようですね。どれも、軽めの素材でできたものですね」
「諸君らの世界の金属で言うなら、アルミが一番近いかもしれん。あれよりは少しは硬く、遥かに凹みにくいがな」
「全体的に取り回しを重視したようですね」
「まあ、あのひ弱な体ではそれが最善じゃろうな」
「あと、装飾店でベルトを購入していますね。短刀や小物を収納するスペースがついていて、使い勝手は良さそうです」
「ポーションのシリンダーを差す部分もあるし、冒険の門出としてはまあまあの品じゃな」
「早速、道具屋で傷治しのポーションと解毒用のポーションを購入して、ベルトに装備していますね。新米冒険者としては見本的な装備と言っていいでしょうかね?」
「うむ。勇者としては、あまりに平凡とも付け加えておこう。せめて、恰好を付けるためにもブロードソードやカットラスくらいは装備してほしかったところじゃが。まあ、あの者が決めたのなら何も言うまい。装備は使いこなしてこそじゃからな」
「では、今回はこのあたりで。次回は、勇者の初戦闘の模様をお送りできるかと思います」
「わしとしてはそちらを解説したかったところだが、仕方あるまい。勇者らしい、血沸き肉躍る戦いに期待しよう」
「今日の様子を見ている限りは無理でしょうね。では、また次回をお楽しみに」
「皆も、突然異世界に転移させられた時に備えて、身体はしっかりと鍛えておけよ!」
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